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第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです
全てが終わり……
しおりを挟む翌日ーー。
屑一家は陛下自ら刑を言い渡され、騎士たちに引きづられながら退場した。
最後まで、屑一家は全員屑だった。散々泣き喚き、私やお母様、糞女は王妃様に対し罵詈雑言を喚き続けていた。
やっぱり、最後の最後まで想像していた通りだった。彼らの中で、反省とか謝罪の気持ちは、そっくり抜け落ちてるんでしょうね。それと、考えていた通り、ソフィアは孤児院に行く道を選んだみたい。ゴールは同じなんだけどね。
屑一家とはもう一生会うことはないだろう。話題でさえ、これから先、上がることはないだろう。
これで、完全に屑一家と決別出来た。
お母様の仇はとれた。
私が願った通りの結末ーー。
なのに、何故心から喜べないんだろう。ぽっかりと穴が開いたかのような感じがする。胸に残るのは虚しさだけだった。
「……マリエール。疲れたでしょう。顔色が悪いわ。もう、下がりなさい」
王妃様の言葉が遠くで聞こえる。
顔色悪いのかな? そう言えば、今朝アンナもジークも同じようなこと言ってたね。でも、ちょっと怠いだけで、しんどくも熱っぽくもないけど。
「はい」
ここは素直に甘えよう。そう答えると、私は一礼をする。そして、部屋に下がるために謁見室から退出した。
「マリエール!!!!」
廊下を歩いていると、殿下が追い掛けて来た。私は足を止める。
「そんなに走らなくても、私は逃げませんよ」
苦笑しながら言うと、殿下に怒られてしまった。
「今はそんなことどうでもいい。その顔色のまま部屋に戻るつもりか!! ほら、おんぶしてやる」
そう言うと、私に背を向けてしゃがむ。
「何してるんですか!? 無理です!!」
「大丈夫だ。ちゃんと鍛えている。まだ、横抱きは出来ないから、これで我慢しろ。ほら、早く」
これって、乗らないと駄目なパターンなの?
アンナとジークに助けを求めるよう視線を送ったら、二人に頷かれました。
仕方ないわね。
「重たくても、文句言わないで下さいよ」
殿下の両肩に手を添える。
「安心しろ。ほら」
渋々ですが、殿下におんぶされています。ジークに運んでもらうという手もあったんだけど、それをすると最悪、護衛変えられちゃうからね。
「頑張りすぎるんだ。いつも」
「そんなつもりはないのですが……」
「見てるとハラハラする。もう終わったんだ。ゆっくり休んでいいぞ。俺が見ててやるから」
それが一番危ないんです。
いつもなら平気でそう言ってたのに、今は言えない。
殿下の背中温かい。
それに、良い匂いがする。
目を閉じ、私はその温かみに浸る。
とても、とても懐かしい気がする。お母様が亡くなってから、一度もこんな温かみを感じる機会はなかった。
私、飢えてたのね……
いつも殿下は、欲しいものを与えてくれる。気付かせてくれる。ほんとにズルい。
いつか逃げ出す予定の最低な私に、そんなに優しくする必要ないのに。過去は忘れて、自分のカイン様の人生をおくればいいのに。
そう願う自分が、過去を忘れることなんて出来ないのに。ほんと、私って自分勝手な人間よね。でもね……こんな私でも、ずっと……殿下の幸せを願ってるんだよ…………
「「……ほんと馬鹿なやつ」」
凄く遠くで殿下の声がする。何言ってるか分かんない。何て言ったの? 瞼がとても重いよ……
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