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第一章
~29~
しおりを挟む「何やってんのよ!いい加減にしてよね!!」
「・・・・・・」
手が止まる
宙に浮いた万年筆の先からインクが落ちるなんて事はなかったが、あまりに唐突な事にそうなっていてもおかしくないだろう間動きが止まっていた
理化学科専用職員室となっている部屋にはローテーブルと低めのソファがある。
そのせいで少し手狭に感じるがローテーブルの一部は荷物置き場のようになってしまっている為に片付けるに片付けられない状態だ。
夕暮れには早く、しかし午後というには遅いだろう時間
彼女はやってきた
「あんた!転生者でしょ!
好き勝手やってんじゃないわよ!大人しくゲーム通りにしてきた私がバカみたいじゃない!!」
なんとも・・・なんとも言い難い言い分でもって此方を責め立ててくる
そんなもの知らん。と追い返しかけて口を閉ざす
「私だって!!
私が!!主人公の筈でしょう!?いくら断罪されるのが嫌だっても!ここまでする!?
私の取り分少しくらい残してくれたって良いじゃない!!」
チラリ、と彼女の後ろの扉を見る
少し開いてしまっているのが気になる
「私でだってハーレムはダメだろうって自粛しようと思ってたのに!!
なんなのあんた!節操なし!少しは自重しなさいよ!!」
席を立ち簡易キッチン(魔道具によるもの)でお湯を沸かす
「ちょっと!聞いてるの?!」
「聞いているとも、立ったまま話すには長くなるだろう
そこに座りたまえ、茶の一つくらいならだそう」
「・・・・・へ?」
「ああ、扉はしっかり閉めておいて欲しい
お互い、秘密を共有する者同士、聞かれたくない事もあるだろう?」
「・・・・・・・」
少女は少しばかり冷静になった様子で、此方を警戒するように眼を向け、扉を閉めた。
彼女の名はローズ・ブロッサム
ブロッサム男爵家のご令嬢
癖のない腰まで届きそうなストレートの髪は薄らとピンクを溶かしたような金髪。ストロベリーブロンドと言うよりはピーチブロンドという表現があうだろう
瞳の色は空のような透明感のある水色
肌の色も日焼けを知らない生まれたばかりの赤子のような白
成程、彼女を主人公とした物語があると言われれば納得いくだけの容姿だろう
沸いた湯で紅茶を入れる。安物の茶葉だが入れ方に気を使えばそれなりになる事は知っている
ソファに座り、ごちゃごちゃとしたローテーブルを何となしに見ていた彼女の前にソーサーとカップ、ティースプーンのセット物を置き、シュガーポットに目線を送ると理解したのだろう、戸惑いながらも迷うことなく砂糖を山盛り二杯入れカチャカチャと軽く音を立て溶かすのに夢中になっていた
一口、唇を潤しただろう彼女に語りかける
「君も転生者なのだな」
「・・・・・」
返事はない
しかし彼女の目は悠然と其方もそうなのだろうと睨みつけているかのようだ
「私も転生者ではあるが、君と知識を共有している訳ではない
″ここ″が何処で、どういったコンセプトで成り立っているのか等、知る由もない
君は言ったな、『ゲーム通り』、と」
「・・・・・・・」
困惑、疑問
そんな目を彼女はしている
「君の知っている『この世界』について、教えて貰えないだろうか?お嬢さん」
「・・・・・・・
知ら、ないの・・・・?」
目を見開く瞬間、とは正にこのようなものなのだろう
恨ん気な、睨みつけているのだろう伏せられた瞼が呆然と、驚きと呆気にとられたかのように開き空色がはっきりと姿を現す。
砂糖を入れていない紅茶で少しばかり口を湿らし、眼を見つめる。
先を続けなさい、と
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