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21 最終話
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「由紀、祐一さんどう?」
「何かすごくて…。一日中離してくれない。」
「あはは、紳士の化けの皮が剥がれたね。まぁアルファなんてそんなもんだよ。」
「え?トシくんも?」
真紘はおもむろにワイシャツの一番上とその下のボタンを外して胸元を開いた。
「うわっ!」
首から下はキスマークがびっしりついていた。
「な?すごいだろ?着れる服が限られちゃうよ。ずっとエッチしてないんだよ?でもマーキングだって。」
ボタンを閉め直しながらぼやいている。
真紘はあの事件があってからトシくんに反省させる意味を込めて『おあずけ』にしている。
それでもあのキスマークか…。
「そんなことより盗聴器の犯人、あの人だったんだな。」
「うん。良かったよ。早めに見つかって。祐一さんがかなり頑張ってくれたんだ。」
盗聴器を仕掛けた人物は千聖さんだった。
千聖さんと何度も会ったのは偶然なんかじゃなかったのだ。盗聴して僕の予定を把握していただけだった。
『好きだから、何とかしてものにしたかった』と言われた。
全く反省していない態度に祐一さんは怒り狂って千聖さんを警察に突き出した。
でも大した罪にはならないみたいだ。それに千聖さんの家は法曹界の偉い人だと言っていた。
祐一さんが『由紀に二度と近づかない』という誓約書を千聖さんに書かせていた。
「早く番いになった方が良いのかな?」
真紘がお弁当のだし巻き卵をつつきながら言った。
「うーん、番っちゃえば安全だけどもう少し見極めたい。」
たぶんこのままいけば祐一さんと番うだろう。
優しくて僕のことを一番に考えてくれる。
真紘はきっとトシくんとだ。なんだかんだでお似合いの二人だもの。
「そうだよね。一生のことだもん。アルファは少しヤキモキした方が良いよ。あ、そうだ。土曜日、十時でいい?」
「うん。大丈夫。桜ヶ丘駅のスターコーヒーでしょ?」
「そう。その日はそのまま祐一さんのところに泊まるんだろ?」
「うん。」
犯人が捕まったので約束通り家に帰った。祐一さんは寂しい、寂しいと言って抱きついてなかなか離してくれなかった。
どうやったのか、僕の母親に取り入って週末だけお泊まりの許可をもらっていた。
それを真紘に言ったら『典型的なアルファだね』と呆れていた。目的のためなら手段は選ばないらしい。
でも実際、祐一さんに勉強を見てもらってから成績も上がったし、僕も一緒にいたい。祐一さんのフェロモンはとても安心する。
僕と真紘はいつ番いになるかを検討中だ。
僕たちは大学に進学して出来たら就職もしたい。自立して番いになりたいと思うようになった。前の僕からは考えられないことだ。とにかく番い相手を探すことに一生懸命だった。
この数ヶ月でいろんなアルファを見てアルファは完璧じゃないということが分かった。むしろ変な人の方が多いのかもしれない。
だから僕は僕で生きていけるように頑張ろうと思う。
今、とても清々しい気持ちだ。まるで翼を広げて大空へ飛び立つような感じ。
真紘もいるし、祐一さんも居てくれる。母さんはいつも僕の味方だ。
みんなを大事にして目一杯人生を楽しんで頑張ろうと思った。
~fin.~
お読みいただきありがとうございました。
最後に真紘視点の番外編があります。
この番外編の内容を書きたくてこのお話を作りました。
そしてオメガバースものの新しい作品も公開中です(´∀`*)
興味のある方はご覧下さい。
「何かすごくて…。一日中離してくれない。」
「あはは、紳士の化けの皮が剥がれたね。まぁアルファなんてそんなもんだよ。」
「え?トシくんも?」
真紘はおもむろにワイシャツの一番上とその下のボタンを外して胸元を開いた。
「うわっ!」
首から下はキスマークがびっしりついていた。
「な?すごいだろ?着れる服が限られちゃうよ。ずっとエッチしてないんだよ?でもマーキングだって。」
ボタンを閉め直しながらぼやいている。
真紘はあの事件があってからトシくんに反省させる意味を込めて『おあずけ』にしている。
それでもあのキスマークか…。
「そんなことより盗聴器の犯人、あの人だったんだな。」
「うん。良かったよ。早めに見つかって。祐一さんがかなり頑張ってくれたんだ。」
盗聴器を仕掛けた人物は千聖さんだった。
千聖さんと何度も会ったのは偶然なんかじゃなかったのだ。盗聴して僕の予定を把握していただけだった。
『好きだから、何とかしてものにしたかった』と言われた。
全く反省していない態度に祐一さんは怒り狂って千聖さんを警察に突き出した。
でも大した罪にはならないみたいだ。それに千聖さんの家は法曹界の偉い人だと言っていた。
祐一さんが『由紀に二度と近づかない』という誓約書を千聖さんに書かせていた。
「早く番いになった方が良いのかな?」
真紘がお弁当のだし巻き卵をつつきながら言った。
「うーん、番っちゃえば安全だけどもう少し見極めたい。」
たぶんこのままいけば祐一さんと番うだろう。
優しくて僕のことを一番に考えてくれる。
真紘はきっとトシくんとだ。なんだかんだでお似合いの二人だもの。
「そうだよね。一生のことだもん。アルファは少しヤキモキした方が良いよ。あ、そうだ。土曜日、十時でいい?」
「うん。大丈夫。桜ヶ丘駅のスターコーヒーでしょ?」
「そう。その日はそのまま祐一さんのところに泊まるんだろ?」
「うん。」
犯人が捕まったので約束通り家に帰った。祐一さんは寂しい、寂しいと言って抱きついてなかなか離してくれなかった。
どうやったのか、僕の母親に取り入って週末だけお泊まりの許可をもらっていた。
それを真紘に言ったら『典型的なアルファだね』と呆れていた。目的のためなら手段は選ばないらしい。
でも実際、祐一さんに勉強を見てもらってから成績も上がったし、僕も一緒にいたい。祐一さんのフェロモンはとても安心する。
僕と真紘はいつ番いになるかを検討中だ。
僕たちは大学に進学して出来たら就職もしたい。自立して番いになりたいと思うようになった。前の僕からは考えられないことだ。とにかく番い相手を探すことに一生懸命だった。
この数ヶ月でいろんなアルファを見てアルファは完璧じゃないということが分かった。むしろ変な人の方が多いのかもしれない。
だから僕は僕で生きていけるように頑張ろうと思う。
今、とても清々しい気持ちだ。まるで翼を広げて大空へ飛び立つような感じ。
真紘もいるし、祐一さんも居てくれる。母さんはいつも僕の味方だ。
みんなを大事にして目一杯人生を楽しんで頑張ろうと思った。
~fin.~
お読みいただきありがとうございました。
最後に真紘視点の番外編があります。
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