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9話 青い薔薇の奇跡

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もしや、これは運命としか言わざるを得ない出会いだった。

これは、俺がまだ野球少年だったときのこと。

ある日、公園で友達と野球をしていたときのことだった。

俺が、バッターをやっていて、つい思い切り打ってしまった。

そしたら見事に家にホームランをした。

そして、謝りに行ったときに彼女と出会ったんだ。

その彼女は、ベッドに寝ていた。

だけど腕には、点滴のハリがささっていた。

「こ、こんにちは」

俺は、ついつい可愛い子だったから声をかけてしまう。

こんなだから女好きって言われるんだな。

「こんにちは」

朗らかに彼女は笑った。

「あ、あの、窓を割ってすみません」

「別にいいですよ」

「だけど、お母さんが...」

俺が、続きを言おうと思ってたら彼女の母親がドーンと出てきた。

まるで、悪役の登場のように。

「弁償してもらいますからね!」

彼女の母親は、もう茹でタコ状態。

「お母さん、弁償は、私とお話するってゆうのは?」

彼女の発言に俺と母親はびっくりして、しばらく無言状態になった。

すると母親は、重たい口をひらく。

「乙葉が言うなら仕方ないわ。それでもいいでしょう」

「ありがとう。お母さん」

「乙葉が、それでいいって言うならいいわよ」

「なんか、すみません。ありがとうございます」

「べつに、あなたの為ではないので」

ああ、母親は乙葉さんにメロメロらしい。

でも、乙葉さんには助けてもらってしまった。

「あの、ありがとうございます」

「いえいえ、逆にめんどくさいこと頼んでしまってすみません」

「そんなことないです。そんなに話し相手が欲しかったんですか?」

乙葉さんは、ゆっくり起きあがった。

まるで、体が不自由みたいに。

「私ね、足が悪くて、歩けないんだ」

「そんな...」

俺は、歩けないなんて想像できなかった。

だって、俺と同じくらいの歳のひとが歩けないだなんて...

「だからね、外のお話を聞きたいの。外では今、こうゆうの流行ってるとか、くだらないことでも聞きたいなって思って」

「そんなことでいいんでしたら毎日通わせてもらいます!」

「忙しいだろうから毎日じゃなくてもいいよ」

「来れる日は全部ここに来ます!」

「気使わなくていいよ。...同情とかもしなくていいしね...」

乙葉さんは、悲しそうな笑顔でそう言う。

ああ、今まで嫌なことや辛いことあったんだろうな...

「ぶっちゃけ、下心があります俺」

俺の爆弾発言で、キョトンとした乙葉さん。

まるで、鳩のようだった。

「え?私に?」

「はい。乙葉さんです」

「何言ってるの?いきなり。大体今日初めて会ったんだよ?」

「俺は、時間なんて関係ないと思います。なので、じゃんじゃん行かせてもらいますね」

「あなたって面白いひとね。名前は?」

「俺の名前は、光輝です。ちなみに16歳です」

「光輝くんって呼ぶね。私は乙葉で、18歳」

やっぱり歳上だった。

よかった、敬語使っといて...

「じゃあさ、とりあえず友達になろ?」

「じゃあ、友達からスタートですね」

まるで、太陽のような笑顔をする乙葉さんがとても弱々しく、そして愛しく感じた。

だけど、乙葉さんを見たとき、全身に電気が走るようにビビッと来たんだ。

胡散臭いけど、ああ、俺の運命の人はこの人だって思ったんだ。

それからは、乙葉さんの家に毎日のように通った。

乙葉さんの母親からは、睨まれたりしたけど、乙葉さんは俺に笑顔を向けてくれる。

そして、距離が縮まったころに乙葉さんに1番嫌なことを言われてしまう。

「光輝さ、もう来なくてもいいよ?」

「どうしてそんなこと言うんですか?友達だから来たっていいじゃないですか」

「私が迷惑なの!」

乙葉さんが初めて怒鳴った。

そんな乙葉さんを見て、イラッとしてしまった。

「分かりました。今日は帰ります」

そう言って、乙葉さんの部屋から出ようとしたときにチラッと乙葉さんを見たら、複雑そうな、どこか悲しそうな顔をしていた。

なんで、そんな顔するんですか!?って聞きたかったけど聞けなかった。

聞いてはいけないような気がして。

それかは3日が経ち、乙葉さんに謝りに行こうと思って家まで行った。

だけど、ずっと胸騒ぎしかしなかった。

それも嫌な予感。

こうゆうときってよく当たるって言うんだよな...

