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第一章
~13~
しおりを挟む私は別に″食″というものに関して別段思う事はない
生き物が生命活動を行う為に必要とする栄養補給でしかないからだ
しかし貴族がとる一般的な食事が栄養バランスの取れたものではないという事だけは理解していた
一日三食、肉ばかり、という事が珍しくもないような食生活だ。
私は早死にする気は無いので我が家の調理師に頼み、サラダ等野菜中心の食事を出して貰えば家族から不思議なものを見るような目が向けられたものだ。
なんでも野菜は火を通すのが一般的で生のままではとてもじゃないがあまりの苦さに食べられたものではないのだとか
別に私としては味等どうでも良かったが、『これ』を自らの資金稼ぎに出来るかもしれないと踏み、着手した。
品種改良とは本来長い期間を使い、試行錯誤し、少しずつより良いものを開発するものだが
私には転生する前の知識というチートめいたものがある。
限られた時間の中、速くに結果を出し資金を得る為に効率良く研究を進めたのだ。
庭の一角を畑として作ったそれらを、サンプル品として領民に紹介し同じものを作って貰う。
それらが市場に出れば一躍有名となるだろう。
フロイライト家領土産地の特産品として売り出す事も出来る。
しかしそれは他の領土のものの需要が減り、フロイライト家領土の作物の供給が追いつかなくなる可能性が出てくる。
そうならないよう、私は国内の大手商会の複数に取り引きを持ちかけたのだった。
「どうも、お時間を頂き誠に有難うございます」
「いえいえ、″あの″フロイライト侯爵家のお嬢様となれば私の時間などいくらでも空けますとも」
「私がここに来た理由は、もうお判りのようで」
「ええ?いやいやそんな・・・」
「誤魔化さなくて結構、私は商売に来たのだよ」
私がガルパン商会の本店、その会長であるムシュー・ガルパン氏と話がしたいと手紙を渡した後、即座に返事が返ってきた事
こうして本店の接客室に案内されるまでの私を見る目は商売人として私を測るものであった事
その事からムシュー・ガルパンは市場に出回りつつある我が領土から出た作物について、その出処まで調べがついていたのだろう
流石は商会会長、情報収集はお手の物のようだ。
話しが速く済みそうで何よりだ。
「私は『品種改良の方法』を売りに出したいのだよ。利益は授業料のみとする、しかし授業を受けた者は授業を受けた事を公表する事とする。
どうかね?」
「・・・・・・なるほど、公表をしなかった、怠った場合は」
「別に構わん、公表するがしまいが変わりはない
授業をする場所はフロイライト家領土内で行うものとするが、希望があれば君の領土でも良いのだが?」
「・・・いや、気持ちだけ受け取っておこう。君にはまだ″色々″とあるようだ」
賢い者との会話は気持ちの良いものだな。
私が品種改良の方法を売り出す事で授業料が入る上に、授業を受けた者を通してフロイライト家の名前が少しでも広まる事を狙っての事だ。
これだけだとはっきり言って穴だらけの計画だろう
中には教えずとも技術を盗む輩もいるし、授業を受けてもさも自身の功績のように主張しでかす輩だっている事だろう
しかしそれでも構わない、なにせ更にその上の技術知識を持つのはこの世界では私しかいないのだから
私の頭の中を盗み見る事でもしない限り最良の品種改良は出来はしない
もし出来るとするなら私の知識を元に調べ、自ら上を目指す意志のあるような者くらいだろう
授業で教える品種改良においても制限をかける。
決してフロイライト家領土のものよりも質の良いものは教えないつもりだ。
そうすればフロイライト家領土から出荷されるものと他の領土のものとで差別化が店によってされていく事となる。
暫くの間、それこそ私が結婚するまではフロイライト家領土の作物の優位性は揺るがない事だろう
あとはやる気のある農家達が自然と競争するようになり、私の教えなくとも品種改良は更なる発展を遂げるようになるし、
平民達にも安く質の良いものが手に入りやすくなる
時代となる。
私は私自身の見入りとなる資金を稼げれば後の事等どうでもいいのだ。
それこそこういった商売人達が勝手に市場を管理してくれるのだから専門家に任せておけば良い
ムシュー・ガルパン氏はそれを理解したのだろう、無駄口を開く事無く話が済んだ事が何よりの証明だ。
「邪魔をしたな、これで失礼する」
「またのお越しをお待ちしております」
聞き耳をたてていた少年がこちらを覗き見ている事に気付いたが、特に用もない為無視して出ていった。
視線が鬱陶しかったが私の計画において関わり合う必要性を感じないどうでもいい事だ。
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