戻るなんて選択肢はないので、絶対魔法使いの弟子になってみせます。

井藤 美樹

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第四章 銀色の少女

第四話 誘拐中だよね

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(これって、何の羞恥プレイなの!!)

 有無を言わさずに、栞に帯を解かれた。胸元で脱がされないように合わせ目を押さえて抵抗しても駄目。容赦なく浴衣を剥ぎ取られたよ。

 この歳になって着替えを手伝われるなんて、ある意味羞恥プレイだよね。

 始めは一人で着替えようとしたんだよ。したけど、上手く着れなかった。だって、着物だよ。着物なんて着たことないもん。見よう見まねでやっても上手くいかなかったし。仕方ないじゃん。

 だからさ。最終手段として、元々着ていた服を着ようと思って探したんだけど、どこにもなかった。まさか、捨てられた? ショック……気に入ってたのに。

 というわけで、渋々羞恥プレイに耐えることになった。はぁ~~。

 朱色の着物に金糸で装飾された刺繍。細部にわたって刺繍が施された着物は、素人の私が見てもとても豪華なものだった。見た目程重くもなく、軽くて意外と動き易い。少し裾を着崩した感じが断然良い。だけどさ……。

(こんな豪華なもの、本当に私が着ていいものなの……?)

 誘拐されたんだよね。

 なのに、置かれている待遇が全くらしくなくて首を傾げる。

 普通誘拐されたら、猿轡さるぐつわを噛まされて、手足を拘束されて冷たい床に転がされてるよね。ご飯とかも菓子パンかおにぎりでしょ。

 戸惑いと不審感が半々の私をよそに、手早く栞は身支度を済ませると告げた。

「すぐあさげを用意しますので、お食事が終わってから、ゆっくり船内をご案内しますね」

(船内案内してくれるの!?)

 まさか、船内を案内してくれるとは思わなかった。拘束はされなくても、目的地に着くまで、ずっとこの部屋に閉じ込められるとばかり思ってたよ。

 願ってもない提案だったけど、正直驚いた。

 再度指を畳に付け頭を下げてから、栞は部屋を後にした。

 意外と、すんなり聞き出せたよね。

 今のうちに少し整理しとこう。

『なんでも本屋』を襲撃し、私を誘拐したのは天狗の一族。

 そして、今私とサス君が捕らわれている場所は〈黒翼船〉。おそらく、天狗族が所有している帆船だよね。

 この帆船が何処かに向かって航行中なのは確か。……いったい、何処に向かってるんだろう? それは、今のところ不明。

 逃げられる心配がないから、安心して船内を案内出来るってことだよね。にしても、

「サス君。海や河を航行しないのなら、いったい何処を航行してるの?」

「それはご飯を食べてから、外に出ると分かりますよ」

 サス君が声を弾ませながら言った。

 何度も言うけどさ……今、誘拐中だよね。

    
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