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予備校の模試を終えた潤は駅前のコーヒーショップに入った。九月だというのに茹だるような暑さだ。立っているだけで汗が吹き出る。
コーヒーショップのカウンターで潤は迷いなくアイスコーヒーのグランデを注文した。喉がひっつきそうなくらいカラカラだ。
潤の進学希望先は天下のT大。模試では常にA判定なので何も心配していない。
しかし真面目な潤は、念には念を入れて予備校に通い勉強をしている。
T大への進学は元々潤自身も希望していたが、合格したら両親から楓と同棲しても良いと言われているのだ。なので試験勉強への余念はない。絶対に合格し、楓を迎えに行く。
もうすでに住む所も決めている。
大学近くの2LDKのマンション。今まさに建設中の高層マンションだ。
マンションのパンフレットを一目見て気に入り、即購入の申し込みをした。といっても父に頼んだのだ。
人気のエリアで高倍率の物件だったので直接父に頼み最上階の角部屋の購入権を得たのだった。
「ふぅー。」
窓向きのカウンターの一番端に座ってひと息つく。冷たいアイスコーヒーが乾いた喉を通っていく。
生き返ったようだ。
今日の模試も手応えは十分だった。合格は間違いないだろう。
あと二年半、楓に会えないのは本当に辛い。
この間は居ても立っても居られなくなり、オメガ学園の前をウロウロと歩いていた所、警察に職質をされてしまった。
すごすごと家に帰り、両親にそのことを話すと爆笑されてしまった。
早く会いたい。
潤はスマホを取り出してアルバムを開く。
楓の写真をタップした。
マッチングの通知とともに一緒に入っていた写真をスマホに取り込んだのだ。
それをうっとり眺めていると、一つ席を開けた右隣に二人の男が座った。二人ともアルファだ。フェロモンで分かる。
二人はアイスコーヒーを飲みながら話をしていた。
「誠也、ありがとな。本当に助かったよ。」
「いいって、お互い様だろ?この間はおまえに並んでもらったんだし。」
「とにかく手に入って良かったよ。凛がこのスニーカー欲しがっててさ。何としてでも手に入れたかったんだ。」
一人のアルファが海外ブランドの袋を大事そうに抱きしめている。その袋はリボンで飾られているので誰かへのプレゼントだろう。
落ち着いたオレンジ色の紙袋。潤も知っているブランドだ。
「この間の時計、湊くん、喜んでた?」
「ああ、めちゃくちゃ喜んでた。箱を開けた瞬間ぴょんぴょん飛び跳ねてかわいいのなんのって…」
もう一人のアルファがデレっと鼻の下を伸ばす。
おそらく恋人だろう。
「宏之、今週もオメガ学園に面会申請出したんだろ?」
「ああ、もちろん。誠也は?」
「俺も。週末、二人で京都に行くんだ。三日分外泊申請も出しといた。」
「また旅行?好きだね~。まあ俺たちも鎌倉だけど。毎週会わないと凛がダメなんだよ。」
「あはは、ダメなのはおまえだろ?凛、凛~って、この間酔っ払ったときずっと凛君の名前呼んでたぞ。」
「まあな。あー、一週間が長い。凛の卒業が待ち遠しい。早く一緒に暮らしたい。そしたらすぐ番になって…」
潤は自然と耳に入ってくる隣の会話を唖然としながら聞いていた。
今なんて?
オメガ学園?
外泊申請?
学園のオメガとは卒業するまで会えないんじゃないのか?
自分の聞き間違いかと思った潤はさらに注意深く隣に耳を傾ける。
しかし潤の聞き間違いではなかった。二人はオメガにいるマッチングしたオメガに会っているようなのだ。
右側の黒髪の男はマッチング相手のオメガと88%、左側の金髪は85%と言っている。
何で?という思いがぐるぐるし、どうして良い分からないでいると二人が席を立ち見せを出ようとする。潤はハッとしてその二人を追いかけた。
「あ、あの、すいません!」
振り返った二人は不審そうに潤を見ている。しかしそんなことには構っていられない。先ほどの話を聞きたいのだ。
「オメガ学園のこと、本当ですか?」
「は?」
いきなりの問いかけにその二人は顔を見合わせた。
「やべー、大きな声で話しすぎた。」
「誠也が浮かれてるからだよ。」
「おまえもな。」
しまった、という顔をしたということは、やはり話の内容は真実で聞かれては困ることだったのだ。
「君、どこの誰か知らないけど、黙っててね。」
「そうそう。極秘事項だから。」
極秘事項。
やはり本当のことなのだ。学園のオメガに会うことが出来る。
なぜ?
どうやって?
「どうやったら会えるんですか?俺も学園にマッチングしたオメガがいるんです!」
「え?」
「マジで?」
二人は潤をまじまじと見た後ヒソヒソと話し始めた。『アルファだけど…』『本当かよ、バッタリじゃね?』などと聞こえてくる。
初めてあった何処ぞのアルファを信用できないのも無理はない。潤は鞄の奥に大事にしまっていた物を取り出した。ファイリングしていつも持ち歩いているのだ。
「これ、見て下さい!本当です。」
潤が二人に差し出したものはマッチングの通知マッチングの通知だった。いつも大事に持ち歩いていて、時々眺めては楓に会える日を待ち侘びている。
それを手にした金髪のアルファはじっくりと眺め陽に透かしたり裏返したりしている。
「本物だ。」
「君もマッチングしたアルファなんだな。」
そう言ってその通知を潤に返し、二人はまた顔を見合わせ小さく頷いた。
そして潤にとっては衝撃の事実を口にしたのだ。
コーヒーショップのカウンターで潤は迷いなくアイスコーヒーのグランデを注文した。喉がひっつきそうなくらいカラカラだ。
潤の進学希望先は天下のT大。模試では常にA判定なので何も心配していない。
しかし真面目な潤は、念には念を入れて予備校に通い勉強をしている。
T大への進学は元々潤自身も希望していたが、合格したら両親から楓と同棲しても良いと言われているのだ。なので試験勉強への余念はない。絶対に合格し、楓を迎えに行く。
もうすでに住む所も決めている。
大学近くの2LDKのマンション。今まさに建設中の高層マンションだ。
マンションのパンフレットを一目見て気に入り、即購入の申し込みをした。といっても父に頼んだのだ。
人気のエリアで高倍率の物件だったので直接父に頼み最上階の角部屋の購入権を得たのだった。
「ふぅー。」
窓向きのカウンターの一番端に座ってひと息つく。冷たいアイスコーヒーが乾いた喉を通っていく。
生き返ったようだ。
今日の模試も手応えは十分だった。合格は間違いないだろう。
あと二年半、楓に会えないのは本当に辛い。
この間は居ても立っても居られなくなり、オメガ学園の前をウロウロと歩いていた所、警察に職質をされてしまった。
すごすごと家に帰り、両親にそのことを話すと爆笑されてしまった。
早く会いたい。
潤はスマホを取り出してアルバムを開く。
楓の写真をタップした。
マッチングの通知とともに一緒に入っていた写真をスマホに取り込んだのだ。
それをうっとり眺めていると、一つ席を開けた右隣に二人の男が座った。二人ともアルファだ。フェロモンで分かる。
二人はアイスコーヒーを飲みながら話をしていた。
「誠也、ありがとな。本当に助かったよ。」
「いいって、お互い様だろ?この間はおまえに並んでもらったんだし。」
「とにかく手に入って良かったよ。凛がこのスニーカー欲しがっててさ。何としてでも手に入れたかったんだ。」
一人のアルファが海外ブランドの袋を大事そうに抱きしめている。その袋はリボンで飾られているので誰かへのプレゼントだろう。
落ち着いたオレンジ色の紙袋。潤も知っているブランドだ。
「この間の時計、湊くん、喜んでた?」
「ああ、めちゃくちゃ喜んでた。箱を開けた瞬間ぴょんぴょん飛び跳ねてかわいいのなんのって…」
もう一人のアルファがデレっと鼻の下を伸ばす。
おそらく恋人だろう。
「宏之、今週もオメガ学園に面会申請出したんだろ?」
「ああ、もちろん。誠也は?」
「俺も。週末、二人で京都に行くんだ。三日分外泊申請も出しといた。」
「また旅行?好きだね~。まあ俺たちも鎌倉だけど。毎週会わないと凛がダメなんだよ。」
「あはは、ダメなのはおまえだろ?凛、凛~って、この間酔っ払ったときずっと凛君の名前呼んでたぞ。」
「まあな。あー、一週間が長い。凛の卒業が待ち遠しい。早く一緒に暮らしたい。そしたらすぐ番になって…」
潤は自然と耳に入ってくる隣の会話を唖然としながら聞いていた。
今なんて?
オメガ学園?
外泊申請?
学園のオメガとは卒業するまで会えないんじゃないのか?
自分の聞き間違いかと思った潤はさらに注意深く隣に耳を傾ける。
しかし潤の聞き間違いではなかった。二人はオメガにいるマッチングしたオメガに会っているようなのだ。
右側の黒髪の男はマッチング相手のオメガと88%、左側の金髪は85%と言っている。
何で?という思いがぐるぐるし、どうして良い分からないでいると二人が席を立ち見せを出ようとする。潤はハッとしてその二人を追いかけた。
「あ、あの、すいません!」
振り返った二人は不審そうに潤を見ている。しかしそんなことには構っていられない。先ほどの話を聞きたいのだ。
「オメガ学園のこと、本当ですか?」
「は?」
いきなりの問いかけにその二人は顔を見合わせた。
「やべー、大きな声で話しすぎた。」
「誠也が浮かれてるからだよ。」
「おまえもな。」
しまった、という顔をしたということは、やはり話の内容は真実で聞かれては困ることだったのだ。
「君、どこの誰か知らないけど、黙っててね。」
「そうそう。極秘事項だから。」
極秘事項。
やはり本当のことなのだ。学園のオメガに会うことが出来る。
なぜ?
どうやって?
「どうやったら会えるんですか?俺も学園にマッチングしたオメガがいるんです!」
「え?」
「マジで?」
二人は潤をまじまじと見た後ヒソヒソと話し始めた。『アルファだけど…』『本当かよ、バッタリじゃね?』などと聞こえてくる。
初めてあった何処ぞのアルファを信用できないのも無理はない。潤は鞄の奥に大事にしまっていた物を取り出した。ファイリングしていつも持ち歩いているのだ。
「これ、見て下さい!本当です。」
潤が二人に差し出したものはマッチングの通知マッチングの通知だった。いつも大事に持ち歩いていて、時々眺めては楓に会える日を待ち侘びている。
それを手にした金髪のアルファはじっくりと眺め陽に透かしたり裏返したりしている。
「本物だ。」
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そう言ってその通知を潤に返し、二人はまた顔を見合わせ小さく頷いた。
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