今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

井藤 美樹

文字の大きさ
上 下
47 / 354
第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです

嫌がらせ

しおりを挟む


 あのパーティーの日から三日が経った。

 ラング公爵家は取り潰され、公爵家が所有していた領地は、半分が国領地になった。力を持ち過ぎないことを配慮したためだ。その代わりに、伯爵領はそのまま引き続き統治することになった。まぁこれでも、ラング公爵家は一躍大家に躍り出ることになったんだけどね。

 お父様は公爵領の引き継ぎを行うために、パーティーの翌日には王都をたった。

 私はというと、今も王宮にお泊り中。

 屑一家の痕跡を消すために、大々的に屋敷を改装しているからなんだって。

 私的にはそのままでもいいんだけどね。ベッドと椅子さえ変えてくれば。でも、言える雰囲気じゃなかったし、私を気遣ってのことだと分かってるからね。何も言えなかった。

 そうそう、屑一家は今も地下牢に投獄されている。刑が確定していないからだ。

 まだ、平民である糞女に関しては、比較的簡単に刑を確定することが出来るけど。屑が問題だった。

 屑とはいえ、公爵だったからね。家が取り潰しの上、貴族籍を剥奪されたのだから、もういいではないかって、声が一部から出ているらしい。まぁ、出てくるとは思ったけどね。

 まさか、あの家からとは思わなかったよ。あ~~でも、よくよく考えればありえるかな。

 声を上げたのは、王家に次ぐポーター公爵家だったからね。その家には、私と同じ年の娘がいるから尚更かな。私と最後まで張り合っていたから。

 となれば、只の嫌がらせよね。

 嫌がらせって分かってるけど、王家としては無視する訳にはいかないし、かといって、そのまま言う通りに釈放する訳にもいかない。王家の沽券に関わるからね。反対に、王家の望み通りに、犯罪奴隷に堕とせば角が立つ。ほんと、貴族って面倒くさい。心底、そう思うよ。

「今日のお茶はハーブティーなのね」

 アンナが淹れたお茶に一口口を付けてから呟く王妃様。その後、

「ほんと、忌々しいわ。嫌がらせするにも、時と場所を選びなさいよ」

 思いっ切り毒吐く。

 アンナ。効果なかったみたいよ。そう心の中で呟いた時だった。

「全く、母上の言う通りです」

 背後から声がした。

 おい。いつからそこにいたよ。思わず、厳しい目で振り返ってしまったよ。

 そんな視線を気にせず、さも当然のように、私の肩に手に添えてから、空いてる席に座る殿下。して、アンナが淹れたハーブティーを美味しそうに飲んでいる。

「ところで、マリエールはどうしたいんだ?」

 唐突に殿下が訊いてきた。

 ほんと、こういうところが一番腹立つ。憎め切れないじゃない。

「そうよね。一番の被害者はマリエールだもの。マリエールはどうしたいの?」

 王妃様が顔を輝かせて尋ねてくる。

「そうですね。……間をとって、炭坑送りにしてはどうでしょうか?」

「炭坑送り?」

 王妃様が重ねて尋ねる。

「元公爵様には、私を害したことにより賠償金の支払が命じられると聞いております。しかし、このまま市井に放り出されては、その支払は不可能ですし、生粋の貴族である元公爵様が生きて行くのも難しいと思います。なので、罪を考慮して、炭坑送りがいいのではないでしょうか?」

 私がそう答えれば、殿下が、

「確か、王家に返還された公爵領に炭坑がありましたね」と、すかさず助言してくれた。

「なるほど、それはいい案ね」

 私の意図に気付いた王妃様が、にっこりと微笑んだ。

 その瞬間。屑の刑が確定した。

 ソフィアと糞女の願いを叶えるために、重税と重労働を領民に長年課していたからね。さぞかし、皆さん丁寧に出迎えてくれるでしょうね。

 おそらく、糞女も同じ場所に送られる筈。糞女は糞女なりの需要があるからね。糞女にとっては天国かもしれないわね。ちょっと趣味が違うかもしれないけど。そこは我慢してね。

 でもその前に、私から二人にプレゼントをあげるわ。刑が決まったら、もう会えないからね。今夜、そちらにお邪魔するわ。喜んでもらえると嬉しいわ。

 


しおりを挟む
感想 326

あなたにおすすめの小説

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。 ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

処理中です...