乙葉さんの家を尋ねたら、乙葉さんの姿は、そこにはなかった。

いつも寝ているベッドは、誰も寝てはいなかった。

すごい綺麗な部屋でも、乙葉さんがいなくなるともぬけの殻のように見える。

「乙葉は、入院したよ」

後ろには、乙葉さんのお父さんがいた。

「え?どうゆう事ですか?」

「足の手術するんだ」

「それって大丈夫なんですか...」

「そんなに難しい手術ではないからな。だけど歩けるか歩けないかは、別らしいが」

「そんな...」

「おまえは、乙葉のこと本気で好きなのか?」

お父さんが真面目な顔をして聞いてくる。

乙葉さんの父親にそんなこと言われると緊張してしまう。

ていうか、バレてたんだ...

「はい。本気です。乙葉さんが体に不自由を持ってても、好きです。だって、乙葉さん自身が好きなんです。俺にとって乙葉さんは太陽なんです。俺が、嫌なことがあったときも、話を静かに聞いてくれたり、相談に乗ってくれたり、そして怒ってくれたり...そんな乙葉さん全てが好きなんです!」

俺は、乙葉さんの想いを全て言った。

もっと時間かければ後20個くらいは出てくると思うけど。

俺の想いが伝わったのか、お父さんは、ハハハッと笑う。

その笑い方は、乙葉さんにそっくりだった。

ああ、笑い方はお父さん譲りで、怒った表情は、お母さん譲りなんだ。

「じゃあ、乙葉のとこに言って伝えてこいよ」

「え?いいんですか?」

「ああ、だが、乙葉を泣かしたら許さないからな」

「大丈夫です!嬉し涙を流せるくらい幸せにするつもりなので!」

「そうか...乙葉を好きになってくれてありがとな」

そういった顔は、娘を思う父親の顔だった。



「乙葉さん!」

俺は、無我夢中で乙葉さんの名前を連呼する。

「大丈夫です。手術は成功しましたから」

「いつ目を覚ますんですか!?」

「えっと、今日か遅ければ明日ですかね」

看護師さんに言われ、そっと胸をなで下ろした。

俺は、乙葉さんの目が覚めるまで手を握っていた。

「あれ?光輝?」

「ん...?」

俺は、寝てしまっていて、乙葉さんに起こされた。

「あれ!大丈夫ですか!」

「うん。大丈夫だけど、どうしているの?」

「乙葉さんのお父さんが教えてくれたんですよ」

「え!うそ...あのお父さんが?」

「はい...あの、言いたいことがあるんですけど、いいですか?」

「う、うん...」

「あの、俺は乙葉さんのことが好きなんです。乙葉さんは俺の太陽のような存在なんです!だからあの、絶対幸せにしますので、結婚を前提に付き合ってもらえませんか?」

俺は、精一杯の告白をし、青い1輪の薔薇を乙葉さんに差し出した。

「だけど、私は普通じゃないんだよ?普通の恋人らしいこともできないよ」

「いいんです。だって俺は乙葉さん自身を好きになったんです。この先、乙葉さんよりも俺のことを好きにさせてくれる人なんていません!」

「そんな...。だって...」

乙葉さんは、嬉しいのからなのか、綺麗な涙を流す。

「大丈夫です。俺を信じてください!この花を受取ってくれませんか?」

乙葉さんは、白くて細い腕を伸ばし、青い薔薇を受取ってくれた。

「こんな私でよければ、よろしくお願いします」

最後は、笑って返してくれた。

ああ、俺の彼女は、世界一可愛い。

青い薔薇には、願いをかけて。

乙葉さんに幸せを。



fin



青い薔薇の花言葉
「夢かなう」
「不可能」
「奇跡」
「神の祝福」
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