今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

井藤 美樹

文字の大きさ
上 下
57 / 354
第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです

新たな一歩を踏み出す

しおりを挟む


 糞女神を敵認定。

 八年の間に手を打たないとね。なんせ相手は、腐っても神だからね。八年は時間がないのか、あるのかは分かんないけど……やるべきことは沢山あると思う。

 その前に詳しい話を聞きたいと思ったけど、後日にって殿下に言われた。深夜だったし、それは仕方ないと思うけど……何の進展もないまま、私公爵家に戻って来ちゃったよ。オイ。まぁでも、殿下も「逃げない」って言ったんだから大丈夫だと思うけどね。そこんとこは信頼している。

 戻って来たのは私一人。お父様は今、国領地に赴いてるからここにはいない。屑の両親を、そこに押し込めるために行動してるそうだ。もう、平民になった二人だから下手なことは出来ないと思うけど、念には念をいれてってことらしい。屑の考えることって、ぶっ飛んでるからね。

 まぁ……私も二度と顔を見たくないから、ちょうどいいけどね。

 護衛のジークに支えられ馬車から下りると、見慣れた扉の前には一人の青年と侍女の二人が頭を軽く下げ私を待っていた。

「お帰りなさいませ。マリエール様」

 青年はこの屋敷の執事を勤めてくれる人だろう。お父様から聞いて知っていた。親子二代に渡って、お父様に仕えている。確か名前は……

「只今戻りました。クライシス。後……」

 クライシスの後ろに控えている侍女に視線を送る。

「ユカと申します」

 ポニーテールをしている方が答え顔を上げる。

「ユイと申します」

 もう一人は一つに髪をお団子のように纏めていた。

 双子! それも中々の美人さんだ。

「「今日から、マリエール様専属として仕えさせて頂きます。どうか、宜しくお願い致します」」

 おーーさすが双子。こんな長台詞よくハモったね~~。

「こちらこそ、宜しく頼みますわ。アンナを筆頭に頼みますね」

 アンナが筆頭侍女であることを伝えた。これは崩せない。私と共に戦ってくれた一人なのだから。

「「はい」」

「畏まりました」

 宜しい。

 挨拶が終わり重厚な扉が開くと、玄関ホールに一列に並ぶ侍女たち。そして、コックたち。兵士もいるわ。あ……庭師のおじさんも。従業員全員がお出迎えしてくれたみたい。元幼馴染もおじさんの隣にいるが、すぐに視線を外す。見なかったことにした。出来れば関わりたくないからね。

「全員、マリエール様に一礼を」

 クライシスの声に全員頭を下げ、「誠心誠意お仕え致します」と声を揃えて挨拶する。

「マリエールです。宜しくね」

 笑みを浮かべ頷く。

 さすがに違うわ……正直驚いた。屑一家の使用人たちとあまりにも違うから。一緒にしたら悪いよね。主が変われば使用人も変わるってほんとだわ。私も彼らの主として気を引き締めないとね。

「ところで、クライシス。使用人を一掃したのですね」

 私がそう尋ねると、クライシスはニコリと微笑みながら答えた。

「主を主として見れない者は、このグリード公爵家には必要ありませんから」と。

 はっきりとものを言う人ね。腹黒そうだけど気に入ったわ。

「そうね。いらないわね」

 私も負けずににっこりと微笑んだ。
 
「はい」

 こうして、私はグリード公爵令嬢の一歩を踏み出した。





 反対に踏み外した者は……かなり悲惨な運命が待ち構えていた。



 
しおりを挟む
感想 326

あなたにおすすめの小説

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。 ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。 サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。

処理中です...