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結局土曜日に二人で出かけることになった。
チャンス…。チャンスって何だ?
祐一さんはないな。僕は僕の中身を好きになって欲しいんだ。祐一さんは僕の見た目やフェロモンだけだろ?それにあのお見合いの時の態度。こちらの顔も見ず、ほとんど話もしなかった。嫌なフェロモンが出ていたのかもしれないけどあれはダメだと思う。
「結局祐一さんと会うの?」
「うん。何か強引に決められた。一度だけチャンスをくれって。」
「うわーっ!熱烈だね。」
熱烈かぁ。せめてお見合いの時の印象がもう少し良ければ。
水曜日の午後に僕は予約していた病院に行った。芦沢先生にフェロモンの値を測ってもらう。採血をして結果を待っていた。
「腎臓はほとんど良くなったね。フェロモンも正常だ。」
「良かった。ありがとうございます。先生、僕はよほど嫌なフェロモンが出ていたみたいですね。」
治療が終わって退院してからのことを話した。先生は真剣に聞いてくれた。
「そっかぁ、中原さんはアルファたちの態度が嫌なんだね?」
「はい。」
「結局中身は何でも良いと?」
「はい。僕じゃなくても良いんじゃないかって。僕を選んだとしてももっと可愛い人が現れたらすぐにそっちに乗り換えるんじゃないですか?」
「私はベータだからね。アルファが感じるフェロモンがいったいどういうものかよく分からない。数値として見ることは出来るけど体感は出来ない。でも君の話を聞く限り人生を左右するほどの影響を与えるものかもしれないね。」
その後も僕は出先でナンパをされまくって心身共に疲れ果てていた。嬉しいはずなのに嬉しくない。
心が折れそうだ。一生一人でも良いのかもしれない。
いや、ダメだ。ヒートが辛すぎる。あの薬も無くなってしまった。次のヒートはどうなるんだろう。
怖いな。その前に良いアルファを見つけないと。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
約束の土曜日だ。家の近くまで迎えに来てくれた。
車の中でも一生懸命に話をしてくれている。悪い人じゃない。むしろ好条件だし、僕が拗れているだけだ。
祐一さんはとても紳士だった。美味しいランチをご馳走してくれて僕の好きそうな催し物展に連れて行ってくれた。終始気を使ってくれて意外なほど楽しく過ごせた。時々ふわりと匂う祐一さんのフェロモンはとても心地が良かった。
「どうかな?また会ってくれる?」
帰りがけに言われた。
「あ、えっと。考えておきます。」
別に焦らしている訳じゃない。本当に考えたいのだ。
祐一さんは少し悲しそうな顔をした。
「由紀くんのこと諦めきれない。」
「僕のどこが良いんですか?」
ずっと疑問に思ったことを聞いてみた。
「うーん、もちろん顔も可愛いし、フェロモンもすごく好きな匂いだ。でも、何て言うんだろう。ぴったりはまるというか。欠けてたものが見つかったというか。」
「そうですか。」
よく分からないな。とりあえず考えたい。
僕はそのまま別れた。
チャンス…。チャンスって何だ?
祐一さんはないな。僕は僕の中身を好きになって欲しいんだ。祐一さんは僕の見た目やフェロモンだけだろ?それにあのお見合いの時の態度。こちらの顔も見ず、ほとんど話もしなかった。嫌なフェロモンが出ていたのかもしれないけどあれはダメだと思う。
「結局祐一さんと会うの?」
「うん。何か強引に決められた。一度だけチャンスをくれって。」
「うわーっ!熱烈だね。」
熱烈かぁ。せめてお見合いの時の印象がもう少し良ければ。
水曜日の午後に僕は予約していた病院に行った。芦沢先生にフェロモンの値を測ってもらう。採血をして結果を待っていた。
「腎臓はほとんど良くなったね。フェロモンも正常だ。」
「良かった。ありがとうございます。先生、僕はよほど嫌なフェロモンが出ていたみたいですね。」
治療が終わって退院してからのことを話した。先生は真剣に聞いてくれた。
「そっかぁ、中原さんはアルファたちの態度が嫌なんだね?」
「はい。」
「結局中身は何でも良いと?」
「はい。僕じゃなくても良いんじゃないかって。僕を選んだとしてももっと可愛い人が現れたらすぐにそっちに乗り換えるんじゃないですか?」
「私はベータだからね。アルファが感じるフェロモンがいったいどういうものかよく分からない。数値として見ることは出来るけど体感は出来ない。でも君の話を聞く限り人生を左右するほどの影響を与えるものかもしれないね。」
その後も僕は出先でナンパをされまくって心身共に疲れ果てていた。嬉しいはずなのに嬉しくない。
心が折れそうだ。一生一人でも良いのかもしれない。
いや、ダメだ。ヒートが辛すぎる。あの薬も無くなってしまった。次のヒートはどうなるんだろう。
怖いな。その前に良いアルファを見つけないと。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
約束の土曜日だ。家の近くまで迎えに来てくれた。
車の中でも一生懸命に話をしてくれている。悪い人じゃない。むしろ好条件だし、僕が拗れているだけだ。
祐一さんはとても紳士だった。美味しいランチをご馳走してくれて僕の好きそうな催し物展に連れて行ってくれた。終始気を使ってくれて意外なほど楽しく過ごせた。時々ふわりと匂う祐一さんのフェロモンはとても心地が良かった。
「どうかな?また会ってくれる?」
帰りがけに言われた。
「あ、えっと。考えておきます。」
別に焦らしている訳じゃない。本当に考えたいのだ。
祐一さんは少し悲しそうな顔をした。
「由紀くんのこと諦めきれない。」
「僕のどこが良いんですか?」
ずっと疑問に思ったことを聞いてみた。
「うーん、もちろん顔も可愛いし、フェロモンもすごく好きな匂いだ。でも、何て言うんだろう。ぴったりはまるというか。欠けてたものが見つかったというか。」
「そうですか。」
よく分からないな。とりあえず考えたい。
僕はそのまま別れた。
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