徒然短編集

後醍醐(2代目)

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お題『「誕生日プレゼントは手編みのマフラーと高級チョコレート、どっちがいい?」 と彼女は訪ねた。』

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「誕生日プレゼントは手編みのマフラーと高級チョコレート、どっちがいい?」
と彼女は訪ねた。
「どっちでもいいよ」
と僕は言った。
「またそれ?私が何か訪ねると、いつもそんな事ばっか言うよね」
  少し拗ねた様な口調の彼女に、僕は内心やらかしたかな?と思いながら言葉を選ぶ。
「だって、普段はともかく今回の件については本当にどっちでもいい……どっちでも嬉しいんだもの」
 「うーん、そっか。でも、それならもっと嬉しそうに言ったらどうなの?面倒くさくてそんな返事をしたみたいに聞こえるよ?」
  一瞬何とか誤魔化せたかと思ったが、そう上手くはいかないようだ。
「コホン……どっちも嬉しくて選べないなぁ、高級チョコは美味しそうだし手編みのマフラーは君の愛情が詰まってそうで、全くもって選べないよ!」
「なーんか、わざとらしいな。本心から言ってるの?」
「ああ、本心だとも。いっそ両方欲しいくらいだよ!」
  精一杯の笑顔と美声で話したのが功を奏したのか、彼女は嬉しそうな、恥ずかしそうな顔をして『えへへぇ~』と声を漏らしている。今度こそ上手く誤魔化せた。僕は今までの彼女の問いかけも含めて、本当に選びきれなくて『どっちでもいい』と答えていたが、それを信じてもらえる保証は無い。故に選択をミスって喧嘩に突入する事だけは全力で回避すべきだと思い、彼女の『今までの「どっちでもいい」に対する言及』への返答で『この場の「どっちでもいい」について』のみに範囲を狭め、その上で誤魔化しに成功。完璧な僕の作戦勝ちである。……と、美し過ぎる勝利に自画自賛をしていると
「じゃあ、仕方ないから両方用意してあげようかな」
「……え?」
「その方が嬉しいんでしょ?」
「う、うん。嬉しいよ、ありがとう」
  嫌な予感がする。いや、この流れからだともう『どっちでもいい』への言及は無いはずだ。僕の勝利は揺るがない。しかし……ならば、この嫌な予感は何なのだろうか。
「その代わり……私の誕生日の時にお返し、凄ーく楽しみにしてるよ」
  ……凄いプレッシャーを感じる一言に、僕はただ頷くしかなかった。コクコクと首を上下に振り続ける僕を見て満足したのか、彼女はそのプレッシャーを霧散させてたわいのない話をし始めた。ああ、僕はきっと、一生彼女に勝てないのだろうなぁ。まあ、仕方ないか。惚れただ。彼女の方が強いに決まってる。
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