転生した精霊モドキは無自覚に愛される

suiko

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第一章

~68~

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「この辺りかな?」

「そうですね。これ以上は森になりますし、後は看板を立てておけばわかるでしょう」

「看板だけで大丈夫かね?」

「村は森で取れる魔石や薬草類を売って生活してますし、子供は滅多に森に入りません
不安でしたら等間隔に看板を幾つか立てておきますか?」

「いや、その必要は無いだろう
心配し過ぎのようだ」

「その、ミーシャ様?
あの似非聖女の言った魔物がどうのって言うのを信じてらっしゃるので?」

「ああ、彼女の予言は本物だよ
だからこうして結界を張って回っている」

「ええっ!?ほ、本当に・・・?」


このような国の外れの者にまで疑われているとは、彼女の不評は余程の物のようだ。

王都からずっと遠い、田舎と言える場所
森や山に近い為、自然溢れる集落は随分と閑散としている
村を歩いていてご年輩の方が多い印象を受けた。

「お疲れ様ですミーシャ様、お休みになられますか?」

「必要無い、急いでいるのでね」

村と森の境まで案内をさせた青年の誘いを断り馬車へと向かう
自動車が普及してきつつはあるものの、速さは馬車に劣る為専ら馬車を利用している。
馬に強化魔法を掛ければそれなりに無茶も出来ると言う理由もあるが


「出せ」

「おー」

馬車に乗るなり一言だけ言えば後は言葉は必要無い
元々ルークには国をぐるりと一周するようにと言ってある
この為に態々長期休暇をもぎ取ったのだ。

一年近く私と婚約関係のままだと勘違いをしていたレオクリス・サズワイトの騒動はすぐに沈静化した。
話す気力すら失われたように俯きユキノ嬢と退却したが、
ユキノ嬢から小声で『覚えておきなさいよ』と言われた事に小首を傾けたくなったものだ。

兎にも角にも、パーティー自体は無事に終了した。
夜更けまでに帰宅した私には預かり知らぬ事だが、中には夜明け近くまで騒いでいた者も居たとか

それから早速と私は学院長に頼み長期休暇を頂いた。
ユキノ嬢の言っていた魔物の大量発生とやらを危惧して、国を囲むように丁寧に結界を張って回っている。

いつだったかの砂漠からの黄砂騒ぎでは簡易的な物を一時張っただけであるのに対し、今回は長期的に、かつ抜けの無いように慎重に行っている

魔物、と言う物は不思議な生態をしている
旅の途中に見掛けた事は幾度かあるが、その多くは身体が大きく鋭い牙を持った肉食獣に似た姿をしている事が多く、毛皮は揃って白い
虎や熊、豹や狼等、既存の動物の姿をしているにも関わらず人を見るや襲いかかってくるのだ。
動物とは根本的に違うのだろう、本来これら肉食獣は警戒心が強いものだ。人間相手に無闇矢鱈と襲いかかってくることはしない
その上種族が違うのに揃って白い毛皮をしているのも謎だ。
まるで目で見てわかりやすいようにと仕組まれているような不気味さを感じる。
魔物が生まれる仕組みとは?何故魔物は存在している?
そこまで考えて、この世界が『ゲームの世界』であるのだと思い出す

世界と言うものは大抵が理不尽の塊だ。
他の世界と比較する事も、常識を当て嵌める事も全てが無駄になる。
最早『そういう物』だと無理やり納得するしか無い
こういった思考を停止するような考え方に納得はいかないが、区切りを付けなければ先に進む事も儘ならなくなると言うものだ




暫くして馬車が止まる

先程の村よりも更に小規模の村
馬車でやって来た我々を不思議がっているのかジロジロと目線が集まる。

「失礼、この集落の纏め役は誰かね?案内を頼みたいのだがね」

「えっ・・・あ、村長?ですか?
えっと、確か今日はお孫さんと薬草を取りに森に行っている筈・・・」

「森、はアレかね
君は村長殿の顔を知っているのだね?時間があればで構わないが、一緒に来て貰えるだろうか?」

「え、ええ、構いませんが・・・」


集落から森に続く道
広大な土地を活かした畑
田舎の風景と言うものは何処も変わり映えがしないものだ。

似たような集落を次から次と移動し、魔物対策用の結界を張らせて貰う
時間のかかる地道な作業だ
面倒臭いと放り出したくもなったが、私自身の為にもやるしかない
結婚式が台無しになる事だけは避けなければならない








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