運命には抗えない〜第一幕〜

みこと

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ロジェ

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 ふん、何が私の国には鉱山がある、だ。ルビーもエメラルドも少ししか採れないじゃないか。

グラスに入った赤黒い飲み物をゆっくり飲み干す。ロジェの『不老』だ。宝石を溶かして魔法をかける。その宝石の質で『不老』のかかる長さが決まる。見るからに毒々しいそれは宝石の質が良くない証拠だ。美しい顔は苦痛で歪んでいる。

 そろそろこの国も潮時だな。内紛が日々大きくなっている。私の身が危なくならないうちに逃げるか…。
 ここのところ皆の贈ってくる宝石の質が悪い。『不老』がかかる時間が短い。
 そういえばレオナルドとラザウェルからの宝石がまだ届いてないな。あの二人は金があるから質の良い宝石を贈って寄越すのに。どうしたんだ?死んだのか?それとも病気か何か?一度見に行ってみるか。
 何しろサザーランドのルビーの質の悪さと言ったら。『不老』のために飲まなきゃならない私の身にもなってみろ。
レオナルドが前に贈って寄越したルビーは最高だったな。ピジョンブラッドの素晴らしいルビーだった。アイツの土地で採れるダイヤモンドも素晴らしい。ラザウェルの寄越したコーンフラワーブルーのサファイアも良かったな。あの美しい色と輝き。他のヤツらもあのくらいの物を寄越せばいいのに。
 ラザウェルか。アイツには運命の番がいたはずだ。ハニーブロンドの髪と瞳のオメガだったな。二人でバカみたいにイチャついて歩いていたのを見た事がある。何でも修道院に送ったとか。ざまぁないな。運命なんて言っても所詮そんなもんだ。私の『魅了』の前では運命なんてクソみたいなものだ。

ロジェは空になったグラスを床に投げ付けた。ガラスの破片が辺りに散らばる。

 200年前のカリスタの王子もバカだった。その親の国王も甘やかすしか知らないバカな国王だ。あんなに金があったのにあっという間に使い果たして滅んだ。あそこの宰相だけは私の秘密に気付いていたな。
ヤフェリカの国王もバカだった。運命の番とも別れさせたし、あそこは質のいいダイヤモンドが採れて羽振りは良かったけど周りの側近たちが金と欲に溺れたどうしようもないヤツばっかりだった。ちょっと綻びが出来るとあっという間に滅んでしまう。



ラザウェルの屋敷に行ったらヤツはあのオメガと寝ていた。私以外とはセックス出来ないはずなのに…。まぁ良い。まだ私の『魅了』の中だ。何とでもなる。ラザウェルあのオメガを突き飛ばしベッドに私が入った時のあのオメガの顔。思い出すだけで笑える。

レオナルドの屋敷にも行ってみるか。私の肖像画があるか確認してみよう。
ラザウェルは本邸にしか肖像画がない筈だ。絵師を呼んで描かせてグリーンレイクにも置いておくか。同じ屋敷内なら肖像画を動かすこともできるが本邸からグリーンレイクまでは難しい。
レオナルドの屋敷に行った帰りにもう一度グリーンレイクに寄るか。とりあえずラザウェルも連れて行こう。

どういう事だ?レオナルドも正気になっている。あのキスをしていたオメガはレオナルドの運命なのか?私と出会った時には運命の番は居なかったはずだが。クソっ!いったん城に引き上げるか。一体どうなっているんだ?私の秘密がバレているのか?そんな事はない筈だが…。
やはりもうそろそろ違う国か大陸へ移ったほうが良さそうだな。

ん?何だこれは?私宛の書状か。パトリック・レイモンド?あぁ、あの赤毛の侯爵か。ふーん、すごく良い宝石が手に入ったから会いたい、か。面倒だが手持ちの宝石がほとんどないしな。パトリックもそこそこ良い物を寄越してくれていた。最後に行ってみるか。その宝石を貰ったらここを出よう。
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