29 / 84
第一章
~28~
しおりを挟む♦もう一人の転生者
悪役令嬢
それは乙女ゲームにおいて、イベントを盛り上げる為の賑やかし要員であり
そして最終的には主人公が愛する人と幸せなキスをしてハッピーエンドを向かえる為の噛ませ役である
と、私は思っている
勿論私が前世でプレイした事のあるゲーム『奇跡の雫』においてもそのキャラクターはいた。
ファンタジー恋愛物ではお約束もお約束、メイン攻略対象である王子様の婚約者で、プライドが高く、図々しくて我儘奔放
主人公の攻略活動の為にわざわざ陰口から始まり、物を隠す等の嫌がらせ、もとい虐めをしてくれる
乙女ゲームの立派な影の立役者である
そんな彼女を実際に見てみたい!っと思ってはいた。
いたのはいいものの
髪が黒い、ってか教師?
理化学科?
え、なに?
どういうことなの??
私の知るミーシャ・フロイライトは赤髪に紫色の瞳の筈だ。
同学年で私と顔を合わせる度に「平民上がりの癖に・・・」と口癖のように言ってくる
そんな彼女の姿を私は知っている
だというのに
ナニ、ドウイウコトナノデショウカ??
『秀才の聖女』??
十歳になる前に卒業???
新しい学科の教師????
なにしてんだこの転生者(仮)は (真顔)
キャラクターデザインが違う事からもう瞬間!
こいつ転生者だよね。ってなったよね
しかも本来なら同級生ポジションなのに教師って、一体どこの誰が転生してきたのか知らないけど、ストーリーブレイクにも程がある。
実際攻略キャラ達の様子が尽くおかしい
メインの王子様キャラ、レオ様とは直接会って話をした訳ではないからわからないが
その弟くん、ライネルくんとは遭遇を果たした。
はたしてアレは遭遇イベントと言えるのだろうか?という疑問はあるがともかく
ライネルくんは兄にコンプレックスを抱いている、ちょっと陰のある策士キャラだ。
例えるなら日朝の某特撮に出てくるボスの右腕的な、参謀キャラと言える。
しかし実際に会って少し話しをしてみたら思ってた以上に熱血的なキャラだった
なんでも、国家を巻き込む一大プロジェクトに携わっているらしい
そして乙女ゲームは悪役令嬢とヒロインをそこまで対立させたいのか、と突っ込みたくなる人選
悪役令嬢の兄、ロジィ様
真面目で堅物、懐に入れた人に甘く、妹の我儘に呆れながらも見捨てられずにいる
クール系だと思った?実は熱血漢でしたー!なキャラの筈だった。
なのに初めて会った途端
「お美しいお嬢さん、貴女のお名前を音にする許可をどうか俺にくれないか?」
なにこの色気ェ
こっちが恥ずかしくなる程の気障なセリフも流石はイケメン補正、むっちゃ様になる。むしろ似合いすぎ
ロジィ様はお色気担当じゃなかったよね??
寧ろ女性が苦手なキャラだったよね??
そして私の最推しであった癒し系ワンコキャラだが
いない
出現しやすい場所である食堂を探したが全くいない
入学して二週間(この世界では一週間は十日である)してようやく出会ったエドくんは何故か悪役令嬢と中庭で組手らしきものをしていた。
何故に????
エドくんは『奇跡の雫』で最も人気のあるキャラだ。
実際人気投票でも王子様を抑え堂々の一位
その大多数が「癒される」「可愛い」「母性が擽られる」といった意見が多かった
『奇跡の雫』は課金システムのあるスマホゲーだ。
多感で青春に忙しい若い女子高生などよりもバリバリに働いてる落ち着いた女性の方がプレイしている事の方が多いのだろう
癒し系の彼に人気が出るのはある意味当たり前だったのかもしれない
ちなみに何故か古参組で唯一の色気担当な筈のメッシュくんが組手に参加してて悪役令嬢に吹き飛ばされてしょぼくれていたが
もう、なにも言うまい
攻略キャラが尽く悪役令嬢に集まっている。
まるで彼女が物語の主人公のように
それについて思う事はあるにはある
私が主人公の筈なのに、って
そんな事を思ってしまった私自身に少し驚いた
私、期待しまくってたんじゃん
この歳にして(肉体的にはまだ十歳だけど)夢見がちな、随分と図々しい勝手な期待
でも、でも、でも、
仕方ないじゃないか
期待してしまったって良いじゃないか
夢をみたって、良いじゃないか
だって主人公なんだよ?
そんなものになれる機会なんてこんな転生みたいな事でも起こらない限り絶対に有り得ない
きっと、多分、おそらく、誰もがみんな自分勝手な我儘を隠し持っている。
自分を認めて貰いたい
自分を愛して貰いたい
自分の願いを聞いて欲しい
自分の想いを肯定して欲しい
そんな我儘をきっとみんな持っている筈なんだ
じゃなきゃ、主人公になったと勝手に浮かれて、そうじゃなかったと気付いて、こんな、惨めな思いを抱いてしまった私が、みっともない
みっとも無さすぎるじゃないか
私、″主人公″になれた時本当は凄く嬉しかったんだろう?卑しい奴だ
そうだよ、本当は凄く浮かれたよ。それがなんだ、悪いか?私は悪くないだろう
私は本当はあの時、鉄骨かなにかに潰されて、死んでいる筈なんだ。
死んだら何もかもおしまいだ。
でも私は今生きている
この記憶達が本当に私のものなのか、私とは一体誰なのか、私は私だ。私は私だ。
死んだ筈の命を勝手に弄んで、勝手にゲームの世界に入れ込んで、勝手にヒロインの体に入れ込んだのは『世界』じゃないか
ヒロインになったこと、主人公になれたことに
浮かれて、喜んで、期待して、夢を見て
それの何が悪いって言うのさ!!!
私は悪くない
私は悪くない
私は悪くない
私は悪くない
悪いのは『世界』だ。
悪いのは私をこんな風にした『世界』だ。
悪いのは、悪いのは、
私の立場を奪ったアイツだ。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる