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潤は自分の部屋でゴロゴロしながら考えていた。
夕食を食べた後、いつも通り楓を送り届けた。
楓の悩みをなんとかしてあげたい。そうすれば潤とも楽しく過ごせるし、もっと長い時間一緒に居られる。
今日はホテルでイチャイチャして過ごした。でも泊まることなく帰ってきたのだ。
朝まで一緒に居たいし、旅行にだって行きたい。
それに楓に心から楽しんでもらいたい。
「律のアルファって誰だろう。」
潤はふと思った。
その相手がマッチングの通知自体に気が付かなかったということはさすがにないだろう。楓が言うには先週マッチング解除の通知が発送されたらしい。潤はその一歩手前で解除を止めることが出来たので解除通知の存在は知らない。
相手の情報は非公開だが、マッチングした相手を隠すアルファはいない。それにみんな自分のオメガを連れ回しているので、すぐに知られることになる。
むしろ自慢げに連れて歩いているアルファの方が多い。
「楓に聞いてみるか。」
律と仲が良いなら知っているかもしれない。
そう思いスマホでメッセージを送った。
しばらくすると楓から返事が来た。一応律の許可をもらったようだ。
しかし潤はその相手の名前を見て驚愕した。
「マジか…。」
そのアルファは潤も知っている。
一条俊哉。
潤とは同じ学校だ。
中高一貫の進学校で六年間同じだが、クラスが一緒になったことはないので話をしたことはない。
しかしその名前と存在は知っている。いやむしろ知らない奴はいないのかもしれない。
名門中の名門、曽祖父は総理大臣まで務めた政治家一族。それに実業家としても成功を収めている。
そしてオメガ嫌い。
潤は大きくため息をついた。
一条が潤と同じだということは考えにくい。
マッチングにすら興味がないだろう。意図的に律にコンタクトを取っていないのだ。
残念だが律は次のマッチング相手を待った方が良さそうだ。
「いや、待てよ…。」
潤は一昨年世間を騒がせた話題を思い出した。
一条俊哉の叔父にあたる一条総司、現職の大臣で三十代前半で大臣抜擢され一躍有名になった男。
彼がオメガと番いになり結婚した。
その歳下のオメガとは、もちろんマッチングで知り合い、長年愛を深めてきた。
結婚が遅くなったのは一族からの反対があったのだろう。しかし運命だという二人は諦めることなく番いになり結婚したのだ。
当時、世間を騒がせ、真摯に愛を貫いた彼の好感度は飛躍的に上がった。
一条俊哉もそのニュースを知っているはず。なのでオメガに対してそれほどの偏見は持っていないかもしれない。
潤は楓と律のために一条俊哉と話をしてみることにした。
「俺に何か用?」
早速、潤は月曜日に一条俊哉にコンタクトを取った。一条俊哉と同じクラスの友人に頼み呼び出してもらったのだ。
まじまじと見ると王子という言葉ぴったりの男だ。
祖母がイギリス人なのでクォーターになる。
淡い茶色の髪に瞳、スラリと背も高くモデルのようだ。
「あの、いきなりで悪いんだけど、マッチングのことで…。」
一条俊哉の右の眉がぴくりと上がる。途端に美しい顔が険しくなった。
「何でそれを…。ていうか君に関係ないだろ?」
「そうなんだけど、マッチングしたらコンタクトを取れるのを知らないのかと思って…。」
とりあえずそう聞いてみたが、潤が期待したような事実はなさそうだ。一条俊哉は冷たい目で潤を一瞥する。
「それを知っているってことは君はマッチングしたんだ。」
「ああ。俺たちのオメガはマッチング率100%なんだよ。」
潤の言葉に俊哉の顔がさらに歪み大きくため息をついた。
「俺たちのオメガって。君と一緒にしないでもらいたい。俺はマッチングなんて興味ないし、それが100%だったとしても嬉しくも何ともない。話はそれだけ?」
「え?ああ…。」
「そんなくだらない事でいちいち呼び出さないでくれ。」
そう言い捨てると一条俊哉は踵を返し自分の教室に戻ってしまった。
潤のわずかな希望は脆くも崩れ去った。
やはり一条俊哉は自らの意思で律に連絡しなかったのだ。彼の叔父の件もあり少しは期待したが、律は次のマッチングを待った方が良さそうだ。
楓に何て言おう。
がっかりしながら潤も教室に戻った。
「律!今週、僕たちと出掛けない?潤くんが律も誘って遊びに行こうって。」
「え?僕も?」
「うん。」
律が驚くのも無理はない。マッチングしたオメガ以外を連れ出すアルファなんて聞いた事がない。
「何で?楓が頼んだの?」
「ううん。潤くんがそうしたいって。律に次のマッチング相手が見つかるまで少し時間がかかるだろ?だからそれまでの間、退屈だろうって。」
「いいの?僕、邪魔じゃない?」
「そんなことあるわけない。僕も律と外に出掛けたい。」
「…ありがとう。」
潤は一条俊哉のことを楓だけに話をした。それを聞いた楓はやはり落ち込み、楓を励ますために潤が三人で出掛けることを提案したのだ。
もちろんそんな前例はない。
なので以前世話になった弁護士の石田に相談した。
オメガの人権問題に力を入れている石田は何年も外出させない学園のやり方は律の人権を無視していると立腹しすぐにバース庁に訴えた。そのおかげで律の外出申請が通ったのだ。
「土曜日に出掛けよう。外出申請が通るように潤くんが話をしておいてくれたって。」
「うん!」
久しぶりの外出に律が目を輝かせた。
