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新たな力
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◇◇◇
シルヴィアの本能は知っているようだ。その小さな手をルフの頬に添えると、欲するままに、ルフの神力を求めた。
唇を重ね合わせると、ルフの神力がシルヴィアの身体へ口伝いに流れ込んだ。徐々にシルヴィアの小さな身体はルフの神力で満たされた。
(どういたしましょう。私、頭がぼうっとしてまいりましたわ。唇で触れる唇の感触は、なんと柔く甘いものなのでございましょうか。はしたない振舞だと分かっておりましても、あまりに甘美で、もっと欲しくなりますわ。婚約者とは言え、自ら殿方と唇を触れ合わせるなど、淑女としてあるまじき行為ではないかしら。私は、なんて破廉恥なことを…。これでは、ルフに嫌われてしまいますわ)
そう思うとシルヴィアの目にじんわりと涙が溢れた。
『愛しいシルヴィア、泣かないでおくれ。我は貴女に無体を強いとうない』
(ルフに口づけた私をお嫌いにならないで下さいまし)
『嬉しく幸せに思うばかりだ。例え、貴女に厭われようと、日が西から昇ろうと、我が貴女を嫌うことなど断じてない』
(ルフ。心よりお慕い申しておりますわ)
安堵したが恥ずかしさに顔を合わせられない。シルヴィアは腕をルフの首に回し、抱きついた。「ふぅー」と肺の中の空気を全て出し切り、ゆっくりと神聖な森の空気と共にルフの匂いを吸い込んだ。空になった肺が満たされ、気分が落ち着くと、ある疑問が生まれた。
(以前のように、神力も枯渇寸前まで使うことで増えますの?ルフに私の魔力を差し上げる事は出来ますの?)
『ああ。許容量は増える。貴女の魔力は、甘美な媚薬だ。理性では抗えぬ。我の神力を吸うて、十分に理解したであろう』
(ええ。身体を満たしても尚、求めてしまいますわ)
シルヴィアは真っ赤になり、ルフの首に、かじりつくようにぎゅっとしがみついた。
◇
シルヴィアは館に戻ると、日課の続きに勤しんだ。その最中、神力は少しの量でも効果が高いことが分かった。魔力の濃縮版というか原液のような感じかしら、とシルヴィアは考えた。
◇◇
火・風・水・土の精霊たちが満足する魔力量になると、
鋼・雷・氷・樹の魔法を精霊たちが使ってくれるになる。
◇◇
以前、精霊に教えてもらった魔法の真理を思い起こす。数値で表現すると、魔力ならば百を越えてやっと使えるようになる威力の魔法を、一の神力で使えるような感覚だ。つまり、簡単な魔法なら造作もなく行使できてしまう。だから、空を飛ぶこともできるし、温泉で試してみると水の中でも全く息苦しくならなかった。たぶん、火の中も、土の中も平気なのだろう。
(土の中……、どんな状況で使うのか想像出来ませんわ。あっ!溶岩!私噴火口の中を覗いてみたいと思っておりましたの!)
『…シルヴィア…』
ルフを閉口させてしまったシルヴィアである。
そして、【心眼】と【鑑定】の力がどういうものかを知ることになった。
いつものように厩舎に立ち寄り、馬たちに声を掛けようとしたシルヴィアは、驚愕と歓喜に混乱した。
『シルヴィア!僕、早く外に行きたい!思いっきり跳ね回りたいよ!』
『私はもう少し寝ていたいわ』
『シルヴィア!もっと草を食べたいよ』
『シルヴィア!早く僕の所に来て!』
『私は温泉に入りたい』
馬たちが一斉にシルヴィアに話しかけてきたのだ。会話が出来るだけではない。じっと観察すると、古傷や筋肉の張り具合、内蔵の動きなどを見ることが出来た。しかも、状態だけではなく、気質や秘めた能力まで感じとることができた。
これが【心眼】ですのね。
【鑑定】は意思なき物に対して発揮される力のはずですわ。
そう考えたシルヴィアは、温泉水をじっと観察してみた。
泉質:酸性-含硫黄・鉄・アルミニウム-カルシウム-硫酸塩泉(酸性高温泉)
効能:神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病、月経障害
使用方法:患部に清潔な布等で、一日数回塗布する。
・大人は原液のままで使用してよい。
但し、大人でも皮膚の症状によっては、刺激の少ないように少し水で薄めて使用すること。
・皮膚の弱い方や乳幼児は水で二~三倍に薄めて使用すること。
・酸性が強いため、目に入るとしみるので注意すること。
・肌に痛みや異常などが見られた場合は使用を中止して、医師の診断を受けること。
・卵や根野菜などの食材を噴気で一日蒸すと、温泉の成分を染み込ませることが出来る。
(!!!!!…アル…?恥ずかしながら、存じませんわ。効能や使用方法まで!料理にも使えますの!?素晴らしいですわ)と目を輝かせた。
『貴女の目まぐるしく変化する表情は、いつまでも見飽きることがない。実に好ましい』
ずっと、ルフに見つめられていたことに気が付いたシルヴィアは、完全に茹ったように全身真っ赤になった。シルヴィアは、慌てて温泉から上がると、火照りを冷ますのに四苦八苦した。
