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第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです
ねぇ、この方が面白いでしょ
しおりを挟む入場してすぐに私を見付けたソフィアが、私がいるテーブルに一直線にやって来た。
わざと見付かり易いように、真ん中にいた意味を、この屑一家は気付かない。
異様な雰囲気を感じたのか、私の周囲にいた子供たちがサーと離れていく。親の所に戻ってきた子供は、親と一緒に私たちを遠巻きで見ていた。
「あ~~こんな所にいたのですね、お姉様。いえ、元お姉様」
わざわざ言い直した所に、底意地の悪さが見えるわね。屑と糞女も笑みを浮かべているけど、目は全く笑ってないわ。
「相変わらず、貴女は騒がしいですわね」
売られた喧嘩は勿論買うわよ。高値でね。
「また、意地悪を言うんだ。元お姉様。ううん。マリエール」
呼び捨てか。すると思ったわ。
ソフィアの台詞に遠巻きで伺っていた貴族たちはざわつき、不快な目で屑一家を見ている。その目線に気付いているのかしらね。
「マリエールですか……」
「そうよ。私は公爵、元お姉様は伯爵家。私より下なんだから当然でしょ」
ソフィアが言葉を発する度に、周囲の温度が下っていくわ。
もし常識のある貴族の子供が同じ台詞を吐いたら、間違いなくその場で殴られるわね。それをしない屑一家の評価もだだ下がり。
「確かに今、私は伯爵ですが、お父様は公爵に準ずる方。馬鹿にするのはお止めなさい。それに、例えそうでなくても、高位だからと言う理由で、呼び捨てにするなど、以ての外ですよ」
周囲の貴族は大きく頷く。
「相変わらず、気位だけは高いな」
いやいや、気位じゃなくて礼儀の話だよ。
「どうして、そんなに酷いことが言えるのでしょう。血を分けた妹なのに……」
いやいや、言ってないし。
「ふん。どんなに意地悪を言っても、痛くも痒くもないんだから。だって、私は殿下のお嫁さんになるんだから!!」
やっと言ってくれた。その台詞を待ってたのよ、ソフィア。顔を引き締めとかないと笑みが出そう。
「お嫁さん? いつから、貴女が殿下の婚約者になったのかしら? あまり突拍子のないことを言うと、また地下牢に泊まる羽目になりますわよ」
今までの中で一番周囲がざわついた。
そりゃあそうよね。公爵令嬢が地下牢に投獄されるなんて、あり得ないもの。その噂が出ても、多くの貴族は眉唾って思っていた筈よ。それが真実だったんだから、ざわつくわ。
「ひっ、酷い!!」
酷いのは貴女の頭でしょ。
「マリエール!!!! 全部貴様のせいだろ!!!!」
「可哀相に。どうして、そこまで私たちが虐げられないといけないの……」
屑と糞女の三文芝居が始まった。
「お言葉ですが、私は何もしておりませんよ。嘘を言い、騎士と侍女を騙して勝手に王族の居住区に入り込み、王妃様とランス殿下の前で無礼を働いたのは、貴方がたの娘です。投獄されても当然ではありませんか」
観客の方のために敢えて詳しく述べた。
「お母様が病気だったのに帰って来ない、あんたが悪いのよ!!!!」
呼び捨てから、あんた呼びに変わった。ほんと、自分から墓穴を掘ってくれるわ。
「あんた……さすがに、それは不敬ですわ。それに、公爵夫人が病気とおっしゃいましたが、貴女と一緒に外出しているのを見掛けた騎士がいるのですが」
わざと眉を寄せる。
「そんなの見間違いに決まってるじゃない。それに不敬って。まだ婚約者気取りなの、元お姉様」
騎士の証言を見間違いってね……
まるで勝ったかのような口調に、益々眉を寄せてみせる。
「どういう意味ですの?」
さぁ、促してあげたから、遠慮なく言いなさいな。
「元お姉様も気付いてるんでしょ。カイン様に嫌われてるって。だって、ドレス一つ贈られてないものね。見て、元お姉様。これ、カイン様に貰ったのよ」
嬉しそうに披露する。
「……以前、私に自慢していたのはこのドレスですか……ならば、貴女は殿下から嫌われてますわ。心底ね」
同情を込めた目で見詰めてあげると、即座に反応してくれた。この目で見られるのが、ソフィア、貴女にとって一番嫌って分かってるから。
「何言ってるのよ!! 私が嫌われてるって。自分が嫌われてるからって、嘘言わないでよ!!!!」
怒鳴りながら掴み掛かってきたので、サラリと躱した。体制を崩して倒れるソフィア。
慌てて起こそうとする、糞女。屑は私に手を上げようとした。
周囲の貴族たちが息を飲む。
だが、その手は振り下ろされることはなかった。お父様がその腕を掴んでいたからだ。今にも殺しそうな目をしてね。
「ソフィア様。嘘だと言うのなら、後ろにいる方に直接訊けばよろしいのではなくて」
そうでしょ。殿下。
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