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第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです
君を選んだから(殿下視点)
しおりを挟む魔力の使い過ぎと疲れから、深い眠りについている愛しい少女の傍らに、俺は座り、その頬をソッと撫でた。
温かい……
ずっと触っていても、冷たくならない。温かいままだ。
そう……温かいまま。
そのことに、俺がどれだけ救われてるか、君は分からないだろう。それとも君のことだから、自分が殺したくせに何を言ってるんだって怒るか……
確かに、俺は君を何度も、何度も殺し続けた。出来る限り苦しまないようにしたけど、殺した事実に変わりはない。
殺さなければならなかった。そうしないと……君の…………君の魂が……消滅してしまうから。自分の心を壊しても、俺は君を失いたくなくて殺し続けた。
俺が糞女神より君を選んだから、掛けられた強固な呪い。
当然だ。糞女神が俺に掛けた呪いだからな。糞でも、神を名乗るだけはある。
マリエール。君は巻き込まれただけなんだ。
俺が君を愛したから……
でも、その呪いももう解け掛けている。この年齢で君と会ったのが、その証拠だ。呪いが正常に働いてたら、君と会うのは八年後だった。記憶が戻るのも、もう少し後だった筈だ。
マリエール。君を護るには、君を俺から遠ざけるのが一番だ。あいつが欲しいのは俺だ。俺だけだ。なのに、俺は君を遠ざけられない。そんな俺を、君は許してくれるかな。どんなに冷たい目で見られても、呆れられても無理なんだ。
君の心に触れてしまったから。温かみを知ってしまったから。出来なくなってしまったよ。
「…………君も一緒に戦ってくれるかい?」
話してしまえたら、どんなに楽になるだろう。
君が俺から逃れるために、どんどんスキルや魔法、剣術を極めて強くなっていくのを、僕は知っていたよ。複雑な思いをしながら見ていたから。君には決して気付かれないようにな。
「もうすぐ終わるから。終わったら、君は自由になれる。あの糞女神からも俺からも……」
もう、君を殺したくない。
君が俺を恐怖の目で見るのは耐えられないんだ。
俺は知らないうちに、マリエール、君の手を強く握り締めていたようだ。君が少し呻く。
「ごめん、マリエール。君のことは、俺が絶対護るから。だから、君はゆっくりお休み」
手を離すと、もう一度頬を撫で額にキスを落とす。このまま一緒にいたいけど、無理だよな。それとも、一緒に寝るか。そんなことをしたら、間違いなく殺されるよな。アイツらに。
名残惜しいが、仕方なく渋々俺は部屋を出て行った。
まさか、マリエールが起きていたなんて知らずにだ。
「………………どういうこと? ほんとに呪いだったの……?」
俺が出て行った後、マリエールは上半身をゆっくりと起こした。
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