◇◇◇
シルヴィアの本能は知っているようだ。その小さな手をルフの頬に添えると、欲するままに、ルフの神力を求めた。
唇を重ね合わせると、ルフの神力がシルヴィアの身体へ口伝いに流れ込んだ。徐々にシルヴィアの小さな身体はルフの神力で満たされた。
(どういたしましょう。私、頭がぼうっとしてまいりましたわ。唇で触れる唇の感触は、なんと柔く甘いものなのでございましょうか。はしたない振舞だと分かっておりましても、あまりに甘美で、もっと欲しくなりますわ。婚約者とは言え、自ら殿方と唇を触れ合わせるなど、淑女としてあるまじき行為ではないかしら。私は、なんて破廉恥なことを…。これでは、ルフに嫌われてしまいますわ)
そう思うとシルヴィアの目にじんわりと涙が溢れた。
『愛しいシルヴィア、泣かないでおくれ。我は貴女に無体を強いとうない』
(ルフに口づけた私をお嫌いにならないで下さいまし)
『嬉しく幸せに思うばかりだ。例え、貴女に厭われようと、日が西から昇ろうと、我が貴女を嫌うことなど断じてない』
(ルフ。心よりお慕い申しておりますわ)
安堵したが恥ずかしさに顔を合わせられない。シルヴィアは腕をルフの首に回し、抱きついた。「ふぅー」と肺の中の空気を全て出し切り、ゆっくりと神聖な森の空気と共にルフの匂いを吸い込んだ。空になった肺が満たされ、気分が落ち着くと、ある疑問が生まれた。
(以前のように、神力も枯渇寸前まで使うことで増えますの?ルフに私の魔力を差し上げる事は出来ますの?)
『ああ。許容量は増える。貴女の魔力は、甘美な媚薬だ。理性では抗えぬ。我の神力を吸うて、十分に理解したであろう』
(ええ。身体を満たしても尚、求めてしまいますわ)
シルヴィアは真っ赤になり、ルフの首に、かじりつくようにぎゅっとしがみついた。
◇
シルヴィアは館に戻ると、日課の続きに勤しんだ。その最中、神力は少しの量でも効果が高いことが分かった。魔力の濃縮版というか原液のような感じかしら、とシルヴィアは考えた。
◇◇
火・風・水・土の精霊たちが満足する魔力量になると、
鋼・雷・氷・樹の魔法を精霊たちが使ってくれるになる。
◇◇
以前、精霊に教えてもらった魔法の真理を思い起こす。数値で表現すると、魔力ならば百を越えてやっと使えるようになる威力の魔法を、一の神力で使えるような感覚だ。つまり、簡単な魔法なら造作もなく行使できてしまう。だから、空を飛ぶこともできるし、温泉で試してみると水の中でも全く息苦しくならなかった。たぶん、火の中も、土の中も平気なのだろう。
(土の中……、どんな状況で使うのか想像出来ませんわ。あっ!溶岩!私噴火口の中を覗いてみたいと思っておりましたの!)
『…シルヴィア…』
ルフを閉口させてしまったシルヴィアである。
そして、【心眼】と【鑑定】の力がどういうものかを知ることになった。
いつものように厩舎に立ち寄り、馬たちに声を掛けようとしたシルヴィアは、驚愕と歓喜に混乱した。
『シルヴィア!僕、早く外に行きたい!思いっきり跳ね回りたいよ!』
『私はもう少し寝ていたいわ』
『シルヴィア!もっと草を食べたいよ』
『シルヴィア!早く僕の所に来て!』
『私は温泉に入りたい』
馬たちが一斉にシルヴィアに話しかけてきたのだ。会話が出来るだけではない。じっと観察すると、古傷や筋肉の張り具合、内蔵の動きなどを見ることが出来た。しかも、状態だけではなく、気質や秘めた能力まで感じとることができた。
これが【心眼】ですのね。
【鑑定】は意思なき物に対して発揮される力のはずですわ。
そう考えたシルヴィアは、温泉水をじっと観察してみた。
泉質:酸性-含硫黄・鉄・アルミニウム-カルシウム-硫酸塩泉(酸性高温泉)
効能:神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病、月経障害
使用方法:患部に清潔な布等で、一日数回塗布する。
・大人は原液のままで使用してよい。
但し、大人でも皮膚の症状によっては、刺激の少ないように少し水で薄めて使用すること。
・皮膚の弱い方や乳幼児は水で二~三倍に薄めて使用すること。
・酸性が強いため、目に入るとしみるので注意すること。
・肌に痛みや異常などが見られた場合は使用を中止して、医師の診断を受けること。
・卵や根野菜などの食材を噴気で一日蒸すと、温泉の成分を染み込ませることが出来る。
(!!!!!…アル…?恥ずかしながら、存じませんわ。効能や使用方法まで!料理にも使えますの!?素晴らしいですわ)と目を輝かせた。
『貴女の目まぐるしく変化する表情は、いつまでも見飽きることがない。実に好ましい』
ずっと、ルフに見つめられていたことに気が付いたシルヴィアは、完全に茹ったように全身真っ赤になった。シルヴィアは、慌てて温泉から上がると、火照りを冷ますのに四苦八苦した。
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