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「うわぁ!美味しい!」
「そうだな。楓、これも美味しいぞ。」
ここは五十嵐家行きつけのイタリアン。
個室もあるのでデートにはぴったりの店だ。
二人は色とりどりのアンティパストの盛り合わせを食べている。
メニューを見た楓は、よく分からなくて目を白黒させしまった。しかし潤が優しくエスコートしてオーダーしてくれた。
高原野菜のマリネ、ブルスケッタとフェットゥンタ、イワシのスカペーチェ、ズッキーニのフリット白トリュフソース、イタリア産プロシュートと盛りだくさんたが、少しずつきれいに盛られてある。
メインはパスタとピザをシェアして食べることにし、さらにセコンドピアットに子牛のタリアータ、あん肝のテリーヌを潤が頼んでくれた。
「楓は食べれるだけ食べな?残ったら俺が食べるから。」
潤は見かけ通りたくさん食べるようだ。
楓は本日のパスタ、ラグーソースのパッパルデッレとピザを二切れ食べた時点でお腹がいっぱいだった。それでも潤がセコンドピアットを少しづつ取り分けてくれたのでゆっくりと食べた。
「五十嵐様、こちらはオーナーからです。」
ウエイターがテーブルに皿を置く。アカザエビの香草焼き、鮑のカンネローニだ。
「おー、美味しそう。」
喜んでいる潤を見て楓は目を丸くした。
潤はまだまだ食べられるようだ。
「楓、これもすごく美味しんだ。」
「そうなんですね。でも僕、お腹いっぱいで。」
「そうか。楓は少食だな。」
潤が良く食べるだけだろう。
でもその大きな身体を維持するにはこれくらいの食べなきゃダメなのかもしれない。
吸い込まれるようになくなる皿を楓は只々唖然と見つめていた。
デザートも食べて二人は大満足で店を出た。
すぐに矢嶋が運転する車に乗り一息つく。
「今度は寿司屋に行こうな。銀座にある寿司屋なんだけど、寿司以外もすごく美味しいんだ。あ、楓、フレンチは?俺がいつも行ってるところが表参道にあってそこも美味しいんだよ。なかなか予約が取れないけど絶対に楓を連れて行くからな。」
嬉しそうな潤の話を楓は頷きながら聞いていた。
またどこかへ連れて行ってくれるのだ。それだけで充分嬉しい。
車はしばらく走り、窓の外を見ると大きな観覧車が見える。
「うわー、観覧車だ。すごい大きい。」
「今からあれに乗るんだ。楓は高いとこ平気?」
「はい。大丈夫だと思います。」
よくよく考えてみると大丈夫かどうか分からない。
そんな所に行ったこともないからだ。
でも潤が一緒なら大丈夫な気がする。
「ドバイ・アイを抜いて世界一大きな観覧車に認定されたんだよ。」
「へぇ。」
ドバイ・アイなら聞いたことがある。
世界一大きい観覧車だ。そういえばニュースで日本にも大きな観覧車が出来ると言っていた。
連日大賑わいで予約待ちだと聞いたが…。
「すごく混んでるんですよね?」
「ん?そうだな。でも大丈夫。アレは親父が建てたんだ。正確には親父の会社だけど。」
「えーーっ!」
楓は驚いてもう一度窓の外を見た。先ほど見た時よりも近づいているのでさらに大きく見える。
あんなすごいものを建てる潤の父の会社はどんな会社なのだろう。
どんどん大きく見えてくる観覧車を目を丸くして眺めていた。
二人は観覧車の入り口の前に着くと潤がゲートに立っているスタッフに何かを見せた。するとすかさずスタッフがゲートを開けてくれて中に入れてくれる。
「さあ、楓。乗って。」
裏口から長蛇の列を飛び越えて乗ることが出来たのだ。潤も乗り込んで来て扉が閉まる。
ゴンドラは座り心地の良いベンチと大きな窓で外を存分に見渡せる設計だ。ガチャンと外から鍵が閉まりゆっくりと動き出した。
「一周するのに30分かかるんだ。」
ゴンドラが動き出すと潤が隣に座ってきた。
「楓に話がある。」
「は、はい…。」
楓が緊張し下を向く。膝の上で握りしめた手を潤がそっと握った。
「楓と会ってまだ二回目だけど、俺と番いになって欲しい。」
驚いてぱっと潤の顔を見上げると、真剣な目で楓を見ていた。
「俺がバカだったばっかりに楓に辛い思いをさせてしまった。謝っても謝りきれない。でも、ずっと決めてだんだ。あのマッチング通知が来てからずっと…。絶対に楓と一緒になるって。それだけを楽しみに生きてきたんだ。」
「潤くん…。」
「楓が卒業したら結婚して番いになって欲しい。お願いします。」
今までのことが走馬灯のように蘇る。オメガと言われたこと、律と二人で学園に転校してきたこと。そしてマッチング通知を受け取った日。
自分には100%のマッチング相手がいる。
とても嬉しかった。
でもその後は何の音沙汰もなく寂しい毎日だった。
あんなに嬉しかった気持ちは幻だったのだ。
そして突然の再マッチングの依頼。もう100%の相手には会えないかと思っていた。
でも潤はこうして迎えにきてくれた。
一緒にいると緊張するけど安心もする。
ずっと待っていた100%のアルファ。
そんな潤が番いになって欲しいと言ってくれている。
嬉しくて堪らない。
「はい。よろしくお願い、します。」
胸がいっぱいになり涙が溢れる。ふと見ると潤も泣いていた。
「ありがとう!楓!絶対に幸せにする!」
「はい。」
潤の大きな手が楓の涙を拭う。そのままちゅっと目元にキスが落ちて来た。
「うぅ、楓の涙は甘いな。」
唸るように言うとぎゅっと抱きしめてきた。
そしてひょいと膝の上に乗せる。
大きな身体は温かくて楓をすっぽりと包み込む。
潤のフェロモンをそっと吸い込むととても安心して眠たくなってしまった。
「ん、楓?眠いのか?はぁ、本当に可愛いな。」
とろんとした顔の楓を覗き込んできた。
「だって、良い匂いで…。」
「楓だって良い匂いだ。堪らない…。キスして良い?」
楓が恥ずかしそうにコクンと頷くとすぐにちゅっとキスをされる。
「可愛い…。楓、大好きだ。」
潤はちゅっちゅっと何度もキスをする。最初は触れるだけのキスも徐々にねっとりとしたものに変わる。
楓たちの乗るゴンドラが一番上まで来た頃には、潤は楓の唇や舌を吸い、舐め回していた。
「ん、潤、くん…はぁ、」
「楓、楓、可愛い、好き、好き、楓…。」
その後も潤は楓をがっちりと抱きしめ、ゴンドラがスタート地点に戻っても離さなかった。
「そうだな。楓、これも美味しいぞ。」
ここは五十嵐家行きつけのイタリアン。
個室もあるのでデートにはぴったりの店だ。
二人は色とりどりのアンティパストの盛り合わせを食べている。
メニューを見た楓は、よく分からなくて目を白黒させしまった。しかし潤が優しくエスコートしてオーダーしてくれた。
高原野菜のマリネ、ブルスケッタとフェットゥンタ、イワシのスカペーチェ、ズッキーニのフリット白トリュフソース、イタリア産プロシュートと盛りだくさんたが、少しずつきれいに盛られてある。
メインはパスタとピザをシェアして食べることにし、さらにセコンドピアットに子牛のタリアータ、あん肝のテリーヌを潤が頼んでくれた。
「楓は食べれるだけ食べな?残ったら俺が食べるから。」
潤は見かけ通りたくさん食べるようだ。
楓は本日のパスタ、ラグーソースのパッパルデッレとピザを二切れ食べた時点でお腹がいっぱいだった。それでも潤がセコンドピアットを少しづつ取り分けてくれたのでゆっくりと食べた。
「五十嵐様、こちらはオーナーからです。」
ウエイターがテーブルに皿を置く。アカザエビの香草焼き、鮑のカンネローニだ。
「おー、美味しそう。」
喜んでいる潤を見て楓は目を丸くした。
潤はまだまだ食べられるようだ。
「楓、これもすごく美味しんだ。」
「そうなんですね。でも僕、お腹いっぱいで。」
「そうか。楓は少食だな。」
潤が良く食べるだけだろう。
でもその大きな身体を維持するにはこれくらいの食べなきゃダメなのかもしれない。
吸い込まれるようになくなる皿を楓は只々唖然と見つめていた。
デザートも食べて二人は大満足で店を出た。
すぐに矢嶋が運転する車に乗り一息つく。
「今度は寿司屋に行こうな。銀座にある寿司屋なんだけど、寿司以外もすごく美味しいんだ。あ、楓、フレンチは?俺がいつも行ってるところが表参道にあってそこも美味しいんだよ。なかなか予約が取れないけど絶対に楓を連れて行くからな。」
嬉しそうな潤の話を楓は頷きながら聞いていた。
またどこかへ連れて行ってくれるのだ。それだけで充分嬉しい。
車はしばらく走り、窓の外を見ると大きな観覧車が見える。
「うわー、観覧車だ。すごい大きい。」
「今からあれに乗るんだ。楓は高いとこ平気?」
「はい。大丈夫だと思います。」
よくよく考えてみると大丈夫かどうか分からない。
そんな所に行ったこともないからだ。
でも潤が一緒なら大丈夫な気がする。
「ドバイ・アイを抜いて世界一大きな観覧車に認定されたんだよ。」
「へぇ。」
ドバイ・アイなら聞いたことがある。
世界一大きい観覧車だ。そういえばニュースで日本にも大きな観覧車が出来ると言っていた。
連日大賑わいで予約待ちだと聞いたが…。
「すごく混んでるんですよね?」
「ん?そうだな。でも大丈夫。アレは親父が建てたんだ。正確には親父の会社だけど。」
「えーーっ!」
楓は驚いてもう一度窓の外を見た。先ほど見た時よりも近づいているのでさらに大きく見える。
あんなすごいものを建てる潤の父の会社はどんな会社なのだろう。
どんどん大きく見えてくる観覧車を目を丸くして眺めていた。
二人は観覧車の入り口の前に着くと潤がゲートに立っているスタッフに何かを見せた。するとすかさずスタッフがゲートを開けてくれて中に入れてくれる。
「さあ、楓。乗って。」
裏口から長蛇の列を飛び越えて乗ることが出来たのだ。潤も乗り込んで来て扉が閉まる。
ゴンドラは座り心地の良いベンチと大きな窓で外を存分に見渡せる設計だ。ガチャンと外から鍵が閉まりゆっくりと動き出した。
「一周するのに30分かかるんだ。」
ゴンドラが動き出すと潤が隣に座ってきた。
「楓に話がある。」
「は、はい…。」
楓が緊張し下を向く。膝の上で握りしめた手を潤がそっと握った。
「楓と会ってまだ二回目だけど、俺と番いになって欲しい。」
驚いてぱっと潤の顔を見上げると、真剣な目で楓を見ていた。
「俺がバカだったばっかりに楓に辛い思いをさせてしまった。謝っても謝りきれない。でも、ずっと決めてだんだ。あのマッチング通知が来てからずっと…。絶対に楓と一緒になるって。それだけを楽しみに生きてきたんだ。」
「潤くん…。」
「楓が卒業したら結婚して番いになって欲しい。お願いします。」
今までのことが走馬灯のように蘇る。オメガと言われたこと、律と二人で学園に転校してきたこと。そしてマッチング通知を受け取った日。
自分には100%のマッチング相手がいる。
とても嬉しかった。
でもその後は何の音沙汰もなく寂しい毎日だった。
あんなに嬉しかった気持ちは幻だったのだ。
そして突然の再マッチングの依頼。もう100%の相手には会えないかと思っていた。
でも潤はこうして迎えにきてくれた。
一緒にいると緊張するけど安心もする。
ずっと待っていた100%のアルファ。
そんな潤が番いになって欲しいと言ってくれている。
嬉しくて堪らない。
「はい。よろしくお願い、します。」
胸がいっぱいになり涙が溢れる。ふと見ると潤も泣いていた。
「ありがとう!楓!絶対に幸せにする!」
「はい。」
潤の大きな手が楓の涙を拭う。そのままちゅっと目元にキスが落ちて来た。
「うぅ、楓の涙は甘いな。」
唸るように言うとぎゅっと抱きしめてきた。
そしてひょいと膝の上に乗せる。
大きな身体は温かくて楓をすっぽりと包み込む。
潤のフェロモンをそっと吸い込むととても安心して眠たくなってしまった。
「ん、楓?眠いのか?はぁ、本当に可愛いな。」
とろんとした顔の楓を覗き込んできた。
「だって、良い匂いで…。」
「楓だって良い匂いだ。堪らない…。キスして良い?」
楓が恥ずかしそうにコクンと頷くとすぐにちゅっとキスをされる。
「可愛い…。楓、大好きだ。」
潤はちゅっちゅっと何度もキスをする。最初は触れるだけのキスも徐々にねっとりとしたものに変わる。
楓たちの乗るゴンドラが一番上まで来た頃には、潤は楓の唇や舌を吸い、舐め回していた。
「ん、潤、くん…はぁ、」
「楓、楓、可愛い、好き、好き、楓…。」
その後も潤は楓をがっちりと抱きしめ、ゴンドラがスタート地点に戻っても離さなかった。
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