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第一章

~79~

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■ミーシャ




「女漁りもほどほどにしておけ」

「んあ?心配すんなって、後腐れの無いように気ぃ配ってっから」

「・・もういっそ私で済ませれば良いだろう」



精霊に関わる場所を訪ねるだけの旅
その殆どは辺境の地ばかりな事もあり自然と野営が身に付いている。しかし何の手掛かりも無しに宛もなくフラフラするなんて時間の無駄でしかない(この答えの出ない事前提の旅自体が時間の無駄そのものであるのだが、それはそれ、棚にでも上げて置く)為、人の住む集落や村、時には調べ物にうってつけな図書館のあるような街等に寄って宿泊まりをする事もある。
私は調べ物に図書を漁ったり、伝承や噂話等、口伝でしか知られないような話を聞いて回ったりとそれなりに忙しいのだが
この荷物ルークは観光だか、地域食だか、主人を放って遊び気分と来た。
しかもここ最近では宿の部屋を別に取ったり、その上女を連れ込んだりと、金の無駄遣いにも程がある。
私とて理解が無い訳では無い。
国を離れて数年程、詳しい年月なんて数えてもいないが私もルークも成長し子供から大人へと変わる転換期、第二次成長と言い換えるべきか
生きた肉体を持つ以上避けられない生理現象、私もまた月経の処理をするようになった。
私とルークでは性別の違いこそあれ他は似たようなものだろう、溜まるものを抜きたいだけなら手間の掛かる事をわざわざする必要も無い


「てめぇには婚約者がいんだろーが」

「居るが、別に操を立てている訳では無い
処女で無ければ結婚出来ないなんて道理も無いしな」

「・・・うーわ、言うと思った
別に良い、てめぇの顔見ると萎えるし」

「失礼な奴だな」


私の事を欲のある目で見てくる癖に、と思うが人にも好みがあるのだろう
私の身体はタイプでも顔だけはタイプで無いと言う事か、なら目隠しをさせる・・・いや、私が顔を見せない方法が良いか

「言っとくが俺はてめぇを抱かねーかんな。目隠ししよーが何しよーが」

「良くわかったな」

「てめぇの考えそうな事だ。ってかマジで抱かれるつもりだったのかよ
貞操観念ってーのはどうした」

「生物の生存意義は種の繁栄にこそある。
そんなものに価値など無い」

「お貴族様が言う台詞じゃねーな・・・」

「私とて時と場所は弁えている。
こんな下世話な話題、お前の前でしか話さない」



結局の所、ルークは街で寝泊まりする時は必ずと言っていい程女漁りを続けた。
勿論部屋代やら女代はルークの自前で払われていたので私としても妙な修羅場に巻き込まれ無い限りは黙認していた。

そのお陰で結婚式まで処女を貫けたのは蛇足だ















◆ルーク



執着しているという自覚はある。
だが、何故執着するのか?こいつの何処にそこまで入れ込んでいるのか?と言う疑問にはついぞ答えは出てこない

思えばとんでもない出会いを果たした餓鬼の頃、一目見てその強さに惹かれてはいたのだろう
傍に居られるだけで幸せーとか、そんな糞寒い事言うような柄でも無い

ただ、こいつの傍らには俺が在るべきなのだ。

常に視界に入れて置きたいとか、そこに居る事を確認して置きたいとか、そーゆーんでも無くて

当たり前のように俺はこいつに付いていくのだろう
それが自然であるように
当然のように



「俺はお前の選んだ従者だからな」


ドスッ


振り被った槍を心臓目掛けて刺し貫く
薄っぺらい身体を簡単に抜け、地面まで届いた感覚を掌にミーシャのやろうと目を合わす

こんな時まで無表情かよ
お前、仮にも殺されかけてんだぞ?
まあ大丈夫だと思うが、もし上手くいかなくておっ死んじまったとしても構わない
そん時は後を追うだけだ。
我ながらイカれてる思考だ。

ズ、
と槍を徐に引き抜く

いつの間にやらライネルだけでなく嬢ちゃん達までもが周りにいて
あー、一部始終見られてた感じか?と少し気まずい


「な、なんで・・・・」

「黙って見てろよ」


まぁ悪い事したとは思う
なにせ結婚式当日に嫁を拐われた上殺される現場を見る羽目になっちまった訳だ。


ピシッ





今この場に居る全員が

『奇跡』を目にした。













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