上 下
8 / 84
第一章

~7~

しおりを挟む




「知らない、聞いてない」

「お母様から聞いた筈でしょう?」

「いや、でもあれは『学院』を卒業する事を言っているんだと」

「とにかく勉強頑張ったら?」


兄様は呆然とした表情でミーシャ嬢からの手紙を読んでいた
お母様はあえて言葉をぼかしたのかもしれないな
だってミーシャ嬢の結婚の条件は『学院の卒業時、私ミーシャ・フロイライトよりも優秀である事を示して貰いたい。そうでなければ婚姻を考え直させて頂きたい』とある。
要は自分より馬鹿とは結婚したくねーよって事なんだろう
これ、条件を満たせる人居るの?って思ったね
憶測だけど、多分ミーシャ嬢は結婚までの時間稼ぎにこう書いたんじゃないかと思う。
後で本人から聞こう

お茶会が終わった夜、僕がした事は結局お咎め無しとなった。
お母様は笑いながら「どっちがミーシャ嬢の心を射止めるのかしら、楽しみねぇ」なんて言っていたくらいだ。

「うぅう、ミーシャ嬢は優秀だと噂で聞いてはいるが、どれほどのものなんだろうか?」

「学院を卒業時、だからまだ先の事じゃない」

「そうなんだけど・・ってライネルは一体いつからミーシャ嬢のこと」

「僕が家庭教師を断った日かな」


僕はあの図書室での事があった日、お母様に家庭教師から教わる事は何も無いと断ったのだ。
それ以来度々学院の図書室や研究室に赴いてはミーシャ嬢から勉強を見て貰っている。
ついでに国を挙げた一大計画と言える『水力発電送電計画』の実現に向け少しづつではあるが助力している所だ。

「はぁ~、ま、まぁ十歳になったら入学する訳だし、それまでにもっと勉強を頑張れば良いんだよな!」

「あ、ちなみにミーシャ嬢は一般枠で入学したってさ」

「・・・・・え"?」


『学院』正式名称は王立技術学院
その規模は莫大であり国中に分校がいくつも点在している。
貴族等の爵位持ちの子供は十歳になったら入学が義務付けられていて
社交界のマナーはもちろん、領地を任せられる跡取りの為経営学や経済学、跡取りにならない者達の為に様々な分野を学ぶ事が出来る
その為手に職を持ちたい一般枠の人も簡単な試験を受ければ年齢に関係なく入学出来るのだ。
その殆どは二十歳過ぎであったり、暇を持て余した老人等が殆どで、十歳になる前に入学する人なんてそれこそミーシャ嬢くらいなものだろう

『学院』は入学は簡単だが卒業が超絶困難な事で有名だ。
卒業認定試験を受け、合格点を出さなければ卒業の証を受け取る事が出来ない
卒業試験を合格出来ずに自ら退学届を提出する者は珍しくない程
ちなみに、婚約が七歳頃と早めにも関わらず結婚式を挙げるのは二十歳頃となる貴族が多い理由はこの学院にある。
卒業出来るまで粘りにねばって試験を合格出来るようになるのにはそれくらいの年月を必要とする為だ。
そこまでして卒業をしたいのかと疑問はあるが、学院の卒業の証はある意味で貴族の間では自慢となる
その為か、あるいは元平民から学院を卒業し功績を残し爵位持ちとなる者は今では珍しくもなく、そんな平民に対抗するかのように必死になって卒業しようとする者が多いからなのだろうか
ともかく


「ぼっ僕も、今すぐにでも学院に・・・・!」

「落ち着いて兄様」

後三年もしないで入学する事になる兄様を宥めなければいけない
あの学院に、入学して数日程度で卒業出来る存在なんてミーシャ嬢くらいなものだ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】野垂れ死ねと言われ家を追い出されましたが幸せです

kana
恋愛
伯爵令嬢のフローラは10歳の時に母を亡くした。 悲しむ間もなく父親が連れてきたのは後妻と義姉のエリザベスだった。 その日から虐げられ続けていたフローラは12歳で父親から野垂れ死ねと言われ邸から追い出されてしまう。 さらに死亡届まで出されて⋯⋯ 邸を追い出されたフローラには会ったこともない母方の叔父だけだった。 快く受け入れてくれた叔父。 その叔父が連れてきた人が⋯⋯ ※毎度のことながら設定はゆるゆるのご都合主義です。 ※誤字脱字が多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※他サイトにも投稿しています。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

皇妃は寵愛を求めるのを止めて離宮に引き篭ることにしました。

恋愛
ネルネ皇国の后妃ケイトは、陰謀渦巻く後宮で毒を盛られ生死の境を彷徨った。 そこで思い出した前世の記憶。 進んだ文明の中で自ら働き、 一人暮らししていた前世の自分。 そこには確かに自由があった。 後宮には何人もの側室が暮らし、日々皇帝の寵愛を得ようと水面下で醜い争いを繰り広げていた。 皇帝の寵愛を一身に受けるために。 ケイトはそんな日々にも心を痛めることなく、ただ皇帝陛下を信じて生きてきた。 しかし、前世の記憶を思い出したケイトには耐えられない。命を狙われる生活も、夫が他の女性と閨を共にするのを笑顔で容認する事も。 危険のあるこんな場所で子供を産むのも不安。 療養のため離宮に引き篭るが、皇帝陛下は戻ってきて欲しいようで……? 設定はゆるゆるなので、見逃してください。 ※ヒロインやヒーローのキャラがイライラする方はバックでお願いします。 ※溺愛目指します ※R18は保険です ※本編18話で完結

もうすぐ、お別れの時間です

夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。  親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

処理中です...