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14.鎧の内側で蠢くもの

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 石畳の上を、黒い鎧を纏った……いや、『纏わされた』エヴァンが歩く。
「中庭は、問題無し……。次は見張り塔……、んっ、く……」
 頭の上部を覆う兜によって、目元は隠されている。だが、紅潮した頬と吐息混じりの声は、その下の表情がすっかり蕩けていることを周囲に察知させるには十分なものだった。
(塔ってことは……階段、嘘だろ……ぁ、また、んん……っ)

 昨晩、篭絡を成功させるどころか淫魔化という最悪の状況に陥ってしまったエヴァンは、その身体を思うまま弄ばれた後に意識を飛ばした。
 そして数刻後に強制的に起こされ、乳首や後孔を測定されたかと思いきや、休む間もなくこの黒い鎧を強制的に纏わされる。
 四肢を覆う伸縮性のある素材と、急所を隠す硬質な素材で構成されたそれは、見た目こそ軽やかで洗練された装備品に見えるが……その実態は、魔法によって形成された拘束具だ。

「んっ……ぁ……」
 一歩ごとに股間や乳首が擦れる感覚に身悶えしながら、エヴァンは慎重に階段を上っていく。
(ずっと、疼いて……こんなの、もう……っ)
 鎧の内部を満たすのは、スライムのような柔らかな触手。淫紋を通じて送り込まれた魔力によって、乳輪を撫であげ、胸全体を揉み込み、陰茎をリボンの上から包み込み、後孔の浅い部分を出入りする。
 服の布地で弄ばれた時を想起させるようなその刺激は、どれも決定的なものではなく、繰り返されたところで達するには及ばない。
 とはいえ「この城の見回りをしろ」という命令を強制されている間、これらの刺激が不定期に襲いかかってくることによって、エヴァンの身体は限界寸前まで追い詰められていた。

「ぁっ!? あ、あ……っ」
 太ももを上げた瞬間、後孔を緩く刺激されて腰が震える。
 後孔の皺をなぞるような動きについ感じ入ってしまいそうになるが、触手がそれ以上に深入りすることは無い。
「ん、くっ……」
 焦らされるたび、昨晩挿れられた熱と質量を思い出してしまう。
 ブラッドの剛直に奥の奥まで穿たれるたび、視界が白く弾けるほどの快楽を叩き込まれた。
 性具とは違う、熱く硬い肉の記憶に、後孔がきゅっと収縮する。
「っ……!」
 そんな己の身体の変化に、エヴァンは慌てて思考を振り払おうとするが……一度意識してしまったものはそう簡単に消えてはくれない。
「ふっ、ぁっ……違っ……こんな……」

 次にあれを挿れてもらえるのは、いつになるのだろう。
 淫魔化の影響なのか、それとも数日にわたって焦らされたせいでおかしくなってしまったのか……いずれにしろ、そんな期待をしてしまう自分に愕然としながら、エヴァンは懸命に脚を動かす。
「ぁ……はぁ……」
 そうして進んだ先、ようやく見えてきた見張り塔の天辺に、エヴァンは安堵の息をついた。

「んっ、く……見張り塔、不審な点がないか確認、します……」
 すっかり性感帯と化した乳首を触手によってコリコリと転がされ、内壁を緩やかに撫でられる感覚に身を震わせながら、命じられた仕事を果たそうと辺りを見回す。
(魔族に従いたくなんてない……けど……身体をこれ以上変にされるのは……)
 ブラッドが言っていたように乳首や陰嚢を肥大化させられるのも嫌だが、あの男の思いつき次第では更に屈辱的な変化を与えられかねない。

(そうだ……変な風に変えられたら、挿れられるだけで今よりずっと気持ちよくなって……って、なにを……)
 拒んでいるはずなのに、まるで変えられる事を望んでいるかのような思考に気付いてハッとする。
「え、ぁ……ちが、違う……っ、んっ、ひぁ……っ」
 ブラッドのものを求めているだけではなく、より淫らな身体に変えられる事を望み始めている。
 自分の意思が書き換えられているような感覚に、エヴァンはふるふると首を振った。


 実際には、精神保護の魔法が効いている限り、いくら淫らな事を教え込まされようとエヴァンが淫乱に堕ち切る事はない。
 だが、それは裏を返せば、性的な快楽を求める身体に作り変えられているにも関わらず、素直に欲しがる事に抵抗を感じ続けるという……見方によっては、いっそ堕ち切った方が楽な状態で留められてしまう事を意味する。
 いずれにしろ、今のエヴァンにとっては知る由も無い話ではあるのだが……。
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