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第一章
~70~
しおりを挟む◆ローズ
浮いている。
なんと言うか、そんな言葉しか出てこない
「あ、ローズさん。久しぶりですね」
「・・・あんた、何してんの?」
「見回りです。魔物が街中に現れていないか」
「・・・・・なんで?」
「なんでって、警戒するに越した事は無いでしょう?」
・・・・どうしよう、突っ込み所しかない筈なのにこっちが頭おかしくなってしまったような気になってきた
まず、見回りと言うならそんなゾロゾロと集まってどうする
二、三人ずつで分担した方が良いんじゃないか?とか
魔物が現れないか警戒しているのならこんな街中の、しかも大通りでするもんじゃないだろう、とか
後ろの男共が持ってる荷物は何だ、貢がれてるの?それを買って貰っちゃった訳?嘘でしょ?とか
私の目線が荷物にいってるのを見てユキノはテンションが上がったようにご機嫌に話してくる
「ああ、これ、服を買って貰ったんです。私は良いって断ったんだけどどうしてもって言うから
皆さん優しいですよね」
「・・・・・・・・・(絶句)」
ええ・・・・・何なのこの子
私がおかしいの?いやいや、なんでそんな平気そうに話してる訳?
異性に服を送る事の意味分かってんの?
いくらそう言う意図が無い完全な善意だとしてもドン引きだ。
「あれ、リオンさんは一緒じゃないんですか?」
「うん、まぁ、ね」
「え、もしかしてローズさん・・・リオンさんと・・」
「いやいや、一緒に居ないからってなんですぐさまそーいう発想に至る訳?」
「あは、冗談ですよ」
かっっっっわいくねぇぇええ!
何?
その口元に手を翳して首を軽く傾けるっていう一体何時の少女漫画だよって仕草は!!
自分が可愛いって思ってんの?
思ってんだろうなぁ・・・
思えば最初からそう言う子だったような気がする。
ユキノがこの世界にやって来て、もう二年近く経つ
初めの頃はやっぱり異世界に来てしまったと言う事もありたどたどしく、どこか人見知りのようにも見えた
私と同じ世界から来たかもしれない存在だし、この世界の先輩として力になってあげようと、そう思っていたのに
『あんた、レオ様攻略して無いでしょうね』
ファッッ!!??
となったのは当然だろう
なんというか、悪い子では無いのだ。
でも、私とは絶対に気が合わないタイプだ。
あとちょっと・・・うん、常識外れって言うか、礼儀がなってないって言うか
数値化するなら私がコミュ力10くらいに対して、ユキノはコミュ力100はあるだろう
誰とでも、それこそ年齢とか関係なく人と仲良くなれるタイプの人間だ。
明るくてハキハキとしていて物事に頓着しない、気持ちの良い人間
それでいて人を想いやる気持ちを持っていて親切だし責任感もある。
飛ばされた異世界がここじゃなければ、もしくはこの時代じゃなければ『みんなの人気者』になれただろうに
「まぁ、うん、見回り頑張ってね」
「はい!ありがとうございます!」
見せびらかしてるような、自慢しているような空気をダダ漏れにしているようでちょっとムカつくが、気の所為だと思う事にする。
ユキノとユキノを囲む攻略キャラだろうイケメン達がキャッキャウフフな空気を醸し出している
「・・・どーみても逆ハーにしか見えないわ・・」
意識してるのかしてないのか、
本命はレオクリス様なんだろうけど、傍から見たらイケメン侍らせてそれを街中で見せびらかすふしだらな女にしか見れない
そういうところだぞ
歩きながら頭の中では雪の節に使った実施費用と予算費との比較だったり、昨日提出された材料費纏めの資料の中身を思い浮かべる。
前世で事務仕事をしていた経験もあり、私自身専業主婦って柄でも無いので夫婦して共働き制だ。
妊娠したら妊娠休暇欲しいなぁ、でもまださすがにそこまで福利厚生手厚くないからなぁ
前世は随分と温くて優しい社会だったのだと転生してしみじみ思う
あれ、そういやユキノって今何処で暮らして何やってるんだ?
多分、おそらくユキノと私はそこまで歳は変わらない筈だ。
お互い乙女ゲームの主人公なのだから歳が離れているとは思えない、と言うより私的には既に物語は終わっている状態だ。
第一の主人公ローズ・ブロッサムは十歳に学院に入学し、十八歳の頃に卒業する。
実際私も十八を過ぎた辺りで卒業試験を何度も何度も受け直して十九歳になる手前でようやく卒業を果たした。
っつーか卒業試験難し過ぎだろ!!誰があんな長ったらしくて面倒臭い試験にした!?ああ″ん″??ってブチ切れながらの試験期間だったのは良い思い出だ。
そしてこの二年間、学院でユキノと会った記憶が無い
『奇跡の雫』は学園が舞台の筈なのに、いや、第二の主人公はまた別に舞台があるのか?
結局、ゲームをちゃんとプレイしていなかった私にはわからない事だ。
この世界では何歳から大人、といった決まりは無い
でも大体は働いて、自立出来るようになれば自然と周りが大人として扱うようになるし、私も自分はもう大人だと思っている。
でも、ユキノは?
国を守る為とか言ってフラフラして学院にも通ってない、ちゃんと将来の事を考えてるのだろうか?
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