スパダリ社長の狼くん【2】

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第三章

2話 ※R18

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「んんっ……、き、こえちまうからっ、やめ……、しの……ぶっ……」
「大丈夫だよ。鍵もかけておいたし、何度も防音してあると教えてあるだろう? それでも不安なら頑張って声は抑えてごらん」

 
 責め具が取り囲む部屋の中央に据えられていたベッドにまさかこんな仕掛けがあると思っていなかった。両手をしっかりと頭上に上げた形で繋ぎ止められたまま、大きく開かされた足は膝を立てろと命じられ、太ももの間に忍が陣取って苦しいほどに張り詰めたものを指先で猫の喉をくすぐる様に甚振る。何もされていなければ快感であろうその指先も、ブジーを挿しこまれて出すことを禁じられたままでは苦痛にしかならない。弄られすぎて鈍い痛みを訴える亀頭を手のひらが包み込んで、撫でさすっては敏感な割れ目にブジーの先端を押し込めるようにぐりぐりと虐める。
そうしながらももう片方の手は長く形のいい中指を瞬の後孔に挿しこんで、いやというほど味合わせている。気まぐれに前立腺を撫でたかと思えばもうほぐれ切った入口をさらにほぐすように指先を回してかき混ぜ、少しでも気を抜こうものなら深く奥へと突き入れて揺さぶりとめどない快楽地獄へ落としてくる。こんな状態で声を殺せるわけがないのに、家には秋平たちも滞在しているという事実はどうしても頭から消えず、必死で唇を噛み締めるとそれを咎めるように前をいじっていた指が唇を無理矢理開かせる。

「噛んじゃだめだよ。傷になったらバレてしまうよ」

意地の悪い言い様に、もうとっくに限界を迎えた理性を捨てて、

「もうイきたい……も、我慢できねえからっ……抜いて、これっ……」

 と息も絶え絶えにおねだりをすれば、待っていたとでもいうように忍は腰のポケットからリモコンを取り出す。嫌な予感に待ってと縋るも、無情な指は躊躇うことなく最弱のボタンを押した。
「っ?! …………あああぁぁっ、あっ……!! だめ、ぁめこれ……っ、と、とめて、とめておねがい!」
 電動の尿道ブジーを使われたのは初めてだ。少し擦るだけでも耐え難い快感を生む箇所を機械の容赦のない振動が暴力的になぶる。一気に射精感が迫り上がるも塞がれた先端から出せるはずもなく、身悶えしながら逃れようとしても手は拘束されたまま。忍の指はビクンビクンと跳ねて涙を散らす瞬の体を抑えつけて、震え続けるブジーをさらに奥へと押し込もうとしている。
 脳が危険信号を下し、体が逃げる。その耳元に落とされる、絶対に逆らえない甘い響きの主人の声に脳が溶けた。

「だめだよ。これはお仕置きだと言ったじゃないか。反省しているのなら動かない、分かった?」

 ひどい、と涙目になる。たしかに秋平に対しての態度は悪かった。それは認めるが、こんなにねちっこく叱られる筋合いはない。そんな不満を見てとった忍が不敵に笑う。しまったと思った瞬間また差し込まれた指が前立腺を強く押し込み、構える暇もなく前からも奥深くへ震えるブジーを押し込まれ、強烈すぎる快感に一瞬視界が飛ぶ。飛んだのは意識もだったのだが、すぐに快楽に叩き起こされ、敏感すぎる箇所に無情に加えられる刺激に意志とは無関係に跳ねる体に羞恥を堪えきれずに涙が流れる。気持ちいい。気持ち良すぎてクラクラする。拷問に近い快楽に唇からは悲鳴のような嬌声が漏れっぱなしなのだが、もう気にする余裕もなかった。何度も絶頂に駆け上がる体を休むことなく追い立てられ、何も考えられないまま口から譫言のように「もうやめて」「触るぁ……っ」と半分呂律の回っていない懇願を紡ぎ続ける。快感が強すぎて辛い。苦しくてたまらない。もうこれ以上イけないと何度訴えても聞いてもらえないことに、忍に対する本能的な恐怖が心を占めた。啜り泣いて「怖い」と忍を押し除けようと握った拳でその胸を押し返せば、忍は小さく笑う。
「そんな可愛いことをされたらもっといじめたくなっちゃうよ。瞬、どうしたら許してもらえるかわかる?」
 そう尋ねながら忍の指が徐にブジーの振動をオフにする。気絶しかけた瞬の意識を呼び戻すように挿し込んだ指でトンっと強めに前立腺を叩くと、瞬の口から嗚咽のような嬌声が上がった。
「どうしようか? 君はどうしてこんなに叱られているのかな」
「……ぅ、言わなぃ……と、るに、酷いこと……ぃわな、ぃ……」

 ぐしゃぐしゃに顔を歪めて、もうしないと繰り返す。本当はこんなこと、約束できる自信などなかった。また顔を見たら罵ってしまうかもしれない、でも今はなんとかしてこの辛すぎる快楽から逃れたかった。ほろほろと涙が溢れるのを舌で掬い取り、忍は褒めるように睫毛に沿って瞼も舌先でなぞる。ここが気持ちいいのだということは忍に教えられた。瞼の繊細な薄い皮膚が震える。
「前に僕が何度間違えてもきちんと叱ってあげるって言ったのを憶えてる?」
瞬の中の葛藤などお見通しだというように確認され、微かに震えながら頷く。
「ぅん、……でも……も、しなぃ、から……っ」
「いい心がけだね。ただ、安心していて欲しいだけだよ。君が何度先輩に楯突こうと僕も先輩も君を見捨てたりしない。君が君の中のその暗闇を抜けられるまでちゃんと一緒に僕も考えていくから。それこそ、何度だってお仕置きしてあげる。それだけは心配しないで」
 喜んでいいのか怖がっていいのかわからないような言葉を落とされて、それでも働かない頭の片隅で忍の愛情だけははっきりと理解した。瞬がどうあっても見放さないと、何度も繰り返されてきた約束をさらに強固に伝えてくれているのだと。
 落ちそうな意識を懸命に保って、小さく頷いた視界の端で忍が片手にゴムをとり、袋を口で咥えて引きちぎる。嘘だろ、まだ終わらないのか……と思いながら意識を手放した瞬の背を愛おしげに舌で愛撫しながら忍がその体をどれほど愛でていたのか、瞬は翌朝あまりにも痛む腰でなんとか這いずっていったバスルームの鏡に写る自分の姿を見てようやく知ることになったのだった。
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