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第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです
断罪の前にスパイスを
しおりを挟む「ご機嫌斜めですね、マリエール様」
そう言いながら、アンナは精神を鎮めるためのハーブティーを淹れてくれた。ハーブティーは苦手だけど、アンナが淹れてくれるのは甘くて美味しい。
そもそも、私が機嫌が悪いのは、ソフィアを窘めたあの件以降、毎日のように屑が面会を求めて押し掛けているからだ。
当然断るわよ。
その度に屑は怒鳴り騎士たちを困らせている。ソフィアのように無理矢理侵入しないだけマシだけど。騎士さんたちに不愉快な思いをさせてるのは事実だし。後で騎士さんたちにお菓子でも差し入れしましょうか。ほんと、悪いとは思ってるけど、会いたくないものは会いたくないの。
そもそも会ってどうするの。
一方的に怒鳴られ、殴られ、結局のところ、ソフィアに協力して殿下に会わせろとぬかすに決まってるわ。そして最後には、決まってこう言うの。
「お前は姉だろ。妹が可愛くないのか」ってね。そこに常識や貴族としての体面は全くない。お花畑の親は、やっぱりお花畑なんだよ。
いつもそう。そうと分かってて、会う馬鹿が何処にいるのよ。
まぁここにいれば会わないですむけど、一歩居住区から出れば、会う可能性がどうしても出てくるんだよね。図書室は王室のものだから、入室出来る人は限られている。だから大丈夫だけど、そこに行くまでの廊下や廻廊で待ち伏せされてる可能性は多々あるよね。なので、今は図書室に行くのを止めてるんだよね。それが、不機嫌な理由。
でも冷静に考えて、それって悪手かなぁって考え直してるところなんだよね。
ここは敢えて我慢し、お花畑を世間に晒すっていう手もあると思うの。新年のパーティーまでにね。
少しでも屑の悪印象を貴族間にばら撒いといた方が、断罪のスパイスとなっていいかも。そんなことを考えていたら、
「また、変なことを考えてるんじゃないのか?」
突然声を掛けられた。掛けてきたのは殿下だった。
「ノックもなしに、婚約者とはいえ、淑女の部屋に入るのはマナー違反ですよ。殿下」
やんわりと注意する。ほぼ態度変わってないよね、私。
「相変わらず手厳しいな。ちゃんと、ノックしたよ」
アンナに視線を向けると頷く。
「信用ないな」
苦笑する殿下。
「日頃の行いですよ。でも、感謝はしていますわ。殿下や王妃様に護って頂いておりますもの」
「当然だろ。マリエール、君は僕の最愛の人なんだから。それで、何をしようとしてるのか、教えてくれるよね」
会いに行った以降、殿下は私に対しての想いを口にするようになった。今ではアンナも、殿下が私を護るためにしたことだと知っている。二重人格の件は知らないけどね。
でもね……
口元に笑みを浮かべ、やんわりとした口調で最愛って言われても、目は全く笑っていないのを見ると……ちょっと、正直引くわ。相変わらず、危ない奴。
「教える程のことではありませんわ。新年のパーティーに少し彩りを入れようと思っただけですわ」
それだけで、殿下は私が何をしようとしているか分かったようだ。盛大な溜め息を吐かれた。
「止めてもやるんだろ」
「やるわね」
そう答えると、殿下はまた大きな溜め息を吐いた。
「止めはしないが、無茶はするな。自分がまだ子供だということを忘れるな。いいな」
中身は百歳以上だけど、外見は十歳。昔出来たことも、この体では出来ないこともある。過信し過ぎるのはケガの元。
「ええ。分かってますわ」
それじゃあ、ハーブティーを飲み終えたら、早速行動に移しましょうか。といっても、図書室に向かうだけですけどね。
いつもと同じように廻廊を歩いていると、早速釣れたわ。二匹も。
「マリエール!!!!」
「お姉様!!!!」
文官も他の職員も静かに歩いているのに、ところ構わず大声を上げる花畑組。今日はソフィアも一緒なのね。
ほんと、何をしに王宮に来てるのやら。まぁ、こんな花畑に任せる仕事なんて始めからないよね。ほんと、税金の無駄遣いだと思うわ。それも、後、数週間でその地位はなくなるけどね。
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