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第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです
ぶっちされました
しおりを挟むぶっちされました。
王太子殿下とのお茶会を。王太子殿下本人に。
王妃教育の労をねぎらうために、王妃様が二人でと、気を利かせて特別に催されたんだよね。私と殿下が不仲だって知ってるからだと思うけど。
なのに、とうの本人が来ないって……ありなの? あ~~妹が参加しないから来ないのね。嫌だとしても、王妃様が場を設けたんだから形だけでも来なさいよ。全く。そこまで、私を疎ましく思っているのね。馬鹿にしてるし。一回、呪ってやろうか。地味に神経削られるやつを。一時間に一回、むこう脛をぶつけるやつとかどうかな? 地味に効くよね。
口に出さずに毒吐いちゃったよ。思わずマジでかけそうになったわ。
まぁ来たら来たらで、嫌そうな顔をしながら二人でお茶を飲むのも、中々の苦行なんだけどね。
ここは少し寂しそうな顔をしながら、一人でお茶を楽しみましょうか。さすが王家、良いお茶を使ってますね~~。お菓子も美味しい。あっでも、食べ過ぎは駄目だよね。一応、寂しそうにしてるのに。
さて、一時間待ったのでそろそろ行こうかな。勿論行き先は書庫に決まってる。
王太子殿下の婚約者になって良かったのは、王家が所有している書庫に自由に入れることよね。さすがに、禁書は読めないけどね。いずれ、こそっと忍び込んで読んでみようかな。その前に、今読んでいるのを網羅してからだけどね。
今読んでるのは、魔法具の製造法。これがとても面白いの。昔と違って色々改良されたり、簡素化されたりしててね。頭の中で設計図をたてるのって、意外と楽しいんだよ。
一人幸せな時間を過ごしていたのに、今日に限って邪魔をする人が現れたよ。ほんと最悪。
「こんな所にいたのか?」
超不機嫌な声で邪魔しに来たよ。少しは取り繕おうよ。まぁ、取り繕うこと自体嫌なんだろうけど。だったら、来るなって言いたいよね。
「何か御用ですか?」
嫌々ですけど、本を置き立ち上がります。こんな奴でも、王家の人間だからね。一応の礼儀は通しますよ。
「何故、ここにいる?」
第一声がそれ? ぶっちしたことの謝罪はないの。
「どういう意味でしょうか?」
「お茶会はどうした?」
お前がそれ言うか?
「殿下がいらっしゃらないので、退席させて頂きました」
「何故来るまで待たない?」
「一時間待ちました。もし来れないのなら、従者に伝言を頼むことも出来たのではありませんか」
超正論を噛ましてやりました。王妃様が催したとしても、一応呼んだ側でしょうが。呼んだ側がゲストを一時間も待たすなんて、そもそもありえない。一時間も待ったんだから、それで十分でしょ。まだ何かあるの。
「ほんとに可愛げがない。それでも待つべきだろう。仮にも、お前は俺の婚約者なんだからな」
はぁ~~何言ってるの、こいつ。婚約者はお前の奴隷でも部下でもないんだよ。
「それは、気が効きませんで、申し訳ありませんでした。それで、私に何かご用でも?」
内心毒を吐きながら頭を下げます。本当はめちゃくちゃ嫌だけどね。そうしないと面倒くさいからね。当然、淑女の仮面は被ってるわよ。
「これをやる」
ぶっきらぼうに差し出したのは髪留めでした。先日妹に盗られた物と色違いの物。この人、どこまで私の神経逆撫でするんだろ。
「結構ですわ。どうせそれも、ゆくゆくは妹の物になるのです。直接妹にあげれば宜しいのでは? 喜びますよ」
義妹と色違い。冗談じゃない。そんなもの持つのも嫌だわ。
「折角、俺が!! 本当に可愛げのない奴だな!! ならば、こうするだけだ!!」
そう怒鳴ると、殿下は髪留めを床に叩き付け、そのまま書庫を出て行った。
「無体なことを……物に罪はないでしょうに」
これ一つで助かる人もいるのに。溜め息を吐きながら破片を集める。
「マリエール様。王太子殿下はこれを買いに王都に行ってたので遅れたのです」
従者が頼みもしないのに弁明を始めたわ。止めてよね。
「だから、どうしたのです。まずは謝罪でしょう。それに、遅れる可能性があるのなら、連絡をいれるべきではないでしょうか? それが、常識なのではありませんか? もし殿下が忘れていたのなら、貴方がするべきでしょう。違いますか?」
「確かに、それは私の不手際です。心から謝罪致します。しかし、王太子殿下のお心を無下にするのとは話が違います」
この人、何を言ってるの? 思わず口から出そうになったわ。
「私は殿下のお心を察して言ったつもりですが。……貴方もご存知でしょう。殿下から頂いた品の殆どが妹の物になってることに。それも、殿下自身が妹に渡すように言っているのですよ。当然、妹のプレゼントと思われても仕方ないのでは?」
何も言えませんよね。事実そうなのだから。私が殿下から貰ったもので盗られなかったのはお花ぐらいだわ。
「……それに、殿下は一度も私の名前を呼んだことはありませんわ。いつも、お前か奴。私の名前を知らないのでは?」
「そのようなことは……」
焦りだす従者。
そういえば、私も彼の名前を一度も呼んでいないわね。一度も名乗られてないからしょうがないか。にしても、見る見る顔色が悪くなってるわね。
「ないとは言えて? この問答、他人が聞けば、果たしてどちらが、婚約者のお心を無視しているように受け取られるかしら?」
心の中で笑みを浮かべながら釘を刺す。
「…………」
真っ青になっても遅いわ。まぁ、でもここが王宮の書庫で良かったわね。噂を外に漏らす人がいなくて。
「何も言うことがないのなら、そろそろ消えてくれないかしら。続きが読みたいので」
その声に弾かられるように、従者はその場を立ち去った。
……やっと静かになったわ。
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