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第一章
~76~
しおりを挟む◆ユキノ
レオクリス様を強制的に静かにさせて(気を失わせて)ようやく落ち着いて現状把握をする事になった。
「つまり、地下から大量に魔物が湧き続けていると・・」
「ああ、結界で塞いではいるが、原因が解ら無いでは根本的解決にならないからな
何か知っているかね?」
「残念だけど、魔物は根源なく湧き続けるわよ。夕方になるまで戦い続けてやっと魔物の気配がしなくなる。筈だから数も原因も知らないわ」
「では、中に入り君達は魔物の討伐を、私とルークは魔物の湧き出る原因を探す。でどうかね?」
「・・・・・そう、ね。じゃあお願い出来る?」
「では、行くか」
正直心良くは思っていない相手が着いて来る事に不満はあった。
しかし彼女達が強い実力者である事は周りの惨状が物語っている。
共に戦うのならこれ以上無い程心強いだろう
名誉だとか手柄だとか言ってられる程の余裕は無い
ましてやゲーム内でも苦戦を強いられると知っているからこそ尚更だ。
地下へと続く階段の入口を見てギョッとする
真っ白い毛の魔物達がワラワラと大口を開けて牙を剥き出しにして暴れまわっている。
テレビで見た事のあるホワイトタイガーとかホワイトライオンの姿とは比べ物にならないくらいに怖い
良くよく見れば肉食獣のようなモノだけでなく立派な角のある鹿のような魔物もいて、豹のような魔物の隣で蹄を高く上げ暴れている。
動物とは違うのだと、改めて認識する。
これからこの中に、暗い地下に入って戦うなんて想定していなかった。
ゲームでは街中に現れた魔物を討伐して行く流れであったから魔物達がどこから現れたのか、その原因は語られる事が無かった為に、まさか王城の地下だなんて思いもしなかった。
でも、ゲームとは違って誰も傷付かない、建物の被害も殆ど無いだろう
なるほど、ミーシャはこうやって被害を本当に最小限に抑え込んできたからこそ評価されてきたんだろう
そして私の予言程の被害が出ないから相対的に私の予言が嘘っぱちに思われてきたんだろう
入口を塞いでいた結界と思われる物が下に押し込まれる。
魔物達は重なり合いながら階段を転がり落ちていく
「先頭は頼む」
「ミルウェッチさん、お願い!」
「はい、行きますよ皆さん」
戦力外となったレオクリス様に変わりミルウェッチさんが開幕炎をぶちかます
魔物の生態系なんて詳しくはわからないけれど、相手は借りにも肉体を持つ生き物だ。
それも地下なんて閉鎖された空間、逃げ場の限られた場所で焼かれれば溜まったものじゃないだろう
それにこーいう場所だと酸素?とかまぁ、空気が限られているから有効だと何かの漫画で見た事がある。
そして私達も中へと踏み入る。
ミルウェッチさんが攻撃魔法専門ならミーシャは防御専門だ。
私達を囲むように結界が張られ、それと多分強化系も使っている。暗いはずの地下が良く見えるし、身体の調子も良い
私は戦えない、それだけの魔力も、魔法適正も無い
しかし何もしない訳にはいかないと意地で治癒魔法を覚えた。
所謂回復要員と言った所か
この世界に存在する魔法、と言うものは本当に不可思議なものだと思う
この世界の人間は、産まれながらに魔力を持っているのだとか、その量は人により疎らだけれど、魔力を持たないで産まれる生き物はいない。らしい
そしてその魔力を扱えるかどうかの適正の有無が魔法を使える人と使えない人との差。だと本に書いてあった。
物心付く頃から手足のように扱える人も居れば、努力に努力を重ねてようやく扱えるようになる人も居る。
王族に近い血を持つ人は前者で、レオクリス様が良い例だろう
ミルウェッチさんは後者だ。元々は魔法が余り得意では無かったけれど精霊官としての跡を継ぐ為小さい頃から努力してきたと言っていた。
私は別の世界の人間だし、予知能力には目覚めたけれど魔法は使えないものだと思っていた。
ゲームではいつも守って貰う立場で、予知能力でのサポートが主だったから必要無いとすら考えていたけれど、状況が状況だ。そうも甘い事は言ってられない
お城は追い出されるし、レオクリス様は昔の女にしがみついてるしで、散々だ。
パーティーで一番の足手まといだって自覚はあったから、せめて何かしら出来るようになりたいとミルウェッチさんにお願いして魔法の猛特訓をした。
ど素人の私がいきなり攻撃魔法だなんて使ったら大惨事になりかね無いから治癒魔法とか、強化魔法とか、サポートに特化した魔法を必死になって覚えた。
私は頑張っている。こんなに頑張ってる。
こんなに頑張ってる私が評価されないなんておかしい
絶対に、何がなんでも評価されてやる。
褒められるだけの、讃えられるだけのことをして、多くの人に、この国の人達に賞賛されたい!
なのにやっぱりあの女には負ける。ずっとずっと負けている。
あれだけの数の魔物を抑えるだけの結界も、私達に掛けられた強化魔法の精度も、レオクリス様よりも上だと分かってしまう
追い抜け無い、追い抜ける訳が無い、悔しい
地下へ入り、狭くなった場所での戦いは行動がかなり制限される。
ミルウェッチさんの風魔法で吹き飛ばされ、身体が切断される魔物達
狭い一本通路だからミルウェッチさんの魔法だけで殆ど片付けられてしまうけれど、魔力切れを起こしてしまう事も考えてビリークくんはボーガンを主力に、毒や麻痺薬の入った投げ袋を
マルクスくんも同じくボーガンを持ち、ワイヤーやトラバサミ等の罠になる物をいくつか
ギラジュくんは棍棒や短剣を複数、篭手と一つになっている小さい盾を
私は足手まといにならないよう周囲に気を配り安全第一に怪我人が出たらすぐに治癒出来るようにする。
そうして順調に魔物を倒していき進んでいると
道が三つに別れていた。
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