律に一条俊哉のことは言わないでおこうと潤と決めた。元気のない律が少しでも楽しんでくれれば良いと楓は思った。
夕食を食べた後、いつも通り楓を送り届けた。
楓の悩みをなんとかしてあげたい。そうすれば潤とも楽しく過ごせるし、もっと長い時間一緒に居られる。
今日はホテルでイチャイチャして過ごした。でも泊まることなく帰ってきたのだ。
朝まで一緒に居たいし、旅行にだって行きたい。
それに楓に心から楽しんでもらいたい。
「律のアルファって誰だろう。」
潤はふと思った。
その相手がマッチングの通知自体に気が付かなかったということはさすがにないだろう。楓が言うには先週マッチング解除の通知が発送されたらしい。潤はその一歩手前で解除を止めることが出来たので解除通知の存在は知らない。
相手の情報は非公開だが、マッチングした相手を隠すアルファはいない。それにみんな自分のオメガを連れ回しているので、すぐに知られることになる。
むしろ自慢げに連れて歩いているアルファの方が多い。
「楓に聞いてみるか。」
律と仲が良いなら知っているかもしれない。
そう思いスマホでメッセージを送った。
しばらくすると楓から返事が来た。一応律の許可をもらったようだ。
しかし潤はその相手の名前を見て驚愕した。
「マジか…。」
そのアルファは潤も知っている。
一条俊哉。
潤とは同じ学校だ。
中高一貫の進学校で六年間同じだが、クラスが一緒になったことはないので話をしたことはない。
しかしその名前と存在は知っている。いやむしろ知らない奴はいないのかもしれない。
名門中の名門、曽祖父は総理大臣まで務めた政治家一族。それに実業家としても成功を収めている。
そしてオメガ嫌い。
潤は大きくため息をついた。
一条が潤と同じだということは考えにくい。
マッチングにすら興味がないだろう。意図的に律にコンタクトを取っていないのだ。
残念だが律は次のマッチング相手を待った方が良さそうだ。
「いや、待てよ…。」
潤は一昨年世間を騒がせた話題を思い出した。
一条俊哉の叔父にあたる一条総司、現職の大臣で三十代前半で大臣抜擢され一躍有名になった男。
彼がオメガと番いになり結婚した。
その歳下のオメガとは、もちろんマッチングで知り合い、長年愛を深めてきた。
結婚が遅くなったのは一族からの反対があったのだろう。しかし運命だという二人は諦めることなく番いになり結婚したのだ。
当時、世間を騒がせ、真摯に愛を貫いた彼の好感度は飛躍的に上がった。
一条俊哉もそのニュースを知っているはず。なのでオメガに対してそれほどの偏見は持っていないかもしれない。
潤は楓と律のために一条俊哉と話をしてみることにした。
「俺に何か用?」
早速、潤は月曜日に一条俊哉にコンタクトを取った。一条俊哉と同じクラスの友人に頼み呼び出してもらったのだ。
まじまじと見ると王子という言葉ぴったりの男だ。
祖母がイギリス人なのでクォーターになる。
淡い茶色の髪に瞳、スラリと背も高くモデルのようだ。
「あの、いきなりで悪いんだけど、マッチングのことで…。」
一条俊哉の右の眉がぴくりと上がる。途端に美しい顔が険しくなった。
「何でそれを…。ていうか君に関係ないだろ?」
「そうなんだけど、マッチングしたらコンタクトを取れるのを知らないのかと思って…。」
とりあえずそう聞いてみたが、潤が期待したような事実はなさそうだ。一条俊哉は冷たい目で潤を一瞥する。
「それを知っているってことは君はマッチングしたんだ。」
「ああ。俺たちのオメガはマッチング率100%なんだよ。」
潤の言葉に俊哉の顔がさらに歪み大きくため息をついた。
「俺たちのオメガって。君と一緒にしないでもらいたい。俺はマッチングなんて興味ないし、それが100%だったとしても嬉しくも何ともない。話はそれだけ?」
「え?ああ…。」
「そんなくだらない事でいちいち呼び出さないでくれ。」
そう言い捨てると一条俊哉は踵を返し自分の教室に戻ってしまった。
潤のわずかな希望は脆くも崩れ去った。
やはり一条俊哉は自らの意思で律に連絡しなかったのだ。彼の叔父の件もあり少しは期待したが、律は次のマッチングを待った方が良さそうだ。
楓に何て言おう。
がっかりしながら潤も教室に戻った。
「律!今週、僕たちと出掛けない?潤くんが律も誘って遊びに行こうって。」
「え?僕も?」
「うん。」
律が驚くのも無理はない。マッチングしたオメガ以外を連れ出すアルファなんて聞いた事がない。
「何で?楓が頼んだの?」
「ううん。潤くんがそうしたいって。律に次のマッチング相手が見つかるまで少し時間がかかるだろ?だからそれまでの間、退屈だろうって。」
「いいの?僕、邪魔じゃない?」
「そんなことあるわけない。僕も律と外に出掛けたい。」
「…ありがとう。」
潤は一条俊哉のことを楓だけに話をした。それを聞いた楓はやはり落ち込み、楓を励ますために潤が三人で出掛けることを提案したのだ。
もちろんそんな前例はない。
なので以前世話になった弁護士の石田に相談した。
オメガの人権問題に力を入れている石田は何年も外出させない学園のやり方は律の人権を無視していると立腹しすぐにバース庁に訴えた。そのおかげで律の外出申請が通ったのだ。
「土曜日に出掛けよう。外出申請が通るように潤くんが話をしておいてくれたって。」
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