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第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです

天職でしょ

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 さて、次は糞女と元愚妹ね。隣の牢屋で助かったわ。早速、隣に移ります。

 私の姿を見た途端、ソフィアが私に向かって涙を流しながら手を伸ばしてきた。

「お姉様、許して。もう意地悪しないから、ここから出して」

「出すわけないでしょ」

「どうしてよ!?」

 マジ花畑だわ。その頭の中。呆れていると、更にとんでもないことを言い出した。

「殿下!! 私を迎えに来てくれたのね!! お姉様がまた意地悪するんです。助けて下さい」

 ソフィアは縋るような目で殿下を見詰める。汚いけど、この姿だけを見たら、フラリとする人間出るんじゃないと思うくらい、あざとかった。ある意味さすがよね。でもね……それ、殿下に言う?

「気は確か?」

 思わず尋ねてしまったわ。

「酷い!!」

 更に打ちひしがれた表情をするソフィアに、殿下は低い声で言い放った。

「お前、馬鹿か。頭に蛆が湧いてるのか。助けるわけないだろ。平民のお前が、俺のマリエールを散々虐げてくれたよな。精々足掻いて、地獄に堕ちろ」

 容赦ない。

 それを聞いたソフィアは発狂したのかと思うぐらい、悲鳴を上げた。

 さすがにこれは煩いので、少し黙っていてもらおう。後でまた相手してあげるから。

 涙目で、口元を押さえもがくソフィアから視線を移し、その後ろにいる糞女に向けた。

「……ほんとに、何もしないとこうも変わるものなのですね」

 ソフィアも酷かったけど、それ以上だわ。思わず引いたもん。髪はボサボサ。化粧は中途半端に剥げてバケモノになってるし。この姿で暗闇から出て来たら、絶対悲鳴あげてるわ。間違って攻撃してそう。本物も怖がるんじゃない。それ程酷いありさまだった。普段、余程作ってたんじゃない。

 でもさぁ、この容貌で、借金を返せるのかな。まず、無理じゃない? 買う人いるのかな? 女だっら何でもいいって言う人も中にはいるらしいし、少しは稼げるでしょう。ていうか、稼がなきゃ駄目だからね。

 そんなことを考えてると、糞女が力なくポツリと呟いた。

「…………笑いたければ、笑いなさいよ」と。

 さっきまでの威勢はどうしたのよ。屑と一緒に声荒げてたでしょ。気持ち萎えちゃったの? それとも諦めたの? それこそ、拍子抜けだよ。

 ちょっと煽ってあげたら、少しは元気になるかな。早速、実践してみよう。

「笑って欲しいのですか?」

 笑みを浮かべながら答える。すると、

「そんな訳ないでしょ!!」

 金切り声が返ってきた。うんうん。いいね。

「なら、そのようなことを言うべきではありませんよ。愛人さん」

「私は愛人ではないわ!!」

「愛人でしょ。結婚してないのだから」 

「そんなの。もう一度書き直せば済む話じゃない」

 まだ、そんな夢みたいなことを言ってるの? 屑といい……全く。ほんと、お似合いの二人だわ。

「無理に決まってるでしょ。それに、既にラング元公爵様は貴族ですらありませんよ。貴女と同じ平民ですよ。その方と婚姻したところで、何が変わるのです」

 脳みそ入ってます。

「そんなの、あんたがあの女に、泣きつけばいいのよ!! もう一度信じてみたいとか、上手いこと言えばいいのよ」

 ほんとに、この糞女何言ってるの。全く理解出来ないわ。私の横にいる騎士団長様と、斜め後ろにいる殿下の姿が見えないの? 言動も理解出来ないけど、この二人の前で平気で口に出来る神経を疑うわ。

 それにあの女って、王妃様のことでしょ。不敬罪が更に追加されるわよ。そんなに今すぐ死にたいの? でも、すぐに死なせあげないわよ。そんな楽な道、用意する訳ないじゃない。

「そんなことする訳ないでしょう」

「どうしてよ!?」

 どうしてって……

「何故、私とお母様を虐げていた者に対して、情を掛けなければならないのです」

「そのことは謝るから助けて」

「嫌です。手を付いて謝っても許しません」

「どうしてよ!?」

 その質問は無視する。だって、堂々巡りでしょ。ちっとも前に進まない。ほんと、花畑の会話は疲れるわ。

「でも、命は助かるのだから、まだいいではないですか。貴方の愛する方と一緒に炭坑に送られるんだから。何高望みをしているのです。普通なら、即死刑ですよ。それも最も残忍な方法でのね。それとも、死刑の方がよかったですか? 何なら、そう進言しても構いませんが」

 そう言うと、糞女は叫んだ。

「嫌よ!!!! 死ぬのはもっと嫌!!」

「なら、大人しく罰を受け入れなさいな」

 そう告げる私の顔は、黒い笑みが浮かんでいるでしょうね。思わず、糞女が後退る程に。

「……私は悪くないわ。そうよ、悪くない。だって、結婚してると思っていたんだもの。私も被害者なのよ!!!!」

「どの口がそれを言うのです」

 思わず出た言葉は、とても低いものだった。

 糞女は「ヒッ!!」と悲鳴をあげる。そのまま震えだした。

 このまま、されたことをあげることも出来たけど止めた。

「貴女にも祝福をあげるわ。精々、苦しみなさいな。楽に逝かせてあげる訳ないでしょう。……私に払われる賠償金と、元第四騎士団長の奥様とお子様の分も払わなければならないのですから。これから大変ね。でも、男に媚を売ってここまで来た貴女ですもの、ある意味天職ですね。お相手の方は、貴方の好みから外れる方ばかりだと思いますが、そこは諦めて励みなさいな」

 私は満面な笑みを浮かべ、糞女を見下ろした。

 さぁ、お待たせしました。

 次はソフィア、貴女の番です。

 私は糞女からソフィアに視線を移した。

 

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