40 / 84
第一章
~39~
しおりを挟む◆メッシュール
俺の初恋は多分、おそらく幼少期の頃
近所に住んでいたずっと年上のお姉さんだったと思う。
今となってはその人の顔も名前も思い出せないけれど
ただ、周りにいた同世代の女の子と違う、大人な女性というものに子供ながらに惹かれてしまったんだと思う
それだけの事しか思い出せないんだ。
いつだったか忘れたけれど、遊び半分で付き合ってみた女の子に泣きながら最低だと罵られた事だとか、
声を掛けていた女の子達が三人バッタリ鉢合わせて喧喧囂囂、とんでもない修羅場擬きとなったりだとか、
知らない男が彼女に手を出されただとか抜かして刃物を向けてきたりだとか、
忘れてしまいたい事ばかりがスグに頭に思い浮かぶ癖に、
大切な、綺麗で、嬉しかった事、心が洗われるような事に限って忘れてしまったかのように思い出せなくなってしまう
きっと、この恋もそうなってしまうのだろう
それが悲しい事なのか、喜ばしい事なのか、今の俺には判断が付きそうにない
ミーシャせんせいの居ない学院は、先週までの学院と何一つ変わらない
変わった教師が一人見当たらなくなっただけの事
なのに、俺は
俺はこんなにも、かなしい
恋だった
好きだった
こんなになるほどに好きだったんだ
これ程までに求めた恋なんて、初恋以来かもしれない
俺にとって女の子なんて、可愛くて、フワフワしていて、一緒にいて楽しめるならそれで良い
俺が楽しめて、女の子もそれなりに俺で楽しい思いが出来る。それが俺にとっての恋愛だった筈なのに
こんなに、
こんなにただ一人を思い焦がれるものが
これ程苦しくて、切なくて、辛いものが、
ああ、そうだ、これが『恋』というものだったんだ。
そう、俺に思い出させてくれた
ミーシャせんせい、
いや、ミーシャ
俺、アンタのこと本気で好きになってたみたいだよ。
ありがとう。
俺に『恋』を思い出させてくれて
そしてさようなら。
俺はアンタを忘れる事にするよ
忘れられる自信はあんまりないけど、
きっと大丈夫さ。
だってこんなにもキラキラしていて、眩しいくらいに清々しくて綺麗なアンタとの恋だったんだ。
きっと忘れられるさ
「ねぇねぇ、今日終わった後暇してる子フレム食べ行かなーい?」
「あれ、メッシュくんだ」
「なんか久しぶりな気がするねー」
やっぱり女の子はとても良い
可愛くて、見ているだけで浮き足立ってくる
「そだねー、最近になってようやく暇になってきたんだよね。
でさ、行く?」
「んー、どうする?」
「折角だし、行ってみよっかな」
「よっしじゃあ決まり!終わったらロビー集合ね!友達も良かったら呼んでイーヨ」
俺の元の日常へと戻っていく
多少ぎこちない、空元気な調子の良さに嫌気がさすが、暫くすれば収まる所に収まるだろう
たった一人に捧げる愛とは、劇場の演目ではそれなりに人気だが俺には向いてないにも程がある。
軽くて広くて浅い、手軽でそれなりに楽しめるくらいがちょうど良い
この日、メッシュール・ガルパンは恋を自覚すると同時に失恋をした。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
【完結】野垂れ死ねと言われ家を追い出されましたが幸せです
kana
恋愛
伯爵令嬢のフローラは10歳の時に母を亡くした。
悲しむ間もなく父親が連れてきたのは後妻と義姉のエリザベスだった。
その日から虐げられ続けていたフローラは12歳で父親から野垂れ死ねと言われ邸から追い出されてしまう。
さらに死亡届まで出されて⋯⋯
邸を追い出されたフローラには会ったこともない母方の叔父だけだった。
快く受け入れてくれた叔父。
その叔父が連れてきた人が⋯⋯
※毎度のことながら設定はゆるゆるのご都合主義です。
※誤字脱字が多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※他サイトにも投稿しています。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
皇妃は寵愛を求めるのを止めて離宮に引き篭ることにしました。
鍋
恋愛
ネルネ皇国の后妃ケイトは、陰謀渦巻く後宮で毒を盛られ生死の境を彷徨った。
そこで思い出した前世の記憶。
進んだ文明の中で自ら働き、 一人暮らししていた前世の自分。
そこには確かに自由があった。
後宮には何人もの側室が暮らし、日々皇帝の寵愛を得ようと水面下で醜い争いを繰り広げていた。
皇帝の寵愛を一身に受けるために。
ケイトはそんな日々にも心を痛めることなく、ただ皇帝陛下を信じて生きてきた。
しかし、前世の記憶を思い出したケイトには耐えられない。命を狙われる生活も、夫が他の女性と閨を共にするのを笑顔で容認する事も。
危険のあるこんな場所で子供を産むのも不安。
療養のため離宮に引き篭るが、皇帝陛下は戻ってきて欲しいようで……?
設定はゆるゆるなので、見逃してください。
※ヒロインやヒーローのキャラがイライラする方はバックでお願いします。
※溺愛目指します
※R18は保険です
※本編18話で完結
もうすぐ、お別れの時間です
夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。
親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる