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3.焦らされる身体

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 部屋に一人残されたエヴァンは、熱っぽい息を吐く。
「あの魔族…一体何を考えて……んっ……」
 胸元に、撫でられたような感覚が走り、ぴくんと身体を震わせる。
 またあの時のように意地悪く嬲られるのかもしれない……そんな危惧が脳裏を過ぎったが、それ以上の刺激は来なかった。
「き、気のせい、か……?」
 軽く上体を逸らせて、胸元を見下ろす。

(ん……何か、ぷっくりして……腫れてる、のか? 確かに散々弄られたけど、それにしたって、こんな……)
 服の布地を押し上げる乳首の存在感に、魔族から責められた時の記憶が過ぎり、エヴァンは顔を赤くする。
「っ、……今はそれよりも……!」
 誤魔化すように目の前の扉に手を伸ばす……が、ここを出る前にあの魔族が言っていた通り、部屋の内側から扉を開く事はできなかった。一切の干渉を受け付けない様子からして、おそらく魔法による施錠だろう。

「やっぱり無理、か……。あのブラッドとかいう魔族……尖った耳以外は、人とそう変わらない見た目をしていたが……いや、だからこそ、か……」
 高位の魔族ほど、人間に近い見た目を装う事が多いという話を思い出し、エヴァンは息を吐く。
 ……その時、胸元の布地が再び蠢き、乳首を刺激した。
「んっ、あぁ!?」
 先ほどのような、気のせいかどうかすら判断できないような、ささやかなものではない。くにくにと胸を揉み込んだかと思いきや、乳首を摘まみ、挟み込むかのような激しい動き。
「あっ、んんっ! ひぅっ!」
 あの、ねっとりと焦らすような動きではなく、性急に高みに押し上げるようなそれに、たちまち思考が乱されていく。
「や、ぁっ、ん、あああっ」

 一気に高められていく性感。だが、それに合わせて硬くなりはじめた屹立は、あの魔族によって結わえられたリボンに締め付けられる。
「んんんっ!?」
 激痛の予感に思わず身構えるエヴァン。だが、それは訪れず、胸を弄る動きもぴたりと止まった。
「えっ……あっ……? い、いやだ、こんな、中途半端な……」
 思わずこぼれた言葉。やり場のない熱、達することのできない切なさ…その全てがエヴァンの身体を震わせる。

「んっ……」
 耐えられず、自分で服の上から乳首を捏ねようとする……が、薄布にしか見えないのに、自ら触ろうとした途端にまるで鉄の鎧のように硬くなってしまう。
 ならばと服そのものを脱ごうとしても魔力で編まれているからか、身体に張り付いたように脱げない。
「っ……こんな…」
 望む刺激が与えられないもどかしさに目の前が暗くなる。

「んん、これじゃ、いけな……」
 服をめくり上げ、リボンで飾られた己の性器に視線を向ける。
 単純に射精を抑えつけるためのものだと思っていたが、先程の感覚からしてどうやら完全に勃起する事ができないような魔法が施されているようだ。
「そん、な……」
 あの魔族は、このリボンを外すつもりは無いと言っていた。
 それは、射精どころか勃起も満足にできず、行き場の無い熱を一生持て余す事を意味していて……。
(い、いや、だ……そんな……そんなの……っ)

 絶望に意識が沈みかけたその時、エヴァンの脳裏に過ぎったのは卑猥な踊りを強制させられた時のことだ。
「あの時みたいに身体を揺らせば、擦れて、少しは……んっ……」
 自分の手で触らない限り、布地の質感は変わらない。それを利用して、身体と共に揺れる布地にうまく胸を擦り上げれば……そんな期待と共に上体を揺らす。
「あっ……んっ……」
 微かに胸の先端に布地が擦れたが、これではまだ全然足りない。
 自然と腰が動き、リボンで戒めれた性器が揺れる。さきほどより強く擦れる胸。
「ふ、ぁ……」
 ほんの一瞬だけだったが、胸と同時に性器にも快感が走った。

「あっ、もっと……」
 気持ちいい、と感じたらもう止まらなかった。
「んっ……んんっ……」
 上体を揺らしながら、くりゅんくりゅんと腰を回すように動かす。その姿はあの時の踊り以上に淫らだった。
「あっ、んんっ、んぁあ」
(足りないっ、もっと、もっと早く……)
 いくら身体を動かしても、リボンで抑えつけられている以上エヴァンが達する事はできない。だが、散々焦らされたエヴァンにそんな事を判断する余裕は無い。
「あぁっ!……んっ、もっと……っ」



 俺はエヴァンのそんな様子を別室で観察していた。
「なかなか頑張っているじゃないか。傍から見れば、ただの淫乱だが」
 体を動かしてもどかしさを誤魔化そうとするのは予想していた通りだが、実際に目にしてみると健気さと愚かしさが両立したその姿はなかなかにそそるものがあった。
『んぁっ、くっ……んんっ!』
 壁には、淫蕩な踊り子と化した男の様子が投影されている。
 目を引くのは、布越しでも分かるほどに、ぷくんと膨らみ尖った乳首、ここに関しては魔力で弄ることの以上のことはしていないから、エヴァン自身の素質だろう。
(捕えたばかりの頃に比べると、随分と主張が強くなったものだ)

 映像を眺めていると、自然と指先が動いた。ふっくらと淫らに熟したあの胸の先端。男のものとは思えないほどに仕上がったそれを、直接指先で摘み上げ、捏ね回すところを想像する。
 俺が直接触れれば、より激しい快楽を押し付ける事ができるだろうが……今はまだその時ではない。
『んぁっ、あっ……むねっ、くにくにしたい、もっとぉ……』
 映像越しに聞こえる男の喘ぎ声と懇願。
 いくら冒険者とはいえ、あのペースで身体を動かしていれば、いずれ気力も体力も尽きる。疲労で完全に意識が落ちるまでは、まともに身体を動かすこともできないまま悶え続ける事だろう。
「せいぜい自分を追い込むといい。もっとも……明日からはこんなものじゃ済まないがな」
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