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第一章

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■ローズ




「あの、ね。
信じて欲しい訳じゃないの・・・
ううん、そうじゃなくて、なんて言えば良いんだろ」

「これから私、独り言、言うから
ただ、聞いていて、欲しいの」


「・・・・・私には、前世の記憶ってのが、あってね・・・」


重い罪を告白するような、そんな気持ちだ。

私は本当に狡いと思う

好感度を上げて上げまくっておきながら、今更こんな事を言うなんて
隠し事はいけないとわかっていて、嘘をつき続けたくないという心苦しさはあって
でも嫌われたくなくて、失望されたくなくて
私は卑怯者だ。







「うん、そっか」

「・・・・・・・・・・・」

「ローズはさ、その、攻略対象ってのをさ、俺以外にも、攻略しようって思ってたのかな?」

首を横に振る
攻略しようにも出来ない状態だったし、私の知ってるキャラで唯一まともに攻略出来る人なんてリオンだけだ。

「そっか、なら、良いや」

「・・・・?」

「ねぇローズ、好きな人に好きになって貰おうとするのって、そんなに悪い事なのかな?
俺はそう思わないよ」

「・・・・ちが、わたし、は」

「俺だってさ、好きな人の前じゃカッコつけたいし、知ったかぶりだってするよ
でもそれって、当然の事じゃないかな」
「げーむ、ってのは、良くわからないけれど、好きな人に振り向いて貰いたいって気持ち自体はさ、悪い事なんかじゃないよ。
俺の気持ちを操作したとか、好きになるように仕向けたとか、
俺の気持ちを全部否定する事ばっかり言ってる。
それが、俺は一番許せない」

・・・・泣いちゃダメだ。
私が悪いんだから、嫌われるのも、許されないのも当然なんだ
ゲームの通りに行動した。好感度が高くなるように振舞った。
ヒロインに憧れた。青春がしたかった。甘くて優しい夢を見たかった。
そんな幻想に溺れて、
結局隠し事をし続ける心苦しさからも逃げたくなって全部ぶちまけた。

嫌われたくなかった。
自分のした事を許して貰いたかった。
そうなるよう好感度を上げてからバラした。
自分の保身しか考えてない私は、どうしようもない私でしかなかった。


「好きだよ。ローズ
たとえこの気持ちが君の仕向けたものであったとしても、俺の気持ちは変わらない
俺をここまで本気にさせたんだ。その責任はとってくれるんだよね?」

「・・・・・」

今度は首を縦に振る
泣きそうになったのは一瞬で、
今はもう期待の篭った気持ちが隠しきれない
ああ、私って本当にどうしようもない


「君が好きだよ。愛してる。
君の嘘も隠し事も全部」

「ゔん・・・私も、すきぃ・・ズッ」


許された。
嫌われなかった。
安心した。
良かった。
また一緒にいられる。

重いものが何もかも取っ払われて、軽くなった感じ
涙も鼻水も出てきて、今の私はきっと酷くブサイクだ。
でも良いや
隠し事はもうしない
嘘ついて隠し事して好きになって貰うなんて、私には出来っこなかったんだ。
私を好きだって言ってくれたリオンに、誠意をあらわしたい
好きにさせちゃった責任ならいくらでも取るから

こんな私を好きで居続けて欲しい
これからもずっと

私はこんなにも我儘だったんだ
恋愛ってこんなにも難しいんだ

人を好きでい続ける苦痛も、好きになって貰いたいって想いも、嫌われたくないって怖さも
全部全部はじめてだ。
世の中の恋する人達って凄い

人生二度目にして初めての恋は、私には刺激が強すぎた。
泣いてる私を仕方ないなって抱きしめてくれるリオンの腕の暖かさに、暫く泣き止みそうにない



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