75 / 84
第一章
~74~
しおりを挟む水の節も半ば過ぎ、街はいつもの賑わいを見せている。
少しばかり違いがあるとするならば、街の中心部、王城の取り壊しの工事が始まった事くらいだろうか
相も変わらず私は教師と出版社代表の二足の草鞋を勤めており、ライネルは漁業会で何やらやっているのだろう
書類上は夫婦、となっているが現状では式も挙げておらず別居状態だ。
ふぅ、と音も立てず息を吐き出す。
漁業会の開発者達は勢いに乗ったかのように次から次と様々な物を試行錯誤しては何故か私に相談を持ちかけてくる。
忙しいのだから止めて欲しい、と言えど終ぞ聞き入れられた事は無い
「む、もうこんな時間か」
授業内容の纏め作業に夢中になっていた為か、視界が暗くなって夜が近い事に気付く
室内であるのだし明かりを付けていれば良いのだろうがそうすると夜中まで作業をし続けてしまうので時間の指標が解るよう極力日の光で仕事をする習慣を付けた。
それはそうと、特に何かする訳でも無く退屈を持て余している様子のルークを見る。
時間を教えるくらいの事はしても良いだろうに、と思うもこれがルークなりの何もしないと言う気遣いであるのだと解るが故に文句も言えない
賢すぎるのも考え物だ。多少愚かであった方が扱い易い
「ルーク、お前は何故私に固執する?」
■ルーク
痛みも無い、スッキリとした身体で山を下る。
『神』とやらを殺し、心臓を喰らう事でその力を得た
『力有る者の核は心臓に在り、それを喰わらば力を手に入れる』なんて、御伽話に出てくる悪役の台詞だったか
半信半疑であったが、方法も手段も選ばないと決めた俺には、
何がなんでもあいつに追い付けるだけの力が欲しかった俺には、試してみる価値はあったし、成果もあった。
ついでに、てめぇらの神が滅された事に気付いた奴らが俺を取り囲んでギャーギャー喚きたてやがったが、一つ残らずその心臓も貰いうけた。
同族であるとかんなもん関係ないし、共食いは禁忌だなんだうるせぇっつうの、弱いてめぇらは強い俺に力を寄越す為に死ね。
雑魚共の力は対した事は無かった。
神とやらの心臓を喰った時の、何かがズルリと身体の内側を這いづられるような妙な感覚はこいつらの心臓では感じられない
神とやらが規格外だったのか、こいつらが弱っちいのか、
老人もガキも一人残らず殺して喰った。
そこらに散らばる死体を見て、可哀想にと思いつつ胸を裂き穴を空け邪魔な骨を砕いてブチブチと血管をちぎって心臓を取り出しては齧り付く
初めのうちは慣れなくて上手く取り出せ無かったが十人、二十人と数をこなして慣れてくる。
要らない死体を一箇所に投げ捨て胸に穴を空けた死体の山が出来上がる。
罪悪感は欠片も湧かなかった。
死体の山を放置して山を下り、あいつの居場所を探す。
探知魔法なんて使った事もねぇし使い方も知らないが、今の俺には出来る様な気がしてヤケに冴えた頭であいつの姿を強く思う
ぼんやりと頭の中に浮かんだあいつの姿とその背景を頼りに、俺の身体があっちだと指し示す方向へと走る。
ああ、もう走るのさえ面倒くさい
速く速くと急く度に身体がグンと引っ張られる感覚、木々が生い茂る風景は変わり映えしなくとも今俺の居る場所がさっきまで居た場所で無い事は何となくわかった。
移動魔物。そんなもんまで使えるようになったのか、と驚くもすぐに思考は切り替わる。
ビュンビュンと景色が飛んでいく、一気にあいつの居る場所まで飛べれば速いのに、と思うも今の俺にはそこまで出来ないのだろう
一日も掛からずあいつの後ろ姿に追い付く
こちらを振り向き、何も言わず、顔色一つ変えずまた前を向き、歩き続ける
ズキリ
?
何で、
こいつのアクセサリーのおかげで身体には怪我一つ無い
寧ろ戦う前より調子は良いくらいだ。
なのに何故俺は、一体何に傷付いた?
こいつの態度に?傷心ってやつか?
なにを今更
こいつはこういう奴じゃないか
元からそうだったじゃないか
何を期待しているんだ、わかった上で付いていくと決めたのは俺だ。
何故?どうして?なんてもう自問自答するのさえ止めた。
ここまで来たらもう引き返せない
ただ俺はこいつの後を付いていければそれで良い
それだけで良いんだ。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください
むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。
「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」
それって私のことだよね?!
そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。
でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。
長編です。
よろしくお願いします。
カクヨムにも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる