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第一章
~28~
しおりを挟む♦もう一人の転生者
悪役令嬢
それは乙女ゲームにおいて、イベントを盛り上げる為の賑やかし要員であり
そして最終的には主人公が愛する人と幸せなキスをしてハッピーエンドを向かえる為の噛ませ役である
と、私は思っている
勿論私が前世でプレイした事のあるゲーム『奇跡の雫』においてもそのキャラクターはいた。
ファンタジー恋愛物ではお約束もお約束、メイン攻略対象である王子様の婚約者で、プライドが高く、図々しくて我儘奔放
主人公の攻略活動の為にわざわざ陰口から始まり、物を隠す等の嫌がらせ、もとい虐めをしてくれる
乙女ゲームの立派な影の立役者である
そんな彼女を実際に見てみたい!っと思ってはいた。
いたのはいいものの
髪が黒い、ってか教師?
理化学科?
え、なに?
どういうことなの??
私の知るミーシャ・フロイライトは赤髪に紫色の瞳の筈だ。
同学年で私と顔を合わせる度に「平民上がりの癖に・・・」と口癖のように言ってくる
そんな彼女の姿を私は知っている
だというのに
ナニ、ドウイウコトナノデショウカ??
『秀才の聖女』??
十歳になる前に卒業???
新しい学科の教師????
なにしてんだこの転生者(仮)は (真顔)
キャラクターデザインが違う事からもう瞬間!
こいつ転生者だよね。ってなったよね
しかも本来なら同級生ポジションなのに教師って、一体どこの誰が転生してきたのか知らないけど、ストーリーブレイクにも程がある。
実際攻略キャラ達の様子が尽くおかしい
メインの王子様キャラ、レオ様とは直接会って話をした訳ではないからわからないが
その弟くん、ライネルくんとは遭遇を果たした。
はたしてアレは遭遇イベントと言えるのだろうか?という疑問はあるがともかく
ライネルくんは兄にコンプレックスを抱いている、ちょっと陰のある策士キャラだ。
例えるなら日朝の某特撮に出てくるボスの右腕的な、参謀キャラと言える。
しかし実際に会って少し話しをしてみたら思ってた以上に熱血的なキャラだった
なんでも、国家を巻き込む一大プロジェクトに携わっているらしい
そして乙女ゲームは悪役令嬢とヒロインをそこまで対立させたいのか、と突っ込みたくなる人選
悪役令嬢の兄、ロジィ様
真面目で堅物、懐に入れた人に甘く、妹の我儘に呆れながらも見捨てられずにいる
クール系だと思った?実は熱血漢でしたー!なキャラの筈だった。
なのに初めて会った途端
「お美しいお嬢さん、貴女のお名前を音にする許可をどうか俺にくれないか?」
なにこの色気ェ
こっちが恥ずかしくなる程の気障なセリフも流石はイケメン補正、むっちゃ様になる。むしろ似合いすぎ
ロジィ様はお色気担当じゃなかったよね??
寧ろ女性が苦手なキャラだったよね??
そして私の最推しであった癒し系ワンコキャラだが
いない
出現しやすい場所である食堂を探したが全くいない
入学して二週間(この世界では一週間は十日である)してようやく出会ったエドくんは何故か悪役令嬢と中庭で組手らしきものをしていた。
何故に????
エドくんは『奇跡の雫』で最も人気のあるキャラだ。
実際人気投票でも王子様を抑え堂々の一位
その大多数が「癒される」「可愛い」「母性が擽られる」といった意見が多かった
『奇跡の雫』は課金システムのあるスマホゲーだ。
多感で青春に忙しい若い女子高生などよりもバリバリに働いてる落ち着いた女性の方がプレイしている事の方が多いのだろう
癒し系の彼に人気が出るのはある意味当たり前だったのかもしれない
ちなみに何故か古参組で唯一の色気担当な筈のメッシュくんが組手に参加してて悪役令嬢に吹き飛ばされてしょぼくれていたが
もう、なにも言うまい
攻略キャラが尽く悪役令嬢に集まっている。
まるで彼女が物語の主人公のように
それについて思う事はあるにはある
私が主人公の筈なのに、って
そんな事を思ってしまった私自身に少し驚いた
私、期待しまくってたんじゃん
この歳にして(肉体的にはまだ十歳だけど)夢見がちな、随分と図々しい勝手な期待
でも、でも、でも、
仕方ないじゃないか
期待してしまったって良いじゃないか
夢をみたって、良いじゃないか
だって主人公なんだよ?
そんなものになれる機会なんてこんな転生みたいな事でも起こらない限り絶対に有り得ない
きっと、多分、おそらく、誰もがみんな自分勝手な我儘を隠し持っている。
自分を認めて貰いたい
自分を愛して貰いたい
自分の願いを聞いて欲しい
自分の想いを肯定して欲しい
そんな我儘をきっとみんな持っている筈なんだ
じゃなきゃ、主人公になったと勝手に浮かれて、そうじゃなかったと気付いて、こんな、惨めな思いを抱いてしまった私が、みっともない
みっとも無さすぎるじゃないか
私、″主人公″になれた時本当は凄く嬉しかったんだろう?卑しい奴だ
そうだよ、本当は凄く浮かれたよ。それがなんだ、悪いか?私は悪くないだろう
私は本当はあの時、鉄骨かなにかに潰されて、死んでいる筈なんだ。
死んだら何もかもおしまいだ。
でも私は今生きている
この記憶達が本当に私のものなのか、私とは一体誰なのか、私は私だ。私は私だ。
死んだ筈の命を勝手に弄んで、勝手にゲームの世界に入れ込んで、勝手にヒロインの体に入れ込んだのは『世界』じゃないか
ヒロインになったこと、主人公になれたことに
浮かれて、喜んで、期待して、夢を見て
それの何が悪いって言うのさ!!!
私は悪くない
私は悪くない
私は悪くない
私は悪くない
悪いのは『世界』だ。
悪いのは私をこんな風にした『世界』だ。
悪いのは、悪いのは、
私の立場を奪ったアイツだ。
応援ありがとうございます!
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