76 / 84
第一章
~75~
しおりを挟むパン、パンッ
乾いた火薬の音
パチパチパチパチパチッ
一斉に叩かれる人々の拍手の音
どこからか色とりどりの紙吹雪が散らされ無惨にも踏み潰されていく
花の節の始まり、それを祝う祭りが行われており
私とライネルの結婚式も行われた。
王都で一番大きな精霊殿で互いの愛を誓い、祝福を受ける式を終えれば披露宴と言う名の見世物となるだけのつまらないものだ。
屋根の無い祝時用の馬車に乗せられ街の中をただただ意味も無く闊歩する。
私達に手を振る者拍手する者、彼等は面白そうな物に群がるだけで私達を心から祝福してやいないだろうに
「ミーシャ、少しは愛想良く笑ったら?折角の結婚式なのにそんな顰めっ面じゃ皆戸惑ってしまうよ」
「笑いたくも無いのに笑える訳がなかろう
彼等とて休日の暇を潰しているだけでこちらの顔まで見てやしないだろう」
「いや、そんな事無いよ。皆俺達を祝福してくれている。
そうじゃなきゃここまで多くの人がわざわざ休日に集まったりなんかしないよ」
「節の祭りなのだから人が出るのは当然だろう」
「うーん、
ミーシャはこの国の人達から本当に慕われているのにねぇ」
慕われている?
何の冗談だろう
私自身自覚しているが、私はそうそう好かれるような人柄では無い
人とプライベートな話はしたく無いし、仕事を済ませれば余計な話はせずに切り上げる。
馴れ馴れしく近寄ってくる輩の相手などしないで無視する。
食事だとかに誘われても大体は断るしたまに載っても食事が終わったらすぐに帰宅して二次会にまで残った試しが無い
こんな人とのコミュニケーション能力が底辺だろう私が人から好かれる訳が無い
白いドレスに白いタキシード、結婚とは如何にして純白を好むのだろうか
馬車の装飾も白ければ、それを引くのも白馬と徹底している。
肌の白い私に白は似合わないと言ったにも関わらずゴリ押しで着る羽目になった。
ワーワーと歓声が近くから遠くから響いており、ただ座って速く終わらないものかと無意味に時間を食い潰す
随分と長い準備期間を経てようやくの結婚式だと言うに、これ程までにつまらないとは
人々が道の端に群がり騒ぎ立て、過ぎ去れば背を向け知らぬ顔をする。
そんなものだ。
面白そうだから、人が集まっているから、何となくで野次馬をしてるだけの輩に手を振られても何とも思わないし思えないと言うもの
そんな冷めた思考でいるとふと、種類の違う叫びのような声が聞こえた気がした。
馬車からずっと離れた、奥の方
良く目を凝らし耳を澄ませれば何やら慌てた様子
「ルーク、聞こえるか?」
「んあ?あれか?」
馬車の後ろに座らせた紺色の礼服を纏ったルークに尋ねる
動物的感覚の優れたルークは時に私よりも優れる為便利だ。
「・・・マジか、城の地下から魔物が湧いてきたってよ。」
「チッ、ルーク」
「おう」
「えっ、ミーシャ!?ちょっ、ルークさん待って!」
立ち上がればすぐにルークの腕が腰に回り膝裏の辺りを手で支えられるように抱えられ、無言で私とルークに強化魔法を掛けた瞬間視界が急上昇する。
屋根から屋根へ、移動をルークに任せ目的地、王城の解体工事現場を見据える。
まさか魔物が王都の中心から湧くなどと、誰が想像出来ると言うのか
「翔べ」
より一層高くなった視界の先
崩れた石壁と、地下に続く階段だろう場所から湧き出る魔物、逃げ惑う人々
数が多い上に魔物があちらこちらへと散ってしまっている
「ルーク、周りを狩れ穴を塞ぐ」
「おう」
着地すぐ、真っ直ぐに地下階段へと向かう
向かってくる魔物を錬成魔法で作った剣で両断し、蓋をするように階段入口に結界を張る
他に魔物の出入りする場所が無いか探しながら近くの魔物を剣で、時に魔法で倒していく
二十~三十程いた魔物の死骸だけが残り、散ってしまっただろう魔物の死骸が遠くに見える。
ドレスが汚れてしまったが、まあ仕方ない
「えっ・・・嘘、なんであんたここに居るの!?
って、ええっ!!?あんたっまさかっ・・式放り出して来た訳!?
何やってんの新婦が!!」
「おや、これは、私達の出番がまた無くなってしまいましたね。
これだけの数を良く無傷で・・・」
「ミーシャ!?ミーシャ!ミーシャ!」
「あっ、レオ様!」
ユキノ嬢、ミルウェッチ・クロウラー、レオクリス・サズワイト、ギラジュ・ブラン、ビリーク、マルクスらが剣やら盾やらを持って現れた。
これが例の魔物の大量発生とやらなのだろうか?
ユキノ嬢に話し掛けようとした油断からかレオクリス・サズワイトに身体を拘束されてしまった。
「ミーシャ!好きだ!愛してる!ミーシャ!ミーシャ!俺を、俺を愛してくれ!ミーシャ!」
「離れろ、離れなさい、レオクリス・サズワイト
おい、ビリーク、マルクス、これを引き剥がしてはくれないか」
「えっ、俺!?」
「な、何で・・・うぅ」
「それよりユキノ嬢、例の魔物の大量発生とやらはこの事かね?結界で防いでいるが、地下から湧いて来ているようだ」
「レオクリス様!しっかりして下さい!
多分そうなんじゃないの!?詳しい事は私だって知らないわよ!」
「ちょっと、まぁ、落ち着いて下さい皆さん
とりあえずレオクリスでん、んん、レオクリスさんを何とかしてから、それから現状把握に努めましょう」
「ほら、殿下離れて下さい、ね?」
「女性にしがみつくなんてはしたないですよー」
「出てた魔物は全部片付いたぞって、何だ?こりゃ」
「ルーク、何とかしろ」
ごちゃごちゃとしていて纏まりがつかないでは無いか
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
聖女の証
とーふ(代理カナタ)
ファンタジー
後の世界で聖女と呼ばれる少女アメリア。
この物語はアメリアが世界の果てを目指し闇を封印する旅を描いた物語。
異界冒険譚で語られる全ての物語の始まり。
聖女の伝説はここより始まった。
これは、始まりの聖女、アメリアが聖女と呼ばれるまでの物語。
異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証-
☆☆本作は異界冒険譚シリーズと銘打っておりますが、世界観を共有しているだけですので、単独でも楽しめる作品となっております。☆☆
その為、特に気にせずお読みいただけますと幸いです。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる