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「もしもし。」
「あ、由紀くん?」
「はい。どうしたんですか?」
「あの、俊之に聞いたんだけど…。」
話の内容は他のアルファとデートするのは本当なのかと確かめる内容だった。ウソをついてもしょうがないのでデートすると伝えた。
「え?本当に?そ、そのアルファが好きなの?」
祐一さんの声は明らかに動揺していた。何だか申し訳なくなってきた。
「いいえ。叔母さんの知り合いです。」
「そうか…。」
すごく悪い事をしている気持ちだ。
「ごめんなさい…。」
「いや、良いんだよ。俺こそごめん。」
電話はそれで終わった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「問題集やってみたけど難し過ぎる。」
「僕も一人では無理だった。トシくんに教えてもらいながらやったよ。」
真紘には良い家庭教師がいる。真紘の問題集を見ると丁寧に説明が書いてある。トシくんが一生懸命教えてくれているのが伝わってくる。
「トシくんは進学するの反対じゃなかったの?」
「うん。でも真紘のやりたいようにしなって。進学したいなら勉強も見てくれる。その代わり卒業したら一緒に住む約束をしちゃった。」
良いな。トシくんの説明は分かりやすかった。僕もそれを写させてもらう。
「あ、祐一さんに家庭教師頼んだら?祐一さんも就活ないみたいだし。」
トシくんも祐一さんも家業を継ぐためにその関連会社の就職が決まっている。
「でも、悪いよ。あとバカだなって思われちゃう。」
「うん、分かる。トシくんに補修のこと言えなかった。あと古典が赤点だったことも。まぁでも結局言ったけどね。バカにされなかった。真剣に受験の傾向と対策を練ってくれたよ。」
やっぱりT大生は違うな。真紘はトシくんと番いになる予定だから良いけど、祐一さんが僕に教える義理はないよな。
来週から予備校に行くのでそれで頑張ろう。真紘も行くって言ってたし。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「行ってきます。」
智明さんとデートだ。どこに行くかはお任せした。
家の前まで車で迎えに来てくれた。念のためネックガード着けた。
「由紀くん、新しくできたショッピングモールに行ってみない?」
「はい。」
智明さんの車は真っ赤なスポーツカーだ。本当にこんな車に乗る人がいるんだ。でも智明さんによく似合っている。
「ネックガードしてきたんだ。」
「一応…。」
「すごい良いやつだね?誰かにもらったの?」
チラッと僕を見ながら言った。何だかゾワゾワする。
「はい。一個も持っていないって言ったら知り合いがくれました。」
「ふーん。俺がもっと良いのを買ってあげるよ。」
智明さんは笑ってるけど何か怖い。
三十分ほどでショッピングモールに着いた。
うちの近くのショッピングモールよりも少しお高めのショップが入っている。
二人でいろんなショップを見て回った。
お昼になったのでモールの中のアジア料理のお店に入った。
半個室の席に案内される。
智明さんがその店を選んだんだけど…。
僕は激辛とパクチーが苦手だ。食べられるものはあるかな?
智明さんはメニューを見てどんどん注文している。僕はやっと飲み物だけを頼んだ。
「由紀くん、僕の番いにならない?」
「え?」
え?急に?番い?
「すごいタイプだ。こんなに可愛いって分かってたら…。」
飲み物が運ばれた。僕はアイスティーだ。ミルクとガムシロを入れて混ぜた。
「今年卒業なんでしょ?うちに来なよ。働かなくても食べさせてあげる。」
何か嫌な言い方だ。
智明さんの家は華道の家元で元華族の高貴な家柄らしい。智明さんのお母さんが家元でお父さんは不動産業を営んでいる。相当な資産家だと知子叔母さんが言っていた。
お金持ちはみんなこうなのかな?
料理はやっぱり辛くてパクチーもたっぷり入っていた。何とか頑張って食べたけどあまり食べられなかった。
「由紀くんは少食だね。」
嫌いだとも言えず笑って誤魔化した。
「ネックガード見に行こうよ。」
一階のネックガード専門店に連れてこられた。ネットでも見たことがある有名なお店だ。店内は広くカップルが何組かいる。
僕はこれが気に入ってるんだけどな。
「これはどう?」
赤!真っ赤なネックガードに宝石が散りばめられている。
「ちょっと派手すぎるかも…。」
「え?そうかな?」
智明さんはちょっと嫌そうな顔をした。
さっきからモヤモヤしていたものがハッキリした。智明さんは有無を言わさないところがある。僕の意見を言いづらい雰囲気だ。
それでもお店の人に聞きながらいろいろ見ていた。
「智明!」
智明さんを呼ぶ声に振り返った。
その声の主は僕と同じ歳くらいのオメガの男の子だ。
「湊…。何でこんな所にいるんだよ。」
智明さんは一瞬驚いたけどすぐにイライラした様子になった。
「智明がここにいるって。見かけた人が教えてくれた。その子は誰?」
「おまえに関係ないだろ?」
「関係なくないよ。僕たち番いになるんだろ?」
えっ?どういうこと?僕は驚いて智明さんを見た。浮気ってこと?さっき僕と番いになるって言ってたよね?
「由紀くん、大丈夫だから。」
「え?智明さん…?」
「湊、おまえとは番いにならない。由紀くんと番いになる。」
えーーーっ!勝手なこと言わないで!
僕はただオロオロするだけで何も言えなかった。
「僕のことは捨てるってこと?」
「そういうことだ。由紀くんの方がタイプだし。」
何て人だ!
僕は智明さんとは番いにならないと言おうとした。
えっ…。
湊と呼ばれたオメガがポケットからナイフを取り出した。
店の中がざわつく。
「おまえが智明を誘惑したんだな?」
ナイフを僕に向かって突き付けた。驚きと恐怖で身体が動かない。
「あ、由紀くん?」
「はい。どうしたんですか?」
「あの、俊之に聞いたんだけど…。」
話の内容は他のアルファとデートするのは本当なのかと確かめる内容だった。ウソをついてもしょうがないのでデートすると伝えた。
「え?本当に?そ、そのアルファが好きなの?」
祐一さんの声は明らかに動揺していた。何だか申し訳なくなってきた。
「いいえ。叔母さんの知り合いです。」
「そうか…。」
すごく悪い事をしている気持ちだ。
「ごめんなさい…。」
「いや、良いんだよ。俺こそごめん。」
電話はそれで終わった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「問題集やってみたけど難し過ぎる。」
「僕も一人では無理だった。トシくんに教えてもらいながらやったよ。」
真紘には良い家庭教師がいる。真紘の問題集を見ると丁寧に説明が書いてある。トシくんが一生懸命教えてくれているのが伝わってくる。
「トシくんは進学するの反対じゃなかったの?」
「うん。でも真紘のやりたいようにしなって。進学したいなら勉強も見てくれる。その代わり卒業したら一緒に住む約束をしちゃった。」
良いな。トシくんの説明は分かりやすかった。僕もそれを写させてもらう。
「あ、祐一さんに家庭教師頼んだら?祐一さんも就活ないみたいだし。」
トシくんも祐一さんも家業を継ぐためにその関連会社の就職が決まっている。
「でも、悪いよ。あとバカだなって思われちゃう。」
「うん、分かる。トシくんに補修のこと言えなかった。あと古典が赤点だったことも。まぁでも結局言ったけどね。バカにされなかった。真剣に受験の傾向と対策を練ってくれたよ。」
やっぱりT大生は違うな。真紘はトシくんと番いになる予定だから良いけど、祐一さんが僕に教える義理はないよな。
来週から予備校に行くのでそれで頑張ろう。真紘も行くって言ってたし。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「行ってきます。」
智明さんとデートだ。どこに行くかはお任せした。
家の前まで車で迎えに来てくれた。念のためネックガード着けた。
「由紀くん、新しくできたショッピングモールに行ってみない?」
「はい。」
智明さんの車は真っ赤なスポーツカーだ。本当にこんな車に乗る人がいるんだ。でも智明さんによく似合っている。
「ネックガードしてきたんだ。」
「一応…。」
「すごい良いやつだね?誰かにもらったの?」
チラッと僕を見ながら言った。何だかゾワゾワする。
「はい。一個も持っていないって言ったら知り合いがくれました。」
「ふーん。俺がもっと良いのを買ってあげるよ。」
智明さんは笑ってるけど何か怖い。
三十分ほどでショッピングモールに着いた。
うちの近くのショッピングモールよりも少しお高めのショップが入っている。
二人でいろんなショップを見て回った。
お昼になったのでモールの中のアジア料理のお店に入った。
半個室の席に案内される。
智明さんがその店を選んだんだけど…。
僕は激辛とパクチーが苦手だ。食べられるものはあるかな?
智明さんはメニューを見てどんどん注文している。僕はやっと飲み物だけを頼んだ。
「由紀くん、僕の番いにならない?」
「え?」
え?急に?番い?
「すごいタイプだ。こんなに可愛いって分かってたら…。」
飲み物が運ばれた。僕はアイスティーだ。ミルクとガムシロを入れて混ぜた。
「今年卒業なんでしょ?うちに来なよ。働かなくても食べさせてあげる。」
何か嫌な言い方だ。
智明さんの家は華道の家元で元華族の高貴な家柄らしい。智明さんのお母さんが家元でお父さんは不動産業を営んでいる。相当な資産家だと知子叔母さんが言っていた。
お金持ちはみんなこうなのかな?
料理はやっぱり辛くてパクチーもたっぷり入っていた。何とか頑張って食べたけどあまり食べられなかった。
「由紀くんは少食だね。」
嫌いだとも言えず笑って誤魔化した。
「ネックガード見に行こうよ。」
一階のネックガード専門店に連れてこられた。ネットでも見たことがある有名なお店だ。店内は広くカップルが何組かいる。
僕はこれが気に入ってるんだけどな。
「これはどう?」
赤!真っ赤なネックガードに宝石が散りばめられている。
「ちょっと派手すぎるかも…。」
「え?そうかな?」
智明さんはちょっと嫌そうな顔をした。
さっきからモヤモヤしていたものがハッキリした。智明さんは有無を言わさないところがある。僕の意見を言いづらい雰囲気だ。
それでもお店の人に聞きながらいろいろ見ていた。
「智明!」
智明さんを呼ぶ声に振り返った。
その声の主は僕と同じ歳くらいのオメガの男の子だ。
「湊…。何でこんな所にいるんだよ。」
智明さんは一瞬驚いたけどすぐにイライラした様子になった。
「智明がここにいるって。見かけた人が教えてくれた。その子は誰?」
「おまえに関係ないだろ?」
「関係なくないよ。僕たち番いになるんだろ?」
えっ?どういうこと?僕は驚いて智明さんを見た。浮気ってこと?さっき僕と番いになるって言ってたよね?
「由紀くん、大丈夫だから。」
「え?智明さん…?」
「湊、おまえとは番いにならない。由紀くんと番いになる。」
えーーーっ!勝手なこと言わないで!
僕はただオロオロするだけで何も言えなかった。
「僕のことは捨てるってこと?」
「そういうことだ。由紀くんの方がタイプだし。」
何て人だ!
僕は智明さんとは番いにならないと言おうとした。
えっ…。
湊と呼ばれたオメガがポケットからナイフを取り出した。
店の中がざわつく。
「おまえが智明を誘惑したんだな?」
ナイフを僕に向かって突き付けた。驚きと恐怖で身体が動かない。
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