9 / 26
お題『「誕生日プレゼントは手編みのマフラーと高級チョコレート、どっちがいい?」 と彼女は訪ねた。』
しおりを挟む
「誕生日プレゼントは手編みのマフラーと高級チョコレート、どっちがいい?」
と彼女は訪ねた。
「どっちでもいいよ」
と僕は言った。
「またそれ?私が何か訪ねると、いつもそんな事ばっか言うよね」
少し拗ねた様な口調の彼女に、僕は内心やらかしたかな?と思いながら言葉を選ぶ。
「だって、普段はともかく今回の件については本当にどっちでもいい……どっちでも嬉しいんだもの」
「うーん、そっか。でも、それならもっと嬉しそうに言ったらどうなの?面倒くさくてそんな返事をしたみたいに聞こえるよ?」
一瞬何とか誤魔化せたかと思ったが、そう上手くはいかないようだ。
「コホン……どっちも嬉しくて選べないなぁ、高級チョコは美味しそうだし手編みのマフラーは君の愛情が詰まってそうで、全くもって選べないよ!」
「なーんか、わざとらしいな。本心から言ってるの?」
「ああ、本心だとも。いっそ両方欲しいくらいだよ!」
精一杯の笑顔と美声で話したのが功を奏したのか、彼女は嬉しそうな、恥ずかしそうな顔をして『えへへぇ~』と声を漏らしている。今度こそ上手く誤魔化せた。僕は今までの彼女の問いかけも含めて、本当に選びきれなくて『どっちでもいい』と答えていたが、それを信じてもらえる保証は無い。故に選択をミスって喧嘩に突入する事だけは全力で回避すべきだと思い、彼女の『今までの「どっちでもいい」に対する言及』への返答で『この場の「どっちでもいい」について』のみに範囲を狭め、その上で誤魔化しに成功。完璧な僕の作戦勝ちである。……と、美し過ぎる勝利に自画自賛をしていると
「じゃあ、仕方ないから両方用意してあげようかな」
「……え?」
「その方が嬉しいんでしょ?」
「う、うん。嬉しいよ、ありがとう」
嫌な予感がする。いや、この流れからだともう『どっちでもいい』への言及は無いはずだ。僕の勝利は揺るがない。しかし……ならば、この嫌な予感は何なのだろうか。
「その代わり……私の誕生日の時にお返し、凄ーく楽しみにしてるよ」
……凄いプレッシャーを感じる一言に、僕はただ頷くしかなかった。コクコクと首を上下に振り続ける僕を見て満足したのか、彼女はそのプレッシャーを霧散させてたわいのない話をし始めた。ああ、僕はきっと、一生彼女に勝てないのだろうなぁ。まあ、仕方ないか。惚れた弱みだ。彼女の方が強いに決まってる。
と彼女は訪ねた。
「どっちでもいいよ」
と僕は言った。
「またそれ?私が何か訪ねると、いつもそんな事ばっか言うよね」
少し拗ねた様な口調の彼女に、僕は内心やらかしたかな?と思いながら言葉を選ぶ。
「だって、普段はともかく今回の件については本当にどっちでもいい……どっちでも嬉しいんだもの」
「うーん、そっか。でも、それならもっと嬉しそうに言ったらどうなの?面倒くさくてそんな返事をしたみたいに聞こえるよ?」
一瞬何とか誤魔化せたかと思ったが、そう上手くはいかないようだ。
「コホン……どっちも嬉しくて選べないなぁ、高級チョコは美味しそうだし手編みのマフラーは君の愛情が詰まってそうで、全くもって選べないよ!」
「なーんか、わざとらしいな。本心から言ってるの?」
「ああ、本心だとも。いっそ両方欲しいくらいだよ!」
精一杯の笑顔と美声で話したのが功を奏したのか、彼女は嬉しそうな、恥ずかしそうな顔をして『えへへぇ~』と声を漏らしている。今度こそ上手く誤魔化せた。僕は今までの彼女の問いかけも含めて、本当に選びきれなくて『どっちでもいい』と答えていたが、それを信じてもらえる保証は無い。故に選択をミスって喧嘩に突入する事だけは全力で回避すべきだと思い、彼女の『今までの「どっちでもいい」に対する言及』への返答で『この場の「どっちでもいい」について』のみに範囲を狭め、その上で誤魔化しに成功。完璧な僕の作戦勝ちである。……と、美し過ぎる勝利に自画自賛をしていると
「じゃあ、仕方ないから両方用意してあげようかな」
「……え?」
「その方が嬉しいんでしょ?」
「う、うん。嬉しいよ、ありがとう」
嫌な予感がする。いや、この流れからだともう『どっちでもいい』への言及は無いはずだ。僕の勝利は揺るがない。しかし……ならば、この嫌な予感は何なのだろうか。
「その代わり……私の誕生日の時にお返し、凄ーく楽しみにしてるよ」
……凄いプレッシャーを感じる一言に、僕はただ頷くしかなかった。コクコクと首を上下に振り続ける僕を見て満足したのか、彼女はそのプレッシャーを霧散させてたわいのない話をし始めた。ああ、僕はきっと、一生彼女に勝てないのだろうなぁ。まあ、仕方ないか。惚れた弱みだ。彼女の方が強いに決まってる。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる