スパダリ社長の狼くん【2】

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第二章

3話 ※R18

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 じゅぷっ、グチュっ……と卑猥な水音と共に肉縁で腸液が泡立つ。忍の手首をひとまとめに頭上で吊り、足を大きく開いて立たせたままその全身を舐め回しながら、押し込んだ鼈甲製の精緻な張型を執拗に抽挿する。勝手に解放することのないようしっかりと金属製のリングで根本を戒めたまま、清峰の手は酷く淫猥に、そして的確に忍が絶対に屈したくはない終着点へと追い込んでいく。


「気持ちいいだろうな。全身を甘やかされて──そうだな、たとえば生娘であればどれほどの快楽になろうな。だがどれほど気持ちよくとも最後の一手は与えられないままだ。お前のものも酷く苦しそうだな。さぞや痛いだろう、興奮すればするほど食い込んで逆流の痛みに気を失いたくなるだろう」
 指先が桜の蕾のような乳首を摘む。指の腹を擦り合わせるように、挟んだままクニクニと揉みしだいてはぎゅっと強く爪を立てる。
「……っ、…………っっ!! ぁっ…………!!!!」
「随分といやらしい体に躾けられて戻ってきたものだ。影間の真似事をさせられていたというのは本当だったのだな」
 不意に哀れむように背筋を舌で辿られて、開かされたままの太ももが震える。支え切れない。
「脚は閉じるな。誰が許した。……なるほど。ここまで大型のものを使われた者はお前の世代にはいなかったが、お前はこれでも裂けないのか。
 ……忍、お前の嗜虐性を隠すな。落伍者のままで終わるな。東條の家には慰め役がいるのは知っているのだろう、ああなりたいのか」
「んくっ……舌、入れ、っな……っ」
尻たぶが割りひらかれ、舌が張型を咥えこまされた蕾の襞を確認するように這う。時折気まぐれにグリッと張型との境からねじまれたそれに蕾の中までも舐められて、堪えようとしてもどこにもしがみつけないままの体勢では勝手に体がくねってしまう。清峰の吐息までもが無防備に晒された濡れた秘部を弄び、そんなことは認めたくもないのにさらに強い快楽を求めて蕾は勝手にひくひくと収縮を繰り返す。堰き止められたまま痛いほどに猛り切ったものからは床まで長い糸を引いて先走りが零れていた。


 慰め役……聞いたことはあった。東條の家に生まれながら何の功績も残せずに先も見えないと判断された落ちこぼれたちは……一生、この屋敷の奥で飼い殺されながらSubがいないこの家のDomたちの相手を務めるのだと。
 パンっと右尻に手のひらが落ちる。昔もよく思っていた。その手が、己のものにそっくりだと。呼びつけられて痛みを刻み込まれるたびに、この男の凶暴性をそのまま受け継いだのだと言わんばかりの瓜二つの容姿に恐れをなした。
「忍。私はまだお前の価値を勝手に落伍者だなどと決めつけようとは思わない。お前は幼い頃から賢い子だった。お前はDomの嗜虐性にばかり悩むが、それがなければお前のような優しい子は荒波を乗り切って来れなかっただろう。奴隷のように甚振られていたお前を立ち上がらせたものはなんだ。底辺に落ちたお前を這い上がらせたものはなんだ。他人など蹴落とす覚悟がなければここまでのし上がって来れなかっただろう」
「でも……っ、あ、っはぁ……ぼ、くは……んんぅ……っ、大切なものは……壊しなく、ないっ……ふっ……ぅ……! んぁああっ!! あっ!! あ、あ、……っ────!!」
 息も絶え絶えにそういった忍を躾直すように張型の抽挿が激しくなる。滑らかではあるが、決して柔らかくはない鼈甲の太い張型の切先が内壁を押し広げて、これでもかと擦り上げる。もうすでに中イキを覚え込まされている体は、いくら前を戒められていようと構わずさらに深い絶頂へと駆け上がった。目の前が弾け、意識が一瞬落ちた。ガクガクと足が痙攣し、立っていられなくなる。清峰が軽々とその右脚を抱え上げて大きく上げさせた。
「……ふ、なるほど。しっかりと武道は身につけたようだな。しなやかでいい筋肉だ。関節も柔らかい。無駄な主張はしないが肝心な時の瞬発力には長けた質の良い体だな。……忍。大切なものなど持つなと何度教えたらわかる。私を見ていてお前のような賢い子がなぜ学ばない。大切なものほど重く、枷となるのだぞ」
 答えようにも目の前が白く焼き切れるような快感が辛すぎて言葉にならない。唇から漏れるのは望みもしない矯声ばかりで、こんな体勢はもっとも酷かった頃さえもされたことがない。引っ張られた蕾は開いてしまって、自身の体重と清峰の手の動きの早さのせいで入り口まで引かれた張型は凄まじい強さで前立腺を擦り上げてそのまま結腸まで入り込む。絶頂の後の過敏な体は顧みられることもないまま執拗な攻めは続き、薄暗い和室の畳の香りの中でぬめるような生々しい水音と男と思えぬほどの艶を帯びた甘い声ばかりが朱の砂壁に吸い込まれていく。丸障子越しに蝉時雨が響いている。今が昼日中であることに強い背徳感を覚えるほどの倒錯した快楽に、脳がこれ以上は無理だと危険信号を出す。
「っあ、あ、っぁ…………」
 床に下ろされている片足がブルブルと震える。快楽から何とか逃れようと手首を戒める枷に縋り付くように上半身を引き上げる。その途端清峰が忍の腰に腕を回して思い切り下に引き戻した。
「っ…………ん゛ぅ!」
 腰が跳ねる。無意識の動きなのに、軽々と片腕で体を抱えられ、咎めるように何度も上下に揺さぶられ、その度に入ってはいけないところを張型が押し開く。
「誰が勝手に逃げて良いと言った」
「あっあ、あっ……や、めっ……も、う……っ!!」
「逃げるなと言っているんだ」
 清峰の腕がさらに高く忍を持ち上げ、勢いよく落とす。グリグリと忍の最も弱いところに張型を押し付け、味を覚えろというように揺さぶって快感を刻みつける。



