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第一章
~14~
しおりを挟む♦メッシュール
「なぁ親父、あの子供、なんなんだ?」
「ふむ・・・・お前はどう思った?」
「・・・やたら偉そうな貴族のお嬢様だろ」
俺は貴族ってのが気に入らない
俺の家も爵位を持ってはいるが、それは俺のじいちゃんが金で買ったのだとか
それが理由か学院では俺は同学年から距離を取られているし、時には平民の成り上がりが貴族の振りをしていると馬鹿にされる事もある
悔しさを勉強にぶつけてはあいつらよりも速くに卒業してやると息巻いていたら、特例だとかなんだとかで十歳にならない子供が貴族学科に入学し、入学したその日の内に卒業したとかの話が学院中に持ち上がった。
『秀才の聖女』だかなんだか知らないが、気に入らない
噂では複数の学科の卒業試験も合格しただの、聖女としての権限が王宮にも及んでおりその権力で卒業をもぎ取ったのではないかとか、真相の知れない噂が流行っている。
学院は勉学に関しては厳格であり、実に平等だ。
学院長を初め殆どの教師が平民であったりするからだろう
学院が不正をするような場所でないからこそ、その子供の存在を見た事もないのに腹が立って仕方なかった。
そんな折、黒い髪の子供が俺の親父に案内されて行くのを見てしまった。
一人息子という事もあり、学業の傍ら実際に商売の場で親父の仕事の手伝いをする事が日常となっていたが、思わずこっそり跡をつけて聞き耳をたてていた。
「良くわっかんねぇよ。品種改良の方法を他の領土の奴らに教えるったってそんな事して何がしたいんだよ。商売バカにしてんじゃねーの?」
「ふむ、お前はそう感じたか」
「ああ?」
「商売の成功は確かに″独占″にあるが、まだまだだな。これから忙しくなりそうだ」
そういって楽しそうにしている親父を見て、俺は面白くなかった。
やたら態度のデカいちっこいガキじゃねーか
「ミーシャせんせーちょっと良いかな?」
「何かな?」
俺は一生徒として直接話しかける事とした。
自分で言うのもなんだが、俺は見た目はかなり良い。
フワフワしたくせっ毛の金髪も、翠玉のような瞳も珍しくはないが顔の造形は親父の男らしさとお袋のおっとりとした優しさを丁度良く足して割ったような美形だ。
この顔と商売方法を応用した女性の上手い扱い方等から年上から年下までオトしてきた女は数多くいる。
十四歳にして早熟で男らしいと良く言われる事もあり、ミーシャせんせいと同じ歳の女の子からお嫁さんになりたいと告白された事もある。
実際ミーシャせんせいの反応は悪くなかった。
婚約者がいるとの話だったが手を握ったり肩を抱いたりしても振り払われる事もないし
俺がわからないのだと言えば専門でない学科の授業内容でも丁寧に教えてくれる
俺は嫌がられていない、むしろ好かれているだろう
もっと距離を詰めて、気を許してきたとき
俺に好意を抱いたと確信した時に手酷く振ってやろう。
そして傷付いた顔でも拝めたなら少しは胸もすく思いがする事だろう
初めはそんな思いを持って近づいた訳だが
彼女に本気になってしまう可能性を、この時の俺は想像していなかったのだった。
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