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ラザウェル2

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あれはヨハネス侯爵の誕生日パーティーの日だった。
リトはどうしてもやらなければならない仕事をあるので行けなかった。
私もあまり気が進まないが、大事な仕事相手なので顔だけ出すつもりだった。
三時間ほどリトと会えなくなるのが寂しくて玄関で抱きしめて何度も何度もキスをする。硬くなった股間を押しつけたら肩をピシャリと叩かれて馬車に乗せられてしまった。



ロジェとはそのパーティー会場で出会った。 



「ラザウェル、あのオメガ美人だな。」

会場で会った友人のレビンが一人のオメガを見つけた。
遠くからでも分かるプラチナブランドに紫色の瞳。確かに美人だがリトの足元にも及ばない。

「リトの方が美人だ。」

「え?」

「リトの方が可愛いしスタイルも良い、リトの髪のハニーブロンドの美しさと言ったら…。」

「はいはい。おまえに言った俺がバカだった。リトによろしく。俺は声をかけてくる。」

「ふん、勝手にしろ。」

一通り挨拶したので帰ろうかと思っていると、甘い匂いがした。振り返るとさっきのプラチナブロンドのオメガだった。

挨拶を交わしたのは覚えている。そこからの記憶が曖昧だ。グリーンレイクに戻って出迎えたリトを見た瞬間、頭痛と吐き気に襲われた。頭の中に黒いモヤが溢れた。
他に好きなオメガができたと言った。出て行って欲しいとも。リトは驚き、涙を流していた。
モヤと頭痛が酷い。ロジェに会いたくて仕方なかった。

次の日の朝、リトは荷物をまとめて出て行こうとした。それ見て何故だか止めてしまった。出て行け、出て行くな。三日ほどそれを繰り返した。もちろんリトも困惑している。出て行って欲しいのにそれをさせては行けない気がする。誰もいない所に送ってしまいたい。アルファがいない所に…。
私はリトをガタラ修道院に入れた。ない罪をでっち上げて。


それから私はぼんやり過ごした。いつも通り仕事をしていつも通り眠る。マーモンドがたまにリトの事を尋ねてくるが、考えるだけで頭の中にモヤが出てきて頭痛がする。リトの話はするな、と命令した。
時々グリーンレイクにロジェがやって来た。ロジェのために高価な宝石を用意しておく。ロジェが喜ぶからだ。

「ステキなエメラルドですね。こっちのブローチはオパール!本当に綺麗。」

ロジェに言われてリトの物は全て捨てた。リトの物を見る度にモヤと頭痛が激しく襲う。マーモンドが悲しそうにリトの物を処分していた。
私はグリーンレイクに居たくなくて王都にある本邸に戻った。ロジェはそちらにも時々遊びに来た。何故が家族が驚いている。リトはどうしたのかと言われたので、どうもしないとだけ言っておいた。

ロジェの肖像画を飾るように言われて絵師を呼んで描かせた。良い出来だったので自室に飾った。見ているだけで心が落ち着く気がする。

私はロジェに言われて何度か彼を抱いた。愛しいロジェを。
何故か、なかなかイクことが出来なかった。ロジェがイったのを見て暫く自分で扱いて腹や尻に出す。一度出すと疲れてしまいそのまま寝た。
私はセックスは淡白な方だった。…違うような気もするが。

私には兄が居るが体が弱くほとんど寝て過ごしている。しかし、兄は優しくて聡い人だ。私は兄が大好きだった。そんな兄が私の様子がおかしいとしきりに訴えてくる。リトはどうしたのか、ロジェに会わせて欲しい、宝石ばかり買って何をしているかと尋ねてくる。
私は私だ。何も変わったりしていないのに…。面倒になって兄の元へ足を運ばなくなった。

父や兄からも公爵位は私が継ぐように言われている。両親ともにまだまだ元気なのでその日はずっと先になりそうだ。だが、家の金の管理はほとんど私がしている。ロジェに贈り物をするためには金がかかるので父や兄にバレないように自分の金を動かした。まあバレても私の金なので何に使ってもいいのだが、いろいろ聞かれるのが面倒なのだ。
徐々に家族とも距離を置いた。

ロジェに会う日以外はとにかく働いて金を作り、宝石を買うために貯め込んだ。
そんな生活が一年近く経ったある日、ロジェの結婚を知らされた。隣国サザーランドの王太子と結婚する事になったようだ。
そうか、ならばお祝いを贈らないと。
サザーランドは鉱山に囲まれており、ルビーとエメラルドが採れるのでそれ以外の宝石が良いだろう。
ロジェは一番愛しているのは私だと言った。王太子の求婚なので断れなかったと。
その証拠に毎月手紙をくれる。私も愛するロジェのために高価な宝石を贈った。
私にはあの肖像画があるのでそれを見てロジェを思い出そう。


ある朝私が家で仕事をしていると、騎士団長のオズベルトが訪ねて来た。私が騎士団に所属していた頃の後輩だ。誰よりも腕っぷしが強く将来有望なヤツだった。何かと面倒を見てやって稽古にも付き合った。期待通り団長にまで上り詰めた。最近は休んでいる事が多いと聞いている。まぁ、団長ともなれば事務仕事も忙しいのだろう。

久しぶりに見るオズベルトの顔は切羽詰まっていた。

「ラザウェル様、ご無沙汰しております。大変急ぎの用なので挨拶は抜きにしてお話しします。実は弟君のロベルト殿がリカドの駐屯地で怪我をされたようで…。」

「何だって!すぐに父に知らせなければ。」

「いや、それが怪我の具合がかなり酷いようなのですが詳しい事がまだわからないのです。お父上を驚かせては、と思い先にラザウェル様にお知らせに参りました。先ずは私と先に様子を見に行かれてはどうでしょう。」

「あ、あぁ、そうだな。よく知らせてくれた。団長自らとは感謝する。すぐにリカドに行こう。」

馬を走らせてリカドに向かった。かなり飛ばしたので昼前には着いた。てっきり病院か診療所に行くと思っていたのだが、着いたのは宿の前だった。

「ここに居るのか?」

「はい。」

馬を預けて中に入る。なぜこんな所に?リカドには有床診療所があったはずだが…。その時ふわりと匂いがした。懐かしいような切ない匂いだ。えっ?と思って嗅いでみたが消えてしまった。その代わりに何か不思議な匂いがする。

オズベルトに案内されて二階の奥の部屋の前に着いた。不思議な匂いが濃くなった。

「そちらの部屋です。」

扉を開けて中に入る。中に入ると不思議な匂いがさらに濃くなる。何とも言えない匂いだ。
中に人が居る。二人は見た事がある。レオナルド・フォーゼット辺境伯とミントン公爵の息子のサフィーアだ。小さなオメガと変な格好をした二人は見た事がない。
ベッドも見えるが誰も寝ていない。

「何だこの匂いは。私の弟はどこだ?オズベルト、部屋を間違えているぞ。」

オズベルトが扉を閉めた。

「いいえ、ラザウェル様ここであってますよ。」

「えっ?」

その時、変な格好の男の一人が魔法陣を唱えたのが分かった。しまった、と思ったが既に遅く体が動かなかった。見た目によらず魔力が強いようで振り解けない。

「おまえたち何を…⁉︎」

「今です、リト様!」

クローゼットの扉が開いてあのオメガが出てきた。驚いて固まってしまった。頭の中にモヤが…と思ったその時

「ラザウェル様…。」

あのオメガが私の頬に手を添えて涙を流しながらキスをした。

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