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第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです
断罪の幕が上がった
しおりを挟む遠くで楽器の音が聞こえる。人の声までは聞こえてこない。
楽器の音で私は夜の部が始まったのを知った。
このパーティーで全てが終わるんだよね。あの屑一家に、自分がした報いを受けさせてやることが出来るんだよね。
緊張してきたよ。一世一代の勝負だもん。そんな私を安心させるように、
「全ての準備は整ってるよ~~。大丈夫。マリエールちゃんの望みは、これでばっちり叶うからね~~。お兄さん頑張ったよ」
師団長様が微笑む。
独特な話し方をする魔術師師団長様。魔法具の開発も魔術師の仕事なので、会場に流す映像と音声の編集は師団長が担当してくれた。凄い乗り気だったよ。
おかげで、凄く満足が出来るものが出来た。暗部が撮っていた映像も盛り込むってさすが。思った以上の出来だったよ。一応、確認させて貰ったから。
「ありがとうございます。師団長様」
頭を下げ感謝する。すると、
「今まで頑張ってきたマリエールちゃんの褒美だよ」
そう言い、頭をポンポンしようとした手をお父様と殿下が止めた。
「おい。あんまり、うちの娘に近付くな」
「マリエールは俺の婚約者だ」
師団長様に厳しいよね、二人とも。まだ子供なのに。さすがにないでしょ。屑と糞女が私を売ろうとした変態貴族は別として。
「さすがに、子供は範疇外だよ~~。五年後は分からないけど」
師団長なりの冗談でしょ。なのに、お父様も殿下もマジにならなくても。
「戯れるのはそこまでだ」
陛下の声に緊張が走る。
「マリエール。先に行くが大丈夫か?」
心配そうな目で私を見詰めるお父様。私を子供扱いしてくれる唯一の人だ。それが心地良いと思ってるのは内緒。
「大丈夫ですわ」
「グリード公爵。マリエールの側を離れないので安心してほしい」
殿下の台詞にお父様の眉が少し上がる。まだ正式に発表されていないけど、このパーティーの場で、お父様が公爵になるのは決定事項だからね。今そう呼んでも、誰も咎めない。
「では、マリエールをお願いします。殿下」
「ああ」
お父様は特に反論することなく、先に会場入りした。
するとすぐに、演奏が変わった。王族の入場だ。王妃様と一緒に陛下が会場入りする。
私と殿下は舞台袖から、その様子を見学していた。
やっぱり華やかだよね。色とりどりのドレスが、まるで花のよう。
会場の中央には、屑一家が既に入場していた。勿論、ソフィアもだ。さすがに、深紫のドレスは着ていなかった。代わりに着ているのが、薄緑色のドレスだ。
あまりにも露骨過ぎて眉を顰めてしまう。沢山ドレスを持っているのに、何でわざわざ、敢えてその色を選んだのか理解に苦しむわ。あそこまで拒否られたのに、まさか、まだ自分が好かれてると思っているのかしら。花畑の考えることは分かんないや。
殿下の目の色に合わせているのか、それとも、私に対抗しているのか。どちらにせよ、殿下的にはアウトのようだ。
隣を見れば、殿下がものすごく嫌な顔をしてるしね。
更に常識の無さを発表した屑一家だけど、それとはまた違う意味も加算されて、彼らを見る貴族たちの視線はかなり厳しい。公爵家を見る目じゃないわ。
中には、露骨に嫌な顔をしている人もいたしね。昼の部に出席していた貴族も多いから、自然とそうなるでしょ。屑一家は全然気付いてなさそうだけど。どこまで鈍感なの。
皆との挨拶を済ませた陛下と王妃様が、屑一家の前に立つ。
「……さて。王太子から聞いたのだが、私たちに話しがあるそうだな。公爵」
陛下が口火を切った。
今、断罪の幕が上がったわ。さぁ、始めましょ。
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