善夜家のオメガ

みこと

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「さっきからどうした?」

「え?」

スマホばかり気にしている涼に稔が怪訝な顔をする。

「いや、別に。」

「誰かからの連絡待ってんの?」

「そんなんじゃ…」

ポコンっとメッセージが受信される。涼はパッと立ち上がってそのメッセージを開いた。
『今、マンションに着きました。』
『夕飯は何が良いですか?』
今日は佑月がマンションに帰って来る。その連絡を待っていた。

「もしもし?」

稔たちから離れて佑月に電話する。

「涼君?」

名前を呼ぶ声だけで昇天しそうだ。

「佑月、身体平気か?」

「うん。明日から大学に行けるよ。」

「そうか。あ、夕飯要らないからな。俺が用意する。佑月はまだ寝てな。」

「もう大丈夫だよ。」

「ダメ。ちゃんと休んでないとダメだぞ。」

「ふふ。ありがとう。」

その後も少し話して通話を終えた。
あー、声までかわいい。今日から二人きりだ。早く帰りたい。

「誰?」

「うわっ!何だ、浩昭か。」

急に後ろからスマホを覗き込むように声をかけられ、驚いて飛び上がる。

「一体誰よ。『ちゃんと寝てないと怒っちゃうぞ!ぷんっ!』なんて甘~い声だしちゃって。」

「そんな事言ってない。誰だって良いだろ?」

揶揄ってくる浩昭たちを適当に受け流して佑月にメッセージを送った。


授業が終わると飛んで家に帰った。
浩昭たちが探りを入れてきたがそれを振り払って逃げてきた。別に隠すつもりはない。とにかく早く佑月の顔を見たかったのだ。
三階まで昇るエレベーターがこんなに遅く感じたことはない。
『ポーン』と音がしてエレベーターが開く。
息を整え部屋のドアの前に立ち、ゆっくりと開けた。
あ…居る。
ドアを開けた瞬間に分かった。佑月のフェロモンがふわりと流れてきた。
興奮と安心と幸せな感情が押し寄せた。

「おかえりなさい。」

佑月がパジャマ姿で自室から出て来る。
前髪はピンで留めてあってかわいい顔が良く見える。
神々しいまでのそのかわいさに涼は腰が抜けそうになった。

「あ、あ…た、ただ、いま。」

何とか正気を保ち中に入る。
佑月のフェロモンでくらくらする。
それでも吸い寄せられるように側に寄り頭を撫でると佑月が嬉しそうに微笑んだ。

「佑月…かわいいな。」

「えへへ。」

「かわいい…どうしよう。俺、もう…。」

佑月を引き寄せ抱きしめる。すっぽりと収まる小さな身体。すごくしっくりくる。そして柔らかくて良い匂いだ。

「佑月…佑月…。」

涼はうわごとのように佑月の名前を呼ぶ。近くで嗅ぐフェロモンに完全にやられてしまった。
佑月の顔を優しく上に向かせるとそっと唇を重ねた。
唇が熱い。
その熱が全身に広がる。

「佑月、かわいい…。好き、好き…かわいい…」

貪るように佑月の唇を吸った。



「涼君…苦しい…」

「はっ、ごめんっ!」

佑月の声で涼は我に帰る。帰ってきて早々に佑月にむしゃぶりついてしまった。

「ごめん、ごめんな?」

身体を離して佑月の顔を覗き込むと頬が赤く目が潤んでいる。
かわいいだけじゃなくものすごく色っぽい。

「あ…佑月。ダメだ…」

またキスしようと佑月を抱きしめるとピンポーンとインターホンが鳴った。
涼が頼んでおいた夕飯が来たのだ。
名残惜しいが佑月から身体を離し、それを受け取りダイニングテーブルに並べる。
手伝おうとしてくれる佑月を座らせて涼が手ずから食べさせた。

「美味しいか?」

「うん。でも自分で食べられるよ?」

「ダーメ。ほらあーん。」

差し出されたピラフを佑月がパクっと食べる。

「うーっ、かわいいっ!」

それだけで涼は悶絶していた。




佑月は寝る支度をしてベッドに入ると、しばらくして涼がドアをノックした。

「はい。」

ドアを開けた涼はスウェットを着て枕を持っている。

「佑月、一緒に寝ても良いか?」

「え?えっと、あの…。」

あまりに急な事で驚いていると涼が部屋に入ってきてベットに腰掛ける。

「大丈夫、何もしない。葉月にしつこく言われた。」

「うん。」

佑月はまだ発情期が来ない。アルファを受け入れる身体になっていないという事だ。

「一緒に寝るだけ。良い?」

「は、はい。」

佑月が少し身体を避けて場所を空けると涼が嬉しそうに潜り込んできた。

「はぁ、良い匂い。」

ぎゅーっと抱きついて首筋の匂いを嗅ぐ。

「ふふ、擽ったい。」

笑いながら佑月が身を捩るとぶわっとフェロモンが溢れた。

「あー、佑月…ダメ…」

そのフェロモンを思いっきり嗅いだ涼が佑月の唇に吸い付いてくる。手と足でがっちりホールドされた佑月は全く動けない。

「ん、涼、くん…、ふっ、あっ、」

「佑月…佑月、好き、大好きだ。佑月、」

さらにフェロモンが濃くなる。 
薄暗い部屋の中にくちゅくちゅと音が響く。
キスをすればするほど佑月のフェロモンが広がるので涼は止めることが出来ない。  

「涼君、ダメ…。」

「うん。分かってる。キスするだけだから…佑月、佑月…。」

涼は佑月のフェロモンに絡め取られて明け方近くまでキスを止めることが出来なかった。





「佑月、大丈夫か?ごめんな?」

「うん。平気…。」

朝のコーヒーショップで涼の左側に座っている佑月はうとうとと眠たそうだ。そんな佑月を涼は心配そうに背中を撫でている。

「本当にごめん。止まらなくて…。」

「ふふ。うん。」

昨夜のことを思い出して恥ずかしそうに笑う。ふわふわとフェロモンが香った。

「うっ…!ゆ、佑月。朝からダメだ。」

涼がパッと離れた。また暴走してしまいそうになる。
自分を落ち着かせるためコーヒーを一口飲む。ほどよい苦味と酸味が口に広がり、鼻へと抜けていった。

「ふぅ…。」

少し落ち着いた涼が佑月を見るとカフェオレをふーふー冷ましながら飲んでいるところだった。

「あ、美味しい。」

涼の方を向いてにっこりと微笑む。

「あーもう、めっちゃかわいい…。」

小さく呟いた涼は佑月に抱きつき顔中にキスをし始めた。
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