転生した精霊モドキは無自覚に愛される

suiko

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第一章

~69~

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雪の節が過ぎ
水の節となった。

国内で大きな騒ぎは特に無く
災害であるとか、魔物が現れたと言った報告も今のところは聞き及んでない


「だからよ、俺は好きでこの仕事してんだよ。
いい加減やめてくんねーかな?」

「そんな、無理しなくても良いんですよ
あの女に無理矢理従わされているんですよね」

「いやちげーし」


開いたままの窓から二人の会話が聞こえてくる

人狼で、灰銀の髪に瞳、見目は良い方だろう
ルークが攻略対象の内の一人であったとしてもまぁ不思議では無い
しかしまぁ、彼女はレオクリス・サズワイトを攻略していた筈

「お願いします!どうしても協力して欲しいんです
魔物が現れた時、一人でも多くの人に力になって貰いたいんです。
貴方ならきっと、いえ、どうしても、貴方の力が必要なんです!」

「悪ぃけど、魔物が暴れようが俺は嬢ちゃんに協力する気はねぇよ」

「どうしてですか?
どうすれば、協力してくれますか?
いくらでも、私に出来る事なら何だってしますから、本当にお願いします!
この国を一緒に救いましょう!私達ならきっと出来ます!」

「あー、うん、
国がどーなろうが俺には知った事じゃねぇな
いざって時はあいつ抱えて逃げるわ」

「どうして・・・
どう考えたっておかしいじゃない、あんな、貴方の事ぞんざいに扱ってばかりの人に、どうしてそんな忠義を持てるの?」

「忠義っつーのかねぇ?
よくわからんが、俺はあいつの従者だからな」

「っなら!ミーシャの許可があれば良いのね!?
ちょっとあんた!」

開いていた硝子扉からカーテンを払い除け、彼女
ユキノ嬢が遠慮無しに室内に入り机にバンッ、と手をついてこちらを見ろとばかりに主張する
作成中のユニバーサル基盤の作成設計図を脇に寄せ背筋を伸ばし相対する

「フェリル・・・んっん、ルークさんを雇っているのはあんたなのよね。
暫くの間、彼を借りるけど良いわよね?」

「借りる、とは物のような言い方をする。
私としては別にルークの自由意思を尊重しているのでね。好きにすれば良い」

「っほら!ルークさん!
ミーシャもこう言ってる事だし良いですよね!」

「おいおい、人の話ちゃんと聞いてんのか?
俺は断固としてぜってーに嫌だぜ」

「なんでですか!?
ちょっとミーシャ!説得しなさいよ!」

「ユキノ嬢、ルークを雇いたいと言うならば私から条件がある
それさえ守って貰えれば好きにしてくれて構わないよ」

「もう、一体何!?」

「まずはいつからいつまでの間雇い続けるのか具体的な日付と、仕事内容をルークにしっかり説明を行う事、
後はそれに見合った給金をルークに支払う事。
これらを約束して欲しいのだがね?」

「は?なんで?
いや、日付なんてわかんないわよ。私の予知はそんな正確じゃないもの
魔物の大量発生が落ち着くまで、じゃダメなの?」

「つまりは無期限雇用、と仕事内容と給金は?」

「魔物が現れた時に撃退して貰えればそれで良いの
給金って、払う必要ある?国の危機なのよ?
怪我人だって沢山出るかもしれないし、下手をすれば死人だって出るかもしれない
被害を最小限に抑えられれば多くの人に讃えられるのよ?」

「質問に答えたまえ、ルークを雇うと言うのなら雇い主としての責任が君にはある
ルークをどうしても雇いたいのなら尚更説明を事細かにするべきでは無いのかね?」

「人の命はお金じゃ買えないのよ!
金金って、この国の人達より金が大事なの!?」



「・・・一体何の話をしているのかね。
まぁ、良い。後はルークに直接交渉したまえ、私は君とルークとの取引には干渉しない」

「あんたがルークさんを説得すればそれで済むのよ!
ほら!何とか言いなさいよ!」

「ルーク、仕事の邪魔だ。ソレを遠くに片してこい」

「おう」

「ちょっ!ええ!?」

荷物を抱えるように彼女を肩に担ぎひょい、と部屋から出ていった。
私は特に間違った事を言っていない筈なのだが、どうにも彼女には不評を買ってしまうようだ。
彼女もまた、間違った事を言っている訳でも無い
国を守る為、彼女なりに努力しているのは知っている。
魔物との戦闘を考え戦闘の得意な者、魔法の得意な者、罠師や弓使い等幅広く多くの者に頭を下げ協力を頼んでいる。
念の為にと国を囲むように結界を張っておいたが、魔物が何処から現れるのか、どういった魔物が現れるのか、私は知らない
だからこそ彼女達には頑張って貰わ無ければならない
いざと言う時は彼女達に助力しても良いと考えているのだが

ルークには声を掛けるのに私には掛けないか・・・

私の協力は要らないのか、そもそも私に頼む気が無いのか
どちらにしろ彼女が私に協力要請をしないのなら必要無いと言う事だろう、頼もしい事だ。




彼女は無賃金労働を強いているのか?という疑問は飲み込む事にした。

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