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第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです

一つ目の毒花(義母視点)

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 マリエールが仕掛けた罠は、ものすごい速さで、だが確実に貴族社会に根を伸ばしていった。

 こうしている瞬間もーー

 そしてそれが、やっと花を咲かせ始めたのだ。毒花として。

 一つの目の毒花は、糞女義母の側でひっそりと花を咲かせようとしていた。




「どうしたの? お母様」

 可愛い、可愛い私の娘が心配そうな表情で覗き込んでくる。

 私と旦那様の良いところだけを引き継いだ、私の可愛い娘。

「何でもないわ。ちょっと考え事をしていただけよ」

 心配させないように微笑む。

「だったらいいけど……もしかして、お姉様に意地悪でもされたの?」

 本当に、この子は感がいいわね。性格も優しくて、人を思いやることも出来る。そして頭がいいのに、この子はいつもあの女の子供の影。私と同じ。あまりにも、理不尽だわ。私の子あの女の子落ちぶれたお姫様よりも遥かに秀でているのに。

 だから、私がソフィア、貴女を光の下に導いてあげるの。私のような思いをこの子にはさせたくない。

 だから、今まで色々してきたのに……お金も使ってきたわ。あの馬鹿騎士団長にも媚びた。なのに、あの馬鹿がしくじるから。あれがケチの付け始めよ。この頃全然上手くいかない。

「大丈夫よ。お母様は強いから。貴女を絶対に護るわ。護ってみせる」

 自分に言い聞かせるようだった。ギュッと小さな体を抱き締めると、ソフィアも私を抱き締め返してくれた。それだけで元気になれる。

「何があったの?」

「たいしたことじゃないわ」

「一人で抱えると苦しいよ」

 本当に優しいわね。

「…………この頃、お茶会に呼ばれなくなったの」

 お茶会は情報の場だって、学園にいた時に聞いたことがあった。

 だから、ソフィアの良さを招待客にさりげに告げていたのだ。そして、少しづつだけど基盤を作っていたのに。それが崩れようとしている。

「いつからなの?」

「ソフィアが泣いて帰って来た日からね……」

 そう……あれ以降、お茶会には誘われなくなった。それ以前は誘われ過ぎて、お断りの返事がするのが大変だったのに。今はこちら側から誘っても、全員断ってくる始末。

 あの女の子が王宮から帰って来なくなってから、少しづつ異変はでてた。でてたけど、あまり深く考えていなかった。

 だって、あの子のどこに人を惹き付ける魅力があるの? 平凡な容姿に凡庸な頭のあの子が。ただ……身分が高いだけじゃない。あの女と一緒で。そんな子が何が出来るっていうの? 

「だったら、お姉様しかないじゃない。お姉様がお母様に圧力を掛けてるんだよ。王様と王妃様を使って。だって、お姉様一人じゃあ何にも出来ないもん」

 そうよね。それしか考えられないわ。

「王様は優しい方だから。騙されたのね。王妃様はあの子によく似てるし」

「ふ~~ん。そうなんだ~~」

「どうしたらいいかしら?」

「お姉様がこの家に帰って来れば解決するんじゃない?」

 そうね。帰って来れば全てが解決するわ。

「元々、その場に相応しいのはソフィアなのに、恥ずかしくもなく、堂々と居座ってるあの子が元凶よね。身の程をわきまえさせないと。親としてが必要よね」

 自然と口角が上がる。あの憎たらしいあの子が苦しむ様を見るのが、今から楽しみだ。ソフィアも楽しそうね。

 私たちを苦しめるのが悪いのよ。散々、私たち親子を苦しめて来たんだから、地を這って生きていけばいいのよ。もう一度、徹底的に教え込まないとね。どんな教育をしようかしら。そうね……でも、その前に。

「どうやって、あの子を帰らそうかしら?」

 それが一番の問題よね。

「ならば、奥様が病気になれば宜しいのでは?」

 そう答えたのは、後ろに控えていた執事だった。

「そうよ!! それが一番いいわ。早速、手紙を書いて!」

 私は早速手紙をしたためる。したためながら、あの子をどうしようか考える。やりたいことがあり過ぎて、自然と顔が歪むわ。

「……殿下に嫌われてるのに、いつまでもない愛情にしがみつくのは、あの子のためにはならならいわ」

 つい、思っていたことを口にしてしまったわ。

「あんなに意地悪されても、お母様は優しいんだから。そんなお母様が大好き。そうよ!! いいことを思い付いたわ。お母様が、お姉様の新しい嫁ぎ先を見付ければいいのよ」

 新しい嫁ぎ先? それは、考えてもみなかったわ……でも、いいかもしれない。

「……新しい嫁ぎ先ね」
 
 そう言えば、知り合いの中に幼い娘が好きな変態貴族がいたわね……確か、今は独身だったわね。


 

 私たちは知らなかった。

 今までの会話全てが聞かれてることに。

 そうとも知らないで、私たちはあの憎い子の未来を想像しほくそ笑んでいた。



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