 もう、言ってしまえ……と忍の頭の隅で何かが囁く。こうなればわかる。欲しくてたまらない決定的な快楽をずっとお預けさせられ、目の前の相手に全てを握られているのにはぐらかされ続ける辛さ。ただ、認めたくなかっただけだ。そんな自分を瞬に求められてしまうことも、その手段を持つことを忍がどこかで誇りとして生きてきたことも。けれど……。


「もう……っ、くっ……」
「少しはわかったか。お前のそれは逃げられるものでも抑えられるものでもない。お前の後生大事にしているあの青年の持つ因果も同じだ、切っても切り離せない。あの子供はお前からの痛みを望み、お前は痛みを与えることのできる唯一のパートナーだ」
 清峰の指先が忍のものを戒めるリングに伸びる。すぐには外さず、食い込んで赤くなった敏感な箇所をぬるぬるとなぞった。
「大切なものをどうしても持ちたいと言うのならば、なおさらお前の嗜虐性は隠すな。DefenceもできないDomになりたいか」
「んっ……ふ……っ、あ……でも、僕の……罰……っんんっ……」
「人を壊すほどのものだとでも?」
 ぬるぬると先端を指で甚振られ割れ目を擦られる快感に、喘ぎでまともに説明できないにもかかわらず、清峰はあっさりと見抜く。返事がままならず、何度もコクコクと頷く忍の足先を指でなぞってやりながら不意に手を離し、咥え込ませたままだった張型を一気に引き摺り出す。排泄感にもにた快感に忍の頬を涙が伝う。
「馬鹿が。それはDomだからというわけではない」
「はっ……はぁっ……」
 全身から汗を吹き出して吊られた手首だけを支えに何とか立っている忍に、清峰が今日初めての呆れた顔を見せた。普段からいかめしい男で、表情には乏しいのだが、そうして人間味が戻るとやはり誰が見ても清峰と忍はよく似ている。
「人体に斧を振るっても死なないとしたら、それは振るった人間がSubだからか?」
 ゆるゆると首を振り、荒い息の合間にかろうじて礼を言う。
「……ありがとうございます。……僕はDomとしての知識がなさすぎるんですね……、ふっ……んん……」
「そうだ。己の加虐を抑えることはなく、それでもひどい致傷を与えないようにするだけで良い。……お前にしてはこんな簡単な解決策を見出すのに時間がかかりすぎているからな。残念だが、今日は褒美はやれん。しっかり罰を受けていけ」


 手首の枷が外され、くずおれるように膝をついた息子を清峰は易々と抱え上げて先ほどの椅子に座らせる。指先が忍のものの裏筋を優しくなぞり、戒めを解いた。つま先を両手で掴み、膝が肩につくほどに深く開脚させる。
「どこまで楽しませられるのか見せてみろ」





 奥の間に呼ばれた使用人が忍の体の後処理をしながら元通り服を着せてくれるのを、ぼんやりとされるがままに従う。清峰の性技は確かに言われた通りのように思った。手酷く、強烈な刺激を与えはするが後々までダメージが残ることはない。関節の扱いも上手く、解放されればどこも痛くはなかった。吊られていた手枷すらも内側の柔らかな素材のおかげで自重での微かな痣はあるものの擦り傷などは何もない。できるだけ早くダメージを拭おうという精神的なものなのか、自分でもおかしいと思うほどに冷静にそんなことを考える。それでもなぜか、目の前の景色は歪んでいた。ぽたっと枕に落ちる水滴の音に、ああ、泣いているのか……とどこか遠いところで驚く自分がいた。こんなことは日常茶飯事だったから、わざわざ悲しむことではないはずなのに。
柔らかな布団が、懐かしくてだめだ。本家の布団はみなとても品質が良かったのだ。この布団でぬくぬくと眠っていられた頃、兄弟間での子供じみた嫌がらせや喧嘩程度はあってもまだ、忍の世界は守られていた。時折ひどく仕置きをうけることがあっても、身につけなくてはならないことは多くても、まだあの頃の忍は守る方の人間ではなかった。ぼうっとしている忍の髪を慈しむように撫でて、清峰は齢60とは思えぬ鍛えた上半身を平然と晒していた。
「疲れたか」
「……はい」
「……忍。私がお前を特別気にかけていたことは知っていただろう。もうこんなに心配をかけるな」
「…………」
「良い子だ」
黙ったまま小さく頷いた息子の頭をくしゃくしゃとかき混ぜて、清峰は何事もなかったかのようにシャツを羽織って奥の間を後にする。
部屋の襖が閉まる直前、
「……助けてやれなかったことをすまないと思っている。力の及ばない父親だった」
というポツリとした懺悔が淡い蝉時雨に落ちた。
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