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リチャードは驚いて泣いているルエに手を差し伸べようとする。
「リチャード様、ごめんなさい、本当にごめんなさいっ!僕のせいで…うっ、えっ、」
「ルエ?」
ルエが泣きじゃくるのでリチャードの涙は引っ込んでしまった。何故ルエが謝っているのか分からない。
「ごめん、なさい。僕せいで…」
「ルエ?何を謝っているんだ?」
「僕のフェロモンで、リチャード様を…、リチャード様はオメガが嫌いなのに…、僕のフェロモンで巻き込んでしまって…あんなことに。本当にごめんなさい」
「待って、待ってくれルエ。」
リチャードはルエの両肩に手を置いた。
「ルエ、違う。確かに私はオメガが苦手だ。でもあれは、ルエの発情期は私が頼んだんだ。一緒に居たい、一緒に過ごしたいって。だからルエは悪くない。ルエは私に離れるように言ったんだ。それでも私がルエに頼んだんだよ。」
「え?リチャード様が?」
「そうだ。私がルエと一緒に居たかったんだ。あんなに酷い扱いをしたくせに、ルエの側に居たかった。」
リチャードはそのまま膝から崩れ落ちた。
「ルエ、本当にすまなかった。許してくれなくてもいい。でも、帰ってきてくれ。お願いだ。ルエが居ないと眠ることも食べることも出来ない…ルエが居ないとダメなんだ…。」
今度は泣きながら訴えるリチャードをルエが驚いて目を丸くする。
「ルエ、お願いだ。私を捨てないで…、お願い。ルエ、ルエ…」
「そういうことだ。」
扉が開きギルバートが入ってきた。
「ギル様…。」
ルエはルエにしがみついて泣くリチャードと扉の前に立つギルバートを驚きながら交互に見つめた。
「ほら、リチャード。泣いてないでちゃんとルエに話をしたのか?全く、いつからそんなに泣き上戸になったんだよ。」
リチャードが立ち上がりルエの手を取ろうとした時だ。
「ちょっと!あんたたち!何者だい?うちのルエにっ!」
厨房から現れた女将がリチャードとギルバートに殴りかかろうと、持っていたフライパンを大きく振り上げた。
「うわっ!」
「ちょっと待ってくれっ!」
「今度は誰だい!全く、性懲りもなくルエに近づくんじゃないよっ!!」
女将は店の中をフライパンを振り回しながら二人を追いかけ回している。
「おい、ルエっ!止めてくれ、頼む!」
ギルバートが手で頭を隠しながら逃げている。リチャードは壁際に追い詰められていた。
「あ、あの!女将さん、この人たちは違うんです。僕の知り合いなんですっ!」
「え?」
ルエの叫ぶ声に女将がぴたりと止まった。
それを見てリチャードとギルバートがへなへなと座り込んだ。
「あはは、悪かったね。てっきりルエを狙ってくるヤツかと思ってね。で?あんたがルエの旦那かい?」
「あ、はい…。」
リチャードは女将にぎろりと睨まれて大きな身体を小さく縮めている。
「あの、リチャード様は悪くなくて…僕がいけないんです。本当に、僕のせいで…」
「ルエは悪くない。私が全て悪いんだ。私が大バカ者だったばっかりに…。」
「そんな…リチャード様は、」
「いいや、全て私のせいだ。そのせいでルエを傷付けて…。」
「はぁ、分かったよ。イチャイチャするなら部屋でやりな。ルエ、ちゃんと旦那と話をするんだよ。あんたも!ルエを泣かすんじゃないよ。」
「「はい…。」」
「ここが僕の部屋です。狭いですけど…どうぞ。」
ルエに案内された部屋は納屋の二階にある古い部屋だった。
粗末なベッドにダイニングテーブルと椅子が一脚、小さなキッチンが付いている部屋だ。
リチャードはぐるりと中を見渡した。
こんな所で…。また涙が出てきた。
「ルエ、本当にすまなかった。」
部屋に入るなりリチャードは土下座した。
「え?リチャード様!やめて下さい。そんなことしないで下さい!」
ルエはリチャードを立ち上がらせた。イスが一脚しかないのでベッドに並んで座る。
リチャードは何故ルエと結婚したのか、何故会わなかったのか、そして離婚しようと思っていたことを正直に話した。
「そうなんですね。知れてよかったです。こんな所まで来て頂いて、すみませんでした。離婚は承諾します…」
「違うんだ。ルエ、これはルエに会うまでの話なんだ。」
「え?」
「ギルバートやノーマンに何度も言われた。一度でいいからルエに会ってみろと。本当にその通りだった。一目見て、私はルエを…いや、その前からだ。ルイとして出会った時からルエを、好きになって…その、だから…」
「好き…?」
「そうだ。ルエのことが好きなんだ。それもものすごく。居ないと生きていけないくらいに。ルエと過ごした発情期は今まで生きてきた中で一番幸せだった。だからさっきも言ったんだが、離婚したくない。ずっと一緒に居て欲しい。も、もちろん私のことを許せない、かも、しれない…。けど、けど、私は…。」
最後は涙で上手く言葉が出なくなってしまった。そんなリチャードをルエは驚いてじっと見つめる。
「僕はオメガですよ?」
「分かってる。それでも好きなんだ。いや、ルエがオメガで良かったと思っている。」
「僕はクロフォード邸に戻っても良いんですか?」
「もちろんだよ!戻ってきてくれるのか?ルエ、本当に?」
リチャードはベッドに座るルエの前に跪き手を握った。
「戻りたい…。リチャード様の所に戻りたいです。」
「ルエ、ルエ…戻ってきて。私の側に居て、お願いだ。」
「リチャード様、ごめんなさい、本当にごめんなさいっ!僕のせいで…うっ、えっ、」
「ルエ?」
ルエが泣きじゃくるのでリチャードの涙は引っ込んでしまった。何故ルエが謝っているのか分からない。
「ごめん、なさい。僕せいで…」
「ルエ?何を謝っているんだ?」
「僕のフェロモンで、リチャード様を…、リチャード様はオメガが嫌いなのに…、僕のフェロモンで巻き込んでしまって…あんなことに。本当にごめんなさい」
「待って、待ってくれルエ。」
リチャードはルエの両肩に手を置いた。
「ルエ、違う。確かに私はオメガが苦手だ。でもあれは、ルエの発情期は私が頼んだんだ。一緒に居たい、一緒に過ごしたいって。だからルエは悪くない。ルエは私に離れるように言ったんだ。それでも私がルエに頼んだんだよ。」
「え?リチャード様が?」
「そうだ。私がルエと一緒に居たかったんだ。あんなに酷い扱いをしたくせに、ルエの側に居たかった。」
リチャードはそのまま膝から崩れ落ちた。
「ルエ、本当にすまなかった。許してくれなくてもいい。でも、帰ってきてくれ。お願いだ。ルエが居ないと眠ることも食べることも出来ない…ルエが居ないとダメなんだ…。」
今度は泣きながら訴えるリチャードをルエが驚いて目を丸くする。
「ルエ、お願いだ。私を捨てないで…、お願い。ルエ、ルエ…」
「そういうことだ。」
扉が開きギルバートが入ってきた。
「ギル様…。」
ルエはルエにしがみついて泣くリチャードと扉の前に立つギルバートを驚きながら交互に見つめた。
「ほら、リチャード。泣いてないでちゃんとルエに話をしたのか?全く、いつからそんなに泣き上戸になったんだよ。」
リチャードが立ち上がりルエの手を取ろうとした時だ。
「ちょっと!あんたたち!何者だい?うちのルエにっ!」
厨房から現れた女将がリチャードとギルバートに殴りかかろうと、持っていたフライパンを大きく振り上げた。
「うわっ!」
「ちょっと待ってくれっ!」
「今度は誰だい!全く、性懲りもなくルエに近づくんじゃないよっ!!」
女将は店の中をフライパンを振り回しながら二人を追いかけ回している。
「おい、ルエっ!止めてくれ、頼む!」
ギルバートが手で頭を隠しながら逃げている。リチャードは壁際に追い詰められていた。
「あ、あの!女将さん、この人たちは違うんです。僕の知り合いなんですっ!」
「え?」
ルエの叫ぶ声に女将がぴたりと止まった。
それを見てリチャードとギルバートがへなへなと座り込んだ。
「あはは、悪かったね。てっきりルエを狙ってくるヤツかと思ってね。で?あんたがルエの旦那かい?」
「あ、はい…。」
リチャードは女将にぎろりと睨まれて大きな身体を小さく縮めている。
「あの、リチャード様は悪くなくて…僕がいけないんです。本当に、僕のせいで…」
「ルエは悪くない。私が全て悪いんだ。私が大バカ者だったばっかりに…。」
「そんな…リチャード様は、」
「いいや、全て私のせいだ。そのせいでルエを傷付けて…。」
「はぁ、分かったよ。イチャイチャするなら部屋でやりな。ルエ、ちゃんと旦那と話をするんだよ。あんたも!ルエを泣かすんじゃないよ。」
「「はい…。」」
「ここが僕の部屋です。狭いですけど…どうぞ。」
ルエに案内された部屋は納屋の二階にある古い部屋だった。
粗末なベッドにダイニングテーブルと椅子が一脚、小さなキッチンが付いている部屋だ。
リチャードはぐるりと中を見渡した。
こんな所で…。また涙が出てきた。
「ルエ、本当にすまなかった。」
部屋に入るなりリチャードは土下座した。
「え?リチャード様!やめて下さい。そんなことしないで下さい!」
ルエはリチャードを立ち上がらせた。イスが一脚しかないのでベッドに並んで座る。
リチャードは何故ルエと結婚したのか、何故会わなかったのか、そして離婚しようと思っていたことを正直に話した。
「そうなんですね。知れてよかったです。こんな所まで来て頂いて、すみませんでした。離婚は承諾します…」
「違うんだ。ルエ、これはルエに会うまでの話なんだ。」
「え?」
「ギルバートやノーマンに何度も言われた。一度でいいからルエに会ってみろと。本当にその通りだった。一目見て、私はルエを…いや、その前からだ。ルイとして出会った時からルエを、好きになって…その、だから…」
「好き…?」
「そうだ。ルエのことが好きなんだ。それもものすごく。居ないと生きていけないくらいに。ルエと過ごした発情期は今まで生きてきた中で一番幸せだった。だからさっきも言ったんだが、離婚したくない。ずっと一緒に居て欲しい。も、もちろん私のことを許せない、かも、しれない…。けど、けど、私は…。」
最後は涙で上手く言葉が出なくなってしまった。そんなリチャードをルエは驚いてじっと見つめる。
「僕はオメガですよ?」
「分かってる。それでも好きなんだ。いや、ルエがオメガで良かったと思っている。」
「僕はクロフォード邸に戻っても良いんですか?」
「もちろんだよ!戻ってきてくれるのか?ルエ、本当に?」
リチャードはベッドに座るルエの前に跪き手を握った。
「戻りたい…。リチャード様の所に戻りたいです。」
「ルエ、ルエ…戻ってきて。私の側に居て、お願いだ。」
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