24 / 84
第一章
~23~
しおりを挟む「ああ!会いたかったよミーシャ!」
出会い頭に抱き締められた。
こいつ、精神が幼児退行してないか?
今年入学された殿下
まだ子供と言える年齢ではあるが、学院に入学した以上節度ある態度をとらなければならない
それが王族ともなれば尚更の筈
それがわからない殿下ではないだろうに
さて、これまでの文章を読んで違和感を覚えた者がいるのではないだろうか
そう感じた者はそれなりに頭のキレが良いようだ、私直々に褒めてやろう
私は今年で九歳となる。私の一つ年上で十歳である殿下が今年入学するのは当たり前だが
私の兄とも一つ違いになる筈の殿下が兄の入学の二年後に入学している事実を不思議に考え無かった者は文章理解能力を一からやり直したまえ
まぁ、学院の入学条件と私の兄上の誕生時期を知ってさえいればすぐ分かる事なので省略させて貰おう
ちなみに殿下の誕生時期は水の節の朝月である。
そう、よりによって水の節の朝月である。(二回目)
これを女王陛下から聞いた時思わず吹き出しそうになった私は悪くないと思うのだ。
まる一年待たされてようやくの入学にどこか精神が不安定にでもなってしまったのだろうか
その心当たりはある。
殿下と私は婚約者として最低でも節に一、二度は会って話しをしたりお茶をするようにしている
ここ一年近くだろうか、殿下の様子がおかしくなっていったのは
ある時は壁に押し付けられ手で逃げ道を塞がれたり(所謂壁ドンのようなもの)
ある時は顔の輪郭線を撫で顎下から顔を上向きにされたり(所謂顎クイのようなもの)
ある時は許可なく手を握ってきたり
ある時は脚に手を乗せてきたり(所謂ボディタッチのようなもの)
これらの行動が異性に対する性的目的の接触であるならば理解出来る
しかしそういった意図が殿下から全く感じられないのだ
どこか迷っているような、戸惑いや困惑、時に不安
そういった感情の籠った目をしているからどうにも困る
そこで私は考え、一つの仮説を立てた
そも殿下はまだ子供、性の知識は家庭教師から習ってもう知ってはいるが実感がまだ湧かないのではないだろうか。と
なら殿下が私に触れてくる理由は異性に対するそれではないのではないのか。と
そうして見えてきたのは一つの答えだ。
以前、淑女のマナーの一つであるお茶入れを殿下に披露した時
殿下は私が歩く度に目線で追ってきていた事がある
その時の殿下の目は時折後ろを振り向き親がそこにいる事を確かめる子供のそれだった
殿下は私に母性を求めている。
私はそう結論付けた。
成程、殿下ともなれば学院に入学するに当たって相当厳しい家庭教師が付けられる事だろう
王族が学院を卒業出来ない等という不名誉は絶対に避けなければならない
女王陛下はお優しい人柄ではあるが、誓約には厳しく、締める時にはきっちりと締める方でもある。
家庭教師が付けられるようになった頃から母子の時間を余り取れなかったのではないだろうか
だとすれば他に精神的抑圧を発散させられる機会は限られる。
私と会う時、私に良く触れるようになったのも、良く不安の滲んだ目をしているのも
普段母親に甘えられない分を私で補おうとしていたからではないのか
そう考えると辻褄があうのだ。
そこで私は殿下に対する対応を変える事にした
殿下が私にそうある事を望むのならば、私はそれに答えるのみ
殿下の望む母親代わりの私として甘やかしてやるだけだ。
「ああ、そうだな
レオクリス・サズワイト、人前ではないといっても誰が見てるかわからない、少し落ち着きたまえ」
王太子殿下に対して失礼な物言いだとは理解している、が
その王太子殿下が呼び捨てで構わないと、砕けた口調で構わないと言ったのでそうさせて貰っている
「そうだね・・ごめんよ」
まただ
不安の滲んだ目
ポン、ナデナデ
頭を撫でてやる
すると安心したような顔になる
全く、殿下はまだまだ子供だな
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる