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「由紀くん!」
『救急救命センター』と書かれているガラス扉の前に立ち尽くしていると、トシくんと祐一さんが走って来るのが見えた。
「真紘は?何があった?」
僕はさっきのことを話した。パニックになって身体が震えて上手く話せたか分からない。
祐一さんが肩を抱いてくれていた。
「俺のことを知ってるオメガ?」
「はい。『俊之のオメガは』って言ってました。」
「まさか…。」
トシくんは真っ青になって膝から崩れた。
「俊之?そいつを知ってるのか?」
祐一さんが聞いたけどトシくんは茫然として何も答えなかった。
「俊之さん!」
そのすぐ後に真紘のご両親が息を切らして走ってきた。
トシくんが電話して呼んだみたいだ。
「真紘は?真紘はどこ?」
「おばさん…。」
「由紀くん!真紘は?何があったの⁉︎」
僕が話し出そうとすると『救急救命センター』の自動扉が開いて水色の白衣を着た人が出てきた。
「星野真紘さんのご家族の方は…?」
「私たちです。真紘は息子ですっ!」
真紘のご両親が呼ばれて中に入っていった。
トシくんもご両親にお願いして一緒に入った。
祐一さんに促されて『救急救命センター』の前の長椅子に座った。
ずっと肩を抱いたり背中をさすってくれている。
「由紀くん大丈夫?」
「真紘が死んじゃったら…どうしよう…。」
祐一さんの胸に顔を埋めて泣いた。
十五分ほどで三人が出てきた。真紘の母は泣いている。
僕は立ち上がって駆け寄った。
「おばさん、真紘は?」
「由紀くん、大丈夫よ。内臓は傷付いてないって。血管を縫ったっていってた。今は麻酔で寝ているけど命に別状ないみたい…。」
良かった…。また涙が溢れてきた。
俊之さんは青い顔をして茫然としている。
事件なので今から警察が来る。二日続けて警察の厄介になるとは…。
僕は真紘が無事だと分かって気が抜けて座り込んでしまった。
「由紀くんっ!」
祐一さんが抱き起こしてくれて、そのまま長椅子に座らせてくれる。
「お義父さん、お義母さん。大変申し訳ありません。」
トシくんが急に頭を下げた。
僕たち全員は驚いてそれを見つめる。
何?何で謝ってるの?
「真紘くんを刺したオメガは恐らく私の知り合いです。」
刺したオメガとは真紘と出会う前に関係があったようだ。
真紘と付き合ってからは関係があった人たちはきちんと精算したはずだった。
一人だけしつこいオメガがいたがお金を払って終わりにした。自分がいい加減に生きてきたせいで真紘をこんな危険な目に合わせてしまった。何よりも大事な存在なのに…。
そう言って泣いていた。
「俊之くん、顔を上げて下さい。」
真紘のお父さんが声をかけた。
「俊之くんが真紘を大事に思ってくれているのは分かってます。もちろん、君に全く非がない訳ではない。今後の事は真紘と相談して決めましょう。」
俊之さんは泣きながら顔を上げた。
「あ、家に電話しないと。」
もう二十三時を過ぎている。母が心配しているはずだ。
スマホを取り出すと何件もの着信とメッセージが入っていた。
真紘のお母さんが僕の代わりに電話をしてくれた。母は今から来ると言っている。
「お母さん…。」
電話を変わってもらい母の声を聞くと安心してまた涙が出てきた。
「由紀っ!良かった。心配したのよ。お母さん、今から行くから。」
「うん。」
その後すぐに警察が来て事情を聞かれた。僕は未成年なのですぐに帰してもらえるみたいだ。
俊之さんはそのオメガのことを聞かれていた。
「由紀くん大丈夫?」
祐一さんが暖かい紅茶を買ってきてくれた。長椅子に座ってそれを飲む。
甘くて暖かい…。少し気持ちが落ち着いた。
真紘のご両親が看護師に呼ばれた。真紘が目を覚ましたと言っている。僕も会いたかったけど家族ではないので入れない。
でも明日には一般病棟に移れるのでお見舞いに来れる。
救急救命センターから出てきた真紘のご両親に何度もお礼を言われた。
「由紀!」
「お母さん…。」
母だ。走って僕のところに来た。僕に何もない事を確認して真紘のご両親と話をしている。
どうしよう。祐一さんを紹介した方がいいのかな?
祐一さんを見るとにこりと笑った。
「また今度改めて挨拶に行くよ。」
祐一さんは顔を近づけて小声で言った。
母は警察官とも話をして僕は帰れることになった。
『救急救命センター』と書かれているガラス扉の前に立ち尽くしていると、トシくんと祐一さんが走って来るのが見えた。
「真紘は?何があった?」
僕はさっきのことを話した。パニックになって身体が震えて上手く話せたか分からない。
祐一さんが肩を抱いてくれていた。
「俺のことを知ってるオメガ?」
「はい。『俊之のオメガは』って言ってました。」
「まさか…。」
トシくんは真っ青になって膝から崩れた。
「俊之?そいつを知ってるのか?」
祐一さんが聞いたけどトシくんは茫然として何も答えなかった。
「俊之さん!」
そのすぐ後に真紘のご両親が息を切らして走ってきた。
トシくんが電話して呼んだみたいだ。
「真紘は?真紘はどこ?」
「おばさん…。」
「由紀くん!真紘は?何があったの⁉︎」
僕が話し出そうとすると『救急救命センター』の自動扉が開いて水色の白衣を着た人が出てきた。
「星野真紘さんのご家族の方は…?」
「私たちです。真紘は息子ですっ!」
真紘のご両親が呼ばれて中に入っていった。
トシくんもご両親にお願いして一緒に入った。
祐一さんに促されて『救急救命センター』の前の長椅子に座った。
ずっと肩を抱いたり背中をさすってくれている。
「由紀くん大丈夫?」
「真紘が死んじゃったら…どうしよう…。」
祐一さんの胸に顔を埋めて泣いた。
十五分ほどで三人が出てきた。真紘の母は泣いている。
僕は立ち上がって駆け寄った。
「おばさん、真紘は?」
「由紀くん、大丈夫よ。内臓は傷付いてないって。血管を縫ったっていってた。今は麻酔で寝ているけど命に別状ないみたい…。」
良かった…。また涙が溢れてきた。
俊之さんは青い顔をして茫然としている。
事件なので今から警察が来る。二日続けて警察の厄介になるとは…。
僕は真紘が無事だと分かって気が抜けて座り込んでしまった。
「由紀くんっ!」
祐一さんが抱き起こしてくれて、そのまま長椅子に座らせてくれる。
「お義父さん、お義母さん。大変申し訳ありません。」
トシくんが急に頭を下げた。
僕たち全員は驚いてそれを見つめる。
何?何で謝ってるの?
「真紘くんを刺したオメガは恐らく私の知り合いです。」
刺したオメガとは真紘と出会う前に関係があったようだ。
真紘と付き合ってからは関係があった人たちはきちんと精算したはずだった。
一人だけしつこいオメガがいたがお金を払って終わりにした。自分がいい加減に生きてきたせいで真紘をこんな危険な目に合わせてしまった。何よりも大事な存在なのに…。
そう言って泣いていた。
「俊之くん、顔を上げて下さい。」
真紘のお父さんが声をかけた。
「俊之くんが真紘を大事に思ってくれているのは分かってます。もちろん、君に全く非がない訳ではない。今後の事は真紘と相談して決めましょう。」
俊之さんは泣きながら顔を上げた。
「あ、家に電話しないと。」
もう二十三時を過ぎている。母が心配しているはずだ。
スマホを取り出すと何件もの着信とメッセージが入っていた。
真紘のお母さんが僕の代わりに電話をしてくれた。母は今から来ると言っている。
「お母さん…。」
電話を変わってもらい母の声を聞くと安心してまた涙が出てきた。
「由紀っ!良かった。心配したのよ。お母さん、今から行くから。」
「うん。」
その後すぐに警察が来て事情を聞かれた。僕は未成年なのですぐに帰してもらえるみたいだ。
俊之さんはそのオメガのことを聞かれていた。
「由紀くん大丈夫?」
祐一さんが暖かい紅茶を買ってきてくれた。長椅子に座ってそれを飲む。
甘くて暖かい…。少し気持ちが落ち着いた。
真紘のご両親が看護師に呼ばれた。真紘が目を覚ましたと言っている。僕も会いたかったけど家族ではないので入れない。
でも明日には一般病棟に移れるのでお見舞いに来れる。
救急救命センターから出てきた真紘のご両親に何度もお礼を言われた。
「由紀!」
「お母さん…。」
母だ。走って僕のところに来た。僕に何もない事を確認して真紘のご両親と話をしている。
どうしよう。祐一さんを紹介した方がいいのかな?
祐一さんを見るとにこりと笑った。
「また今度改めて挨拶に行くよ。」
祐一さんは顔を近づけて小声で言った。
母は警察官とも話をして僕は帰れることになった。
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