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第一章
~7~
しおりを挟む「知らない、聞いてない」
「お母様から聞いた筈でしょう?」
「いや、でもあれは『学院』を卒業する事を言っているんだと」
「とにかく勉強頑張ったら?」
兄様は呆然とした表情でミーシャ嬢からの手紙を読んでいた
お母様はあえて言葉をぼかしたのかもしれないな
だってミーシャ嬢の結婚の条件は『学院の卒業時、私ミーシャ・フロイライトよりも優秀である事を示して貰いたい。そうでなければ婚姻を考え直させて頂きたい』とある。
要は自分より馬鹿とは結婚したくねーよって事なんだろう
これ、条件を満たせる人居るの?って思ったね
憶測だけど、多分ミーシャ嬢は結婚までの時間稼ぎにこう書いたんじゃないかと思う。
後で本人から聞こう
お茶会が終わった夜、僕がした事は結局お咎め無しとなった。
お母様は笑いながら「どっちがミーシャ嬢の心を射止めるのかしら、楽しみねぇ」なんて言っていたくらいだ。
「うぅう、ミーシャ嬢は優秀だと噂で聞いてはいるが、どれほどのものなんだろうか?」
「学院を卒業時、だからまだ先の事じゃない」
「そうなんだけど・・ってライネルは一体いつからミーシャ嬢のこと」
「僕が家庭教師を断った日かな」
僕はあの図書室での事があった日、お母様に家庭教師から教わる事は何も無いと断ったのだ。
それ以来度々学院の図書室や研究室に赴いてはミーシャ嬢から勉強を見て貰っている。
ついでに国を挙げた一大計画と言える『水力発電送電計画』の実現に向け少しづつではあるが助力している所だ。
「はぁ~、ま、まぁ十歳になったら入学する訳だし、それまでにもっと勉強を頑張れば良いんだよな!」
「あ、ちなみにミーシャ嬢は一般枠で入学したってさ」
「・・・・・え"?」
『学院』正式名称は王立技術学院
その規模は莫大であり国中に分校がいくつも点在している。
貴族等の爵位持ちの子供は十歳になったら入学が義務付けられていて
社交界のマナーはもちろん、領地を任せられる跡取りの為経営学や経済学、跡取りにならない者達の為に様々な分野を学ぶ事が出来る
その為手に職を持ちたい一般枠の人も簡単な試験を受ければ年齢に関係なく入学出来るのだ。
その殆どは二十歳過ぎであったり、暇を持て余した老人等が殆どで、十歳になる前に入学する人なんてそれこそミーシャ嬢くらいなものだろう
『学院』は入学は簡単だが卒業が超絶困難な事で有名だ。
卒業認定試験を受け、合格点を出さなければ卒業の証を受け取る事が出来ない
卒業試験を合格出来ずに自ら退学届を提出する者は珍しくない程
ちなみに、婚約が七歳頃と早めにも関わらず結婚式を挙げるのは二十歳頃となる貴族が多い理由はこの学院にある。
卒業出来るまで粘りにねばって試験を合格出来るようになるのにはそれくらいの年月を必要とする為だ。
そこまでして卒業をしたいのかと疑問はあるが、学院の卒業の証はある意味で貴族の間では自慢となる
その為か、あるいは元平民から学院を卒業し功績を残し爵位持ちとなる者は今では珍しくもなく、そんな平民に対抗するかのように必死になって卒業しようとする者が多いからなのだろうか
ともかく
「ぼっ僕も、今すぐにでも学院に・・・・!」
「落ち着いて兄様」
後三年もしないで入学する事になる兄様を宥めなければいけない
あの学院に、入学して数日程度で卒業出来る存在なんてミーシャ嬢くらいなものだ。
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