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第四章 銀色の少女
第九話 灰色の翼と動き出した影(1)
しおりを挟む栞と一緒にいる時間が増えてから、この世界のことについて色々なことを知ることが出来た。サス君も色々教えてくれるしね。
どんな形でも、この世界に残るって決めたんだ。
だから最低限、この世界のことを学ぶ必要がある。それが、私自身の身を護る最低限の鎧になるのだから。
大陸を護るために守護結界が張り巡らされているなんて、この世界じゃ小さい子までが知ってる常識。そして、別の大陸に行く方法が空路しかないってことも常識だった。
ほんと、何にも知らないって怖いよね。
空路を航行する船は帆船が主流で、その中でも、特に空に特化した南の種族が持つ帆船が群を抜いていた。
その中でも、風を自由に操ることが出来る天狗一族の帆船〈黒翼船〉は、常世一の速さと設備を備えていた。その帆船の名の由来は、帆船の帆の色が漆黒だからだ。
それでも、玄武様が統治している北の大陸から朱雀様が統治している南の大陸までは、普通の帆船で三か月は有に掛かるんだって。結構の距離だよね。まぁ途中で、麒麟様が治める神王都を縦断するから、当然と言えば当然だよね。
それで、黒翼船でも一か月は掛かるって聞いた。そうなると、当然。
(約束の日は完全に過ぎるよね……)
甲板の柵に肘を付いて外を見ながら、そんなことを考えていた。
サス君は私の足下で丸くなって昼寝している。うん。至って平和だ。
何故、天狗たちが私を誘拐したのかは、今も分からないまま。
栞にそれとなく訊いたが、「族長が決めたことだから」と言われ、それ以上のことは教えてくれなかった。それでも最後に栞は、「族長は睦月様を傷付けるつもりはないのです」と必死に訴えた。
あまりにも必死で、怖いくらいに危機迫って訴えてきたから正直戸惑ったよ。何か裏があるんじゃないかって。
どっちにせよ、栞の言葉を信じてもいいのかなって思う時があるよ。だけと同時に、信じ切れない気持ちもあるんだよね。
だから、打開策としてサス君に訊いてみることにした。
もしかしたら、天狗の族長のことを知ってるかもしれないでしょ。本体の分身であるサス君は、記憶も一部共有してるからね。
すると、サス君は首を横に振った。
サス君が知ってるのは先代の族長で、今の族長は子供の頃に一、二度会っただけらしい。内気な子供で、灰色の翼だったってことぐらいしか覚えていなかった。残念。にしても、
(灰色の翼ね……)
栞の翼は灰色より、白に近い銀色だよね。栞姉は漆黒だけど。
まぁ結局のところ、族長に会わなければ何も分からないってことだよね。なら、慌てても仕方ないか。
というわけで、取り合えず今は、出来るだけ常識を勉強することにした。時間は有意義に使わないとね。
勿論、まったりとクルージングを楽しむことも忘れてないよ。
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