オメガも悪くない

みこと

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 目が覚めると見慣れない天井が目に入った。怠い体が絡まった腕と足でがっちり固定されている。誰の手足か顔を見なくても分かる。

 そっと手を振り解こうとするとさらにぎゅっと抱きついてきた。

「どこ行くんだ?」

「喉乾いただけ。」

 声が枯れていて驚く。喘ぎ過ぎたせいだ。
 ん、と言ってヤツが起きた。素っ裸で出て行くとミネラルウォータのペットボトルを持って戻って来た。思うように動けない俺を起こして水を飲ませてくれる。冷たい水がカラカラの喉を潤す。ふーっと大きく息を吐いて忠臣を見ると残りの水を飲んでいた。

「おまえ、何してくれてんだよ…。」

 怒りとも悲しみとも違う感情。どちらかと言うと諦めに近い。力なくヤツを睨みつける。

 フッと不敵に笑い俺のこめかみにちゅっとキスをしてきた。

「だーかーらー、何なんだよ!」

 慌てて避けるがあちらの方が機敏だ。ぎゅっと抱きしめられて。頭や顔中にキスをされる。

「さっきも言ったろ?次のヒートで番になるつもりだって。ヒートじゃないからまだ番になれないけど、どうせなるんだから変わらんだろ。」

「番って、そんなの初耳だよ!」

「そりゃそうだ。まだ言ってないからな。でももう決まってるんだ。運命だからな。」

 もう俺のものだ、と言ってさらにキツく抱きしめられる。そう言えばヤってる時も『番』とか言ってたな。驚いて顔を見上げるといつもの優しい笑顔だった。でも俺はその瞳の奥にある獰猛な野獣のような視線を感じゾクゾクした。そのゾクゾクは俺をオメガにしてしまうらしい。

「んー、良い匂い。」

 ヤツがうっとりと目を細めて首筋を舐め回す。息が荒く興奮しているのが分かる。チラリと下半身に目をやると俺の倍近くあるアレも反り返っている。

…絶倫かよ。



 その後もめちゃくちゃにヤラレてそのまま泊まった。
 忠臣曰くあの寮は危ないのでもう帰さないらしい。オメガしか入れないのに上級生がアルファを連れ込んでいると耳にしたそうだ。その事を話そうと思っていたらこうなってしまったと言った。

 次の日、重い体を引きずって学校に行った。忠臣は終始ご機嫌で俺の鞄を持ち腰を支えて教室まで連れて行ってくれる。みんなに何て言われるか、と思っていたら誰からも何も言われなかった。
 その理由は後で哲雄に聞くことになる。



 教室の一番後ろの席で忠臣が俺にちょっかいをかけてくる。先生が背中を見せた隙に横からこめかみにキスをしてきたり耳を甘噛みしてくる。隣にピッタリと座り、手は腰に回され撫で回してくる。

「マジで止めろ…。」

 小声で抗議するが全然聞いていない。
 おまえはヤると彼氏ヅラするタイプだったんだな…。
 俺のものって言ってたし。それにしたってギャップがあり過ぎるだろ!『良い匂い。』とか言ってクンクンしてくる。犬か⁉︎イヤ、待て!舐めるな!
 抑制剤は飲んだ筈のに。そんなに匂うのか?
 グイッと引き離して睨むと『そんな可愛い顔するな。』と囁かれて口にちゅっとされた。

「…っ!」

 幸いにも誰にも見られていなかったが、もう何を言っても無駄だ…。




 やっと授業が分かれてぐったりしていたら哲雄が隣に座った。昨日の飲み会でタイプのアルファにあったらしい。ウキウキして浮かれているのが分かる。
 俺は忠臣との事を隠すのもなんだと思い哲雄に話した。

「うん。え?まだ付き合ってなかったの?アレで?」

 哲雄の反応に驚いた。だいぶ前から付き合ってると思っていたようだ。

 へっ?何で?

「ずっと前から西園寺君のフェロモンくっつけてたじゃん。西園寺君も周りに威嚇しまくって怖いくらいだよ。みんな2人は付き合ってると思ってるでしょ。」

 そうなの?マジで?知らなかった。忠臣のフェロモンってなんなの?威嚇しまくってるって。超恥ずかしいじゃん。
 俺が黙ってしまうと哲雄は近づいて匂いを嗅いでくる。

「西園寺君のフェロモンがさらに濃くなった。アルファは絶倫だからよく労ってもらえよ。」

 意味深にニヤリとされてしまった。
 はは…。それも分かっちゃうのね。

 授業が終わると忠臣が教室の外で待っていた。蕩けるような笑顔で迎えてくれる。俺の鞄をスッと取り上げて手を繋いでくる。もちろんカップル繋ぎってヤツだ。

「なぁ、その振り幅何なの?」

「いつもと同じだろ。」

 平然と言ってのけるヤツを呆れた顔で見上げた。

 ちゅっ。

 またキスされた!周りを見ると誰もいない事にホッとする。

「可愛い顔するおまえが悪いって言ってるだろ?」

 やはりコイツには何を言っても無駄だ。これ以上刺激しないように手を引かれて歩いた。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


「あぁ、はぁ、あっ!」 

 部屋に着くなり押し倒される。ずっと我慢していて限界だったらしい。…が俺は違う意味で限界だ。頼むから寝かせてくれ。

「はぁ、雅人…。気持ちいいぞ。」 

「もうダメ。あぁ、あっ、あっ、あっ!休ませて!」

「嘘はダメだ。ふぅっ!こんなに締め付けて…。はぁはぁ、まだ欲しいんだな。」

 もう何回イって何回中に出されたか分からない。気持ちいい所を徹底的に責められる。もう何が何だか分からない。
 とにかくアルファ…絶倫すぎる。
 忠臣が射精に向けての動きを始めた。

「雅人っ!中に出すぞっ!はぁっ!うぅっ!!」

「イクイクイクーっ!あーーーっ!はぁん!」


 中でビクンビクンしながら出された。気持ちいい…。気持ちいいけど、もうダメだ…。そのまま意識を手放した。




「なぁ、もう少し控えてくれないと日常生活に支障が出るんだけど。」

 朝まで付き合わされて目が覚めたのは昼過ぎだった。今日は休みなのでベッドの住人だ。
 んー、とイエスかノーかはっきりしない生返事をしながら俺の体にせっせとキスをしている。

「三日に一回は?」

 至極まともな提案をする。

「無理だな。毎日は譲れない。」

 絶倫め!性の不一致は離婚の原因だぞ!まぁ、まだ結婚どころか番にもなってないけど。
 大きなため息を吐いてベッドに潜り込んだ。

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