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第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです
お茶会です
しおりを挟む先程のお詫びをと言われ、只今王妃様とのお茶会真っ最中です。
拒否? 出来るわけないでしょ。
場所を移して中庭で。庭園に咲き乱れるバラの香り。目の前のテーブルには色とりどりのデザート。
デザートを食べ損なってたから、超食べたい。だけど、食べるわけいかないじゃん。王妃様が手を付けてないのに。う~~涎出そう。
「本当に不甲斐ない息子で、いつもマリエールには迷惑を掛けてますね。ケーキどうぞ」
涎が出ないよう我慢している私に、王妃様はやっとケーキを勧めてくれた。勧めてくれたけど、この雰囲気で食べれるわけないよね。うう……ケーキ~~。
「いえ……」
内心、ケーキに未練たらたらだけど、それを面に出さずに、曖昧に言葉を濁す。「いいえ」とも「はい」とも言えないじゃん。
「あの子は純粋過ぎるの。人を疑うことを知らない」
それは王としてどうなの? 貴族としてもやっていけないんじゃないの? だって、悲しいかな、貴族社会って魑魅魍魎が跋扈する世界だよ。平民なら美徳だけどさ。
「そうね。マリエールがそう思うのも無理ないわね」
いや、私何も言ってませんが、っていうか、マジで私の考え読んでる!?
「マリエールは分かり易いから」
「どこがです!?」
思わず声を上げてしまった。慌てて取り繕うとするけど無理でした。先生の目がキラリと光ってたから。あ~~最悪。
「プライベートですから構いません。そうね。意外と分かり易いわよ。表情はあまり変わりませんが、目がその分語ってますもの。でも、見ようとしない限り分からないでしょうね。だから、大丈夫よ」
いや、ちっとも安心出来ません。
「……王妃としては、カインの純粋さは喜べないものかもしれないけど、母としては、それを大事にして欲しいと思ってるわ。矛盾してるでしょ」
その微笑みは少し悲しげだった。
「……その思いは間違ってはいないと、私は思います。……王妃とは国母。この国に住まう全ての民の母です。その責任の重さは私には到底想像出来ぬもの。その礎は、それまで積み重ねてきた努力と、逃げ出さない心の強さ、そして、母としての想いだと私は思います。どれも欠けてはいけないものではないでしょうか」
見開いた目が優しいものへと変わります。
「…………息子二人が、貴女を望む気持がよく分かりましたわ」
二人……? 殿下はソフィアを望んでるんじゃないの? それに、第二王子とは会ったことがないんだけど。
「不思議そうな顔をしてるわね。そう誤解されても仕方ないけど。あの子なりに考えての行動だったのよ」
どういう意味でしょうか?
「それ以上は、私の口からは言えないわね。ただ言えるのは、あの子は貴女を何よりも大切に想っているってことかしら」
殿下が私を……?
「一度、ゆっくりと二人で話してみて。貴女なら、あの子の本心が聞き出せると思うわ。……でも」
でも? 妙なところで区切りますね。どうかしましたか?
「まさか、私の子供にも同じことを仕掛けてくるなんて、絶対に許しませんわ」
淑女の仮面はどこにいったのでしょう。そこには、目を釣り上げ、ニンマリと笑う鬼人がいました。
それなりに修羅場を超えて来た筈だけど、それでもブルブル震えそうになる。子供相手に少しは抑えて下さい。お願いします。必死な嘆願のおかげで、いつもの王妃様に戻ってくれました。やれやれ。
それにしても、どこまでも迷惑な奴ね。ソフィアは。
生前、お母様から聞いたことを思い出した。あの糞女が、昔学院で起こした騒動の数々をねーー。
さっき王妃様が呟いた通り、本当に似たもの親子だと思う。
ソフィアと糞女。
容姿もそうだけど、腐り切った性根がまるで双子のようよね。そして、自分が一番大好きなところも同じ。自分が幸せになるために平気で人を蹴落とす。乗り換える。最も最低最悪な方法を使ってね。
今回の件で、完全に王家を敵に回したわね。公爵家。元々、あの糞女が公爵家に入ってきた時点で、王妃様の心象は地にめり込んでたけどね。まぁ、あの屑と糞女、ソフィアがどうなろうといいんだけど……この目で落ちぶれる様は見たいかな。
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