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第一章

~24~

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♦レオクリス


脈が無い

いや、別に誰かが亡くなった訳では決してない


ミーシャの反応の事だ。


節に一、二度のミーシャと過ごせる時間のお陰で大分あがり症は収まってきてくれた
そうして落ち着いて話をするようになってミーシャと会話らしい会話が出来ないのに悩むようになった

無難な話題として趣味の話をしようとしても彼女は趣味を持たないと言う
彼女の功績について話をすると僕では理解出来そうもない難しい専門用語のような言葉だらけな上、婚約者との貴重な時間まで仕事の話をさせるのかと遠回しに怒られてしまった。
僕が精一杯恥ずかしさと戦って言った「好きだ」の言葉も「そうか」の一言で返されてしまった。
ミーシャは僕をどう思っているのかと聞いて「嫌いではない」の言葉に嬉しくなったけれど、弟からの「ミーシャ嬢の″嫌いじゃない″は″どうでも良い″って事ですよ」の言葉にそうだよね!そんな気はしてた!!ってがっかりしたり

あれ、僕ミーシャ嬢の婚約者だよね??ってすっかり不安になってしまったのだ。
最初こそ浮き足立つような、気分が高揚するような、ミーシャの姿を眼に写すだけで嬉しかったはずの時間も
ここ最近では苦痛を感じる時間になってしまった

ミーシャの気持ちがわからない
ミーシャに僕を好きになって欲しい
そういった事を母様に相談したら朗らかに笑いながら若いって良いわねぇなんて言って本気になってはくれなかった
僕は切実に悩んでいるのに

「なら、ミーシャちゃんにその気になって貰わないとねぇ」

そうして母様は『女性が男性を意識するだろう行動』を指南してくれた

男の力強さと強引さを印象付られるとされた女性を、む、無理矢理壁に押し付ける。という行動も
「何を意図しての事か知らないが、いつまでこうしているつもりだ?」の言葉で撃沈

顔を近づけてく、くくく、口付けっを意識させる行動も
「殿下、そろそろ時間なのだが?」の言葉で撃沈

目は時に口よりも物を言うらしい、と言う事でじっとミーシャ嬢を見詰め続けたりもしたが何の反応もなかった

唯一手応えらしき反応があったのは手を握ったり、脚を触ったり等の身体に触れる行為くらいだった
手を握り返してくれた、手を振り払われる事なく許容してくれた
これは意識してくれていると考えても良いのだろうか??
ただ言えるのは、『ミーシャが僕に触られる事を嫌がらない』のだという事だけだ。
これは、好かれているとは言えないんじゃないだろうか
僕はミーシャの事が好きで、ミーシャの事を知りたいし、ミーシャにも僕の事を好きになって欲しい

ミーシャは僕を好きになるつもりが無いんじゃないだろうか?
それこそ、ミーシャにとっての僕は本当にどうでも良い存在なんじゃないだろうか?

そう思うには、ミーシャは僕の事を受け入れすぎてくれているように感じる

握った手を握り返してくれたり、頭を撫でてくれたり、僕が抱き締めたときも抱き締め返して背をゆっくりと優しく叩いてくれたり

好きじゃない癖に優しくしてくれるなんてズルい

僕はズルズルと引き摺るようにミーシャの優しさに甘えて何も言えずにいる
本当はわかっているんだ
僕が一言、『僕の事本心ではどう思っているの?』ってはっきりと、好きか嫌いか二択で答えて貰えば手っ取り早い事なんて僕が良くわかっている
でも聞ける訳がない

だってなんとなく、わかってしまうから
ミーシャの答えるだろう言葉を、その口から直接聞きたくないと逃げている。

だから僕はここまできても何も言わないで彼女を抱き締める事しか出来ないでいる
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