みにくいオメガの子

みこと

文字の大きさ
上 下
29 / 30

21 最終話

しおりを挟む
「由紀、祐一さんどう?」

「何かすごくて…。一日中離してくれない。」

「あはは、紳士の化けの皮が剥がれたね。まぁアルファなんてそんなもんだよ。」

「え?トシくんも?」

真紘はおもむろにワイシャツの一番上とその下のボタンを外して胸元を開いた。

「うわっ!」

首から下はキスマークがびっしりついていた。

「な?すごいだろ?着れる服が限られちゃうよ。ずっとエッチしてないんだよ?でもマーキングだって。」

ボタンを閉め直しながらぼやいている。
真紘はあの事件があってからトシくんに反省させる意味を込めて『おあずけ』にしている。
それでもあのキスマークか…。

「そんなことより盗聴器の犯人、あの人だったんだな。」

「うん。良かったよ。早めに見つかって。祐一さんがかなり頑張ってくれたんだ。」

盗聴器を仕掛けた人物は千聖さんだった。
千聖さんと何度も会ったのは偶然なんかじゃなかったのだ。盗聴して僕の予定を把握していただけだった。
『好きだから、何とかしてものにしたかった』と言われた。
全く反省していない態度に祐一さんは怒り狂って千聖さんを警察に突き出した。
でも大した罪にはならないみたいだ。それに千聖さんの家は法曹界の偉い人だと言っていた。
祐一さんが『由紀に二度と近づかない』という誓約書を千聖さんに書かせていた。

「早く番いになった方が良いのかな?」

真紘がお弁当のだし巻き卵をつつきながら言った。

「うーん、番っちゃえば安全だけどもう少し見極めたい。」

たぶんこのままいけば祐一さんと番うだろう。
優しくて僕のことを一番に考えてくれる。
真紘はきっとトシくんとだ。なんだかんだでお似合いの二人だもの。

「そうだよね。一生のことだもん。アルファは少しヤキモキした方が良いよ。あ、そうだ。土曜日、十時でいい?」

「うん。大丈夫。桜ヶ丘駅のスターコーヒーでしょ?」

「そう。その日はそのまま祐一さんのところに泊まるんだろ?」

「うん。」

犯人が捕まったので約束通り家に帰った。祐一さんは寂しい、寂しいと言って抱きついてなかなか離してくれなかった。
どうやったのか、僕の母親に取り入って週末だけお泊まりの許可をもらっていた。
それを真紘に言ったら『典型的なアルファだね』と呆れていた。目的のためなら手段は選ばないらしい。
でも実際、祐一さんに勉強を見てもらってから成績も上がったし、僕も一緒にいたい。祐一さんのフェロモンはとても安心する。

僕と真紘はいつ番いになるかを検討中だ。
僕たちは大学に進学して出来たら就職もしたい。自立して番いになりたいと思うようになった。前の僕からは考えられないことだ。とにかく番い相手を探すことに一生懸命だった。
この数ヶ月でいろんなアルファを見てアルファは完璧じゃないということが分かった。むしろ変な人の方が多いのかもしれない。
だから僕は僕で生きていけるように頑張ろうと思う。
今、とても清々しい気持ちだ。まるで翼を広げて大空へ飛び立つような感じ。
真紘もいるし、祐一さんも居てくれる。母さんはいつも僕の味方だ。
みんなを大事にして目一杯人生を楽しんで頑張ろうと思った。

~fin.~

お読みいただきありがとうございました。
最後に真紘視点の番外編があります。
この番外編の内容を書きたくてこのお話を作りました。

そしてオメガバースものの新しい作品も公開中です(´∀`*)
興味のある方はご覧下さい。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

βの僕、激強αのせいでΩにされた話

ずー子
BL
オメガバース。BL。主人公君はβ→Ω。 αに言い寄られるがβなので相手にせず、Ωの優等生に片想いをしている。それがαにバレて色々あってΩになっちゃう話です。 β(Ω)視点→α視点。アレな感じですが、ちゃんとラブラブエッチです。 他の小説サイトにも登録してます。

【オメガの疑似体験ができる媚薬】を飲んだら、好きだったアルファに抱き潰された

亜沙美多郎
BL
ベータの友人が「オメガの疑似体験が出来る媚薬」をくれた。彼女に使えと言って渡されたが、郁人が想いを寄せているのはアルファの同僚・隼瀬だった。 隼瀬はオメガが大好き。モテモテの彼は絶えずオメガの恋人がいた。 『ベータはベータと』そんな暗黙のルールがある世間で、誰にも言えるはずもなく気持ちをひた隠しにしてきた。 ならばせめて隼瀬に抱かれるのを想像しながら、恋人気分を味わいたい。 社宅で一人になれる夜を狙い、郁人は自分で媚薬を飲む。 本物のオメガになれた気がするほど、気持ちいい。媚薬の効果もあり自慰行為に夢中になっていると、あろう事か隼瀬が部屋に入ってきた。 郁人の霰も無い姿を見た隼瀬は、擬似オメガのフェロモンに当てられ、郁人を抱く……。 前編、中編、後編に分けて投稿します。 全編Rー18です。 アルファポリスBLランキング4位。 ムーンライトノベルズ BL日間、総合、短編1位。 BL週間総合3位、短編1位。月間短編4位。 pixiv ブクマ数2600突破しました。 各サイトでの応援、ありがとうございます。

巣作りΩと優しいα

伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。 そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……

婚約者は俺にだけ冷たい

円みやび
BL
藍沢奏多は王子様と噂されるほどのイケメン。 そんなイケメンの婚約者である古川優一は日々の奏多の行動に傷つきながらも文句を言えずにいた。 それでも過去の思い出から奏多との別れを決意できない優一。 しかし、奏多とΩの絡みを見てしまい全てを終わらせることを決める。 ザマァ系を期待している方にはご期待に沿えないかもしれません。 前半は受け君がだいぶ不憫です。 他との絡みが少しだけあります。 あまりキツイ言葉でコメントするのはやめて欲しいです。 ただの素人の小説です。 ご容赦ください。

可愛くない僕は愛されない…はず

おがこは
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。 押しが強いスパダリα ‪✕‬‪‪ 逃げるツンツンデレΩ ハッピーエンドです! 病んでる受けが好みです。 闇描写大好きです(*´`) ※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております! また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

処理中です...