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お題『「ああ、どこかにいい出会いがあったらなぁ」 と、塀の上を歩く猫が低い声で言ったのを聞いた。』
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「ああ、どこかにいい出会いがあったらなぁ」
と、塀の上を歩く猫が低い声で言ったのを聞いた。
「ね……猫が喋った!?」
あまりの衝撃に僕が大声を上げると、猫はうるさそうにこっちを向いた。
「そりゃあ、猫だって喋りたい時はあるよ。それとも何かい、お喋りは人間様の特権だから猫畜生は黙っとけなんて言う気なのかな?それは傲慢じゃないかなぁ」
さも当然の様に僕に向かって喋り続ける猫に、僕が言葉を失ったまま呆然としていると猫はなおも喋り続けた。
「ああ、さてはあれだな……語尾にニャンと付けろとか言い出すんだろう!全く、猫の可愛さはそれだけが元って訳でも無いのに猫系の可愛いキャラは皆ネコミミ付けて語尾ニャンニャンだ!もっと他に目を向けろってのさ。しなやかな体、艶やかな毛並み!ほらご覧、こっちにこそ猫の魅力があると思わないかい?」
遂にこちらに問いかけまでしてきた。だが、あまりにスラスラと話すものだからやや慣れてきた僕は、猫の言葉に答えてしてみる事にした。
「でも君ノラネコだろう、しなやかな体はともかく毛並みは薄汚れてるじゃないか」
「言うじゃないか坊や、確かにそうさ俺はノラだ。だからこそ拾ってくれる人なりつがってくれるメスなり、いい出会いを求めてるのさ」
「坊やだって!僕はもうすぐ大学生だ、子供じゃないぞ」
「ああ、そうかよ。俺は人間でいうとこの三十路だ、歳上だぞ、敬えよ」
「か、可愛くない!猫の可愛さ云々はさておき君は全く可愛くない!」
「可愛くないとは酷いじゃないか……よし、俺を拾ってみろよ。そうすりゃ俺の可愛さをたっぷりお見せしてやるぜ」
「猫を飼いたいとは思うけど、君みたいな可愛くない猫はお断りだよ」
「益々酷いなぁ、大体、言葉にしないだけで殆どの猫は似た様な事を考えてるぜ?」
「聞きなくなかった!知らないままでいたかった!もう猫見る度に『でもコイツ、人は傲慢だみたいな事考えてるんだよな』ってなっちゃうよ!もう絶対に君は拾わないからな!」
「そんな事言っていいのか?だったら、復讐してやるぞ」
「やってみろよ、猫の復讐なんて怖くないぞ」
「フン、実はもう復讐済みさ。もう用はない、あばよ」
そう言い捨てて、猫は特に何もしないまま塀を飛び降りて民家の庭へと去っていった。きっと復讐云々はただの負け惜しみで、復讐なんてできないのだろう。
「復讐なんてされてないぞ、僕は無傷で元気だしね!いい出会いが欲しけりゃ次はもっと愛想良くやったらどうだってんだ!」
猫の真実を告げられて猫に幻滅させられてしまった恨みを込めて猫が去っていった方へと怒鳴って、スッキリした。喋る猫なんて物に出会った事は確かに非日常的であり、まるで何かのだったけど、それが僕に与えた影響は犬派になった程度だった。まあ、現実なんてそんなもんさ。……なんて考えながら僕は帰り道を歩き始めた。
後日、僕が『他人の家に向かって怒鳴り散らす不審者』だという噂が街に流れた。どうやらまんまと復讐に乗ってしまった様だ。
と、塀の上を歩く猫が低い声で言ったのを聞いた。
「ね……猫が喋った!?」
あまりの衝撃に僕が大声を上げると、猫はうるさそうにこっちを向いた。
「そりゃあ、猫だって喋りたい時はあるよ。それとも何かい、お喋りは人間様の特権だから猫畜生は黙っとけなんて言う気なのかな?それは傲慢じゃないかなぁ」
さも当然の様に僕に向かって喋り続ける猫に、僕が言葉を失ったまま呆然としていると猫はなおも喋り続けた。
「ああ、さてはあれだな……語尾にニャンと付けろとか言い出すんだろう!全く、猫の可愛さはそれだけが元って訳でも無いのに猫系の可愛いキャラは皆ネコミミ付けて語尾ニャンニャンだ!もっと他に目を向けろってのさ。しなやかな体、艶やかな毛並み!ほらご覧、こっちにこそ猫の魅力があると思わないかい?」
遂にこちらに問いかけまでしてきた。だが、あまりにスラスラと話すものだからやや慣れてきた僕は、猫の言葉に答えてしてみる事にした。
「でも君ノラネコだろう、しなやかな体はともかく毛並みは薄汚れてるじゃないか」
「言うじゃないか坊や、確かにそうさ俺はノラだ。だからこそ拾ってくれる人なりつがってくれるメスなり、いい出会いを求めてるのさ」
「坊やだって!僕はもうすぐ大学生だ、子供じゃないぞ」
「ああ、そうかよ。俺は人間でいうとこの三十路だ、歳上だぞ、敬えよ」
「か、可愛くない!猫の可愛さ云々はさておき君は全く可愛くない!」
「可愛くないとは酷いじゃないか……よし、俺を拾ってみろよ。そうすりゃ俺の可愛さをたっぷりお見せしてやるぜ」
「猫を飼いたいとは思うけど、君みたいな可愛くない猫はお断りだよ」
「益々酷いなぁ、大体、言葉にしないだけで殆どの猫は似た様な事を考えてるぜ?」
「聞きなくなかった!知らないままでいたかった!もう猫見る度に『でもコイツ、人は傲慢だみたいな事考えてるんだよな』ってなっちゃうよ!もう絶対に君は拾わないからな!」
「そんな事言っていいのか?だったら、復讐してやるぞ」
「やってみろよ、猫の復讐なんて怖くないぞ」
「フン、実はもう復讐済みさ。もう用はない、あばよ」
そう言い捨てて、猫は特に何もしないまま塀を飛び降りて民家の庭へと去っていった。きっと復讐云々はただの負け惜しみで、復讐なんてできないのだろう。
「復讐なんてされてないぞ、僕は無傷で元気だしね!いい出会いが欲しけりゃ次はもっと愛想良くやったらどうだってんだ!」
猫の真実を告げられて猫に幻滅させられてしまった恨みを込めて猫が去っていった方へと怒鳴って、スッキリした。喋る猫なんて物に出会った事は確かに非日常的であり、まるで何かのだったけど、それが僕に与えた影響は犬派になった程度だった。まあ、現実なんてそんなもんさ。……なんて考えながら僕は帰り道を歩き始めた。
後日、僕が『他人の家に向かって怒鳴り散らす不審者』だという噂が街に流れた。どうやらまんまと復讐に乗ってしまった様だ。
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