徒然短編集

後醍醐(2代目)

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お題『「おいそこの兄ちゃん、俺のこと拾ってけよ」 と低い声で喋った路肩の黒猫はしかめっ面をしているように思えた。』

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「おいそこの兄ちゃん、俺のこと拾ってけよ」
と低い声で喋った路肩の黒猫はしかめっ面をしているように思えた。
「喋る猫!実在してたのか……」
  思わず声を上げた僕に、猫は不機嫌そうな声を出す。
「なんだ、お前も猫が喋る事に文句があるタイプかよ?」
「低い声にその態度!やっぱり君のことだよ、うん」
「話を聞かない兄ちゃんだなオイ」
「ああ、ごめん。君のことは友人から聞いていてね。なんでも、君のせいで変人のレッテルを貼られたとか」
  すると、猫は合点がいった様に見える顔でしきりに頷いた。
「あの兄ちゃんの友達か!成程、通りで喋る猫に対する態度がなってない訳だ」
「はは、その拾ってくれる人との出会いを求めてるのに拾われる気が無さ気な感じとかも聞いてた通りだよ」
「へー、そうかい良かったな!……じゃあな、他を探すわ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ」
  面倒くさそうに去ろうとする猫を、僕は咄嗟に呼び止めた。
「なんだ?俺を拾ってくれるのかよ」
「そうとも、その通りさ」
「マジか?自分で言うのもなんだが、拾ってもらう要素ないと思うんだがな」
「いやいや、僕は友達から君の話を聞いてからずっと君のファンなのさ。飼いたくて堪らない!」
「拾ってくれるってんなら有難く拾われるが、なんで拾ってくれんだ?」
「喋る猫だぜ?凄いじゃないか」
「そんな理由かよ」
「ちょっと教えれば僕みたいに人に化けれる様になるかもじゃん」
「兄ちゃん人じゃねえのかよ